|||川上ミネ「Pilgrim」Release Information|||
「旅するピアニスト」川上ミネがスペイン各地9ヶ所の世界遺産をテーマにした10曲の新作によるアルバム「Pilgrim」。 川上ミネ「Pilgrim」2019.09.04 Release CD+Digital | DDCB-13048 | 2,700Yen+Tax | Released by B.J.L. | SPACE SHOWER MUSIC 「京都」を主題とした「Nostalghia~Kiyomizu~」に続き、「旅するピアニスト」川上ミネがスペイン各地9ヶ所の世界遺産をテーマにした10曲の新作によるアルバム。 サンチャゴ・デ・コンポステラ、グラナダ、コルドバ、マドリッド、バルセロナ、トレド、アンダルシア、セゴビア、カナリア諸島までを「ピルグリム」(巡礼者)川上ミネが巡って綴る美しいイメージの世界。 小さな教会の朝のミサ、辻音楽師が奏でるケルトの音楽、巡礼地にたどり着いた人々の祈り声、田園でさえずる異国の鳥たち、カテドラルの鐘などの音たちとピアノが共和する音楽の旅。
川上ミネ「Pilgrim」2019.09.04 Release
Digital | https://ssm.lnk.to/Pilgrim
01. Camino de Santiago|カミーノ・デ・サンチャゴ(サンチャゴ巡礼道)
02. Alhambra|アルハンブラ(アルハンブラ宮殿)
03. Santiago de Compostela|サンチャゴ・デ・コンポステラ
04. Mezquita|メスキータ(コルドバのメスキータ)
05. El Escorial|エル・エスコリアル(エル・エスコリアル宮殿)
06. Sagrada Familia|サグラダ・ファミリア(サグラダ・ファミリア教会)
07. Toledo|トレド
08. Baeza|バエザ(バエサ・アンダルシア)
09. Segovia|セゴビア
10. Teide|テイデ(テイデ山・カナリア諸島)
|||川上ミネ「Pilgrim」コメント|||
スペインに暮らすようになって20年以上になる。「暮らす」というにはあまりにも旅の多い人生だが、私と違って容易に移動できない巨大な楽器 –学生時代から使っているグランドピアノ– が置いてある家が20年以上前からある、と言った方が正しいかもしれない。 旅に行く先々で出逢う人や出来事、忘れられない風景や言葉では表せないほどの感情を心の中に保存し、この「家」に帰るたびにそれらの記憶をピアノ音符に変換し曲にして、音楽という形で自分の心に永久保存する。これが私とピアノとの繋がりだ。
01. Camino de Santiago|カミーノ・デ・サンチャゴ(サンチャゴ巡礼道)| サンチャゴ巡礼路の出発地、ピレネー山脈の麓にある小さな村。初めて巡礼道を歩き始めた日の夜明け前、見上げた空の色が忘れられない。東側はほんのり明るくなり始めていたが、残りの空にはまだ星がたくさん輝いていた。これから始まる1000キロの巡礼道の始まり。澄み切った星空の下、長い道を歩き始めた。
02. Alhambra|アルハンブラ(アルハンブラ宮殿)| アンダルシアの古都、グラナダ。ジャスミンの花が香る季節、人影もなく静まりかえったアルハンブラ宮殿の中を独りで歩いていた時の事だった。時折、ひんやりとした風に乗って漂うイスラムの香りや中庭を流れる水の音が、自分は知らないはずの遥かな懐かしい記憶と重なる不思議な瞬間があった。愛しい何かに、やっと再会できた気がした。
03. Santiago de Compostela|サンチャゴ・デ・コンポステラ| スペイン中でこの場所ほど清らかな喜びの空気に満ち溢れた街はない。長い道を歩き続けついに到着した巡礼者たちがオブラドイロ広場を通り大聖堂へ入って行く。歓喜溢れる喜びというよりは、静かに感謝の祈りを捧げる巡礼者。サンチャゴ・デ・コンポステラは祈りの街だ。
04. Mezquita|メスキータ(コルドバのメスキータ)| かつてイスラム寺院だったメスキータ。中に入ると、一瞬身震いするような独特の冷気が漂い、陽の届かない永遠の森に迷い込んだような錯覚に陥る。無数の薄暗い柱の合間からミフラーブの細かいモザイク模様が蝋燭の光を反射して星のように瞬く。静寂が支配するこの場所に身を委ねて耳をすますと、1200年の時を超えてコーランの響きが私には聞こえてくる。
05. El Escorial|エル・エスコリアル(エル・エスコリアル宮殿)| 学生時代、スペインで一番最初に演奏会を開いた場所がエル・エスコリアル宮殿の中庭だった。自分のピアノの音を初めてスペインで聞いた記憶は忘れられない。ピアノの音の粒が中庭の石壁や彫刻にぶつかり、聴いたこともないような透明な響きとなって私の耳元へ音が返ってきた。演奏をしている最中、時々礼拝堂の鐘が鳴り響いてピアノの音をかき消す。あの日、自分はこれから長くこの国に住むのだという予感がした。
06. Sagrada Familia|サグラダ・ファミリア(サグラダ・ファミリア教会)| サグラダファミリアのある一角に、不思議なほど心が安らぐ場所がある。森の中にいるというよりは、茂った草むらの下にいる一匹の小さな虫になったような、大きな優しい何かに守られ抱かれているような、そんな感覚に包まれる。もしかしたらガウディがつくろうとしていた建物は、そんな虫が巣に帰るような場所だったのではないかと思う。
07. Toledo|トレド| 時が止まる街、トレド。ある寒い冬の午後、迷宮のように入り組んだ小道を歩いていると、イスラム・ユダヤ・キリスト教の文化が入り混ざる建物の間でタイムワープして時空間まで迷子になりそうな自分がいた。何故かその時、昔どこかで聞いた事があるような懐かしく優しい旋律が心の中に聴こえてきた。
08. Baeza|バエザ(バエサ・アンダルシア)| オリーブ畑に囲まれた小さな街、バエサ。ある満月の夜、オリーブ畑まで車を飛ばして空を見に行った。無数に実っているオリーブの実一つ一つに満月が反射し、その向こうにまるで巨大な宇宙船のようにバエサの街が浮かび上がっていた。今でも記憶に残っている満月の夜だ。
09. Segovia|セゴビア| 街の外れの一角にベラ・クルス教会という中世の礼拝堂がある。数々の奇跡の伝説が今も伝わるこの建物の内部は、華美な装飾が全くなく、入るだけで心が静まりかえる特別な雰囲気がある。「ピルグリム」のジャケット風景はセゴビア城から見下ろしたベラ・クルス教会で、私がスペインで最も好きな道の景色の一つ。
10. Teide|テイデ(テイデ山・カナリア諸島)| アフリカ大陸のスパイスの香りが漂うテネリフェ島。海抜0mの港から標高3718メートルのテイデ山頂に続く道はまるで地球上の全ての四季と気候を一気に再現する強烈な世界だ。灼熱の砂漠、ジャングル、草原地帯、針葉樹林、氷雪地帯、・・ありとあらゆる地球の姿を目まぐるしく見つめながら山を登り、最後に雲海をつき抜けた時、目の前に広がったのは宇宙と直結した紺碧の空だった。
|||川上ミネ|||
ピアニスト・作曲家。愛知県長久手市に生まれ、3歳でピアノを始める。 ミュンヘン国立音楽大学〜マドリッド国立音楽大学院ピアノ科卒業。 世界各地を旅してミュンヘン〜マドリッド〜ハバナ、現在は京都とスペインに暮らし、学び、教え、演奏し、料理する。 クラシック音楽から出発した無国籍・無ジャンル音楽を奏でる。 コルドバのメスキータ、サンチャゴ大聖堂、エル・エスコリアル修道院など多くの世界遺産で演奏、国内では清水寺、春日大社でもコンサートを行った。 2003年以降、チューチョ・バルデス、ネストル・マルコーニなどと共演。 2005年 愛・地球博「モリゾーとキッコロ」のテーマソング、NHKのテレビ「猫のしっぽ カエルの手」、「やまと尼寺 精進日記」、「北斎“宇宙”を描く」、NHKラジオ「ラジオ深夜便」、映画「ベニシアさんの四季の庭」、スカイマークの機内テーマ曲など数多くのサウンドトラック、音楽制作を担当。 「In Latin America」(2004)以降、「In The Forest」(2006)、「馨(かおり)」(2010)、「Nostalghia~Kiyomizu~」(2017)など10枚のアルバムを発表している。