この春、2年6か月ぶりのオリジナルアルバム『Soul Renaissance』をリリースしたゴスペラーズが、この新作を携え、全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance”」を開催。全34公演で約7万人を動員した本ツアーが、7月30日に満員御礼の岡山・倉敷市民会館でファイナルを迎えた。
ステージ中央には大きな絵画をあしらった幕に5人が描かれている。絵画の額縁は、ツアータイトルの“Renaissance”を思わせる中世ヨーロッパのアンティーク風だ。バンドメンバーの軽快な演奏からスタートした後、会場が暗転。絵画の幕が振り下ろされると、そこには同じポーズをしたゴスペラーズの姿があった。観客の大歓声を受け、オープニングナンバーの「GOSWING」へ。その後も「PRINCESS☆HUG」「暁」とダンサブルなナンバーを立て続けに披露し、観客をツアーの世界観へ引き込んでいく。スウィートなR&Bナンバーの「Dream Girl」をソウルフルに歌い上げると、「ゴスペラーズです!最後まで楽しんで行ってください」と、1人1人の自己紹介も兼ねて挨拶。序盤戦は、「All night & every night」や「Silent Blue」など、最新作の収録曲を中心に歌い、ステージが狭く見えるほどのパフォーマンスで会場を沸かせた。中盤は“ルーパー”なるサンプラーを駆使し、酒井を中心にアカペラの即興多重録音に挑戦。観客の目の前で録音したばかりのアカペラ演奏をバックに「侍ゴスペラーズ」をパフォーマンスした。斬新なチャレンジだったが、そこを簡潔に説明しながら明確に体現して見せた姿は、間違いなくゴスペラーズの新境地だったし、何よりもこのグループのタフなエンターテインメント精神を表していたと思う。
アカペラで「永遠(とわ)に -a cappella-」「ひとり」をじっくり聴かせた後は、衣装をチェンジしてメドレーのコーナーへ。メドレーは、ゴスペラーズのツアーではよくセットリストに入るが“みんなが聴きたいと思う曲を1曲でも多く歌いたい”という、彼らの気持ちが詰まっている。本ツアーのメドレーは、懐かしい曲を中心に、メロウなナンバーをセレクト。大人のムード満載で、満員の観客を酔わせた。メドレーからそのまま続いたのは、新作『Soul Renaissance』の中でも随一のソウル・ナンバー「Deja Vu」。村上のファルセットが自由に上へ下へと行き来した。
ライブは灼熱の後半戦へ。『Soul Renaissance』からのドープ&ハード・チューン「Hide and Seek」では黒沢のシャウトが駆け抜ける。イントロでワッと歓声が上がった「Unlimited」では、北山が切れのあるダンスを見せる。また観客がサビでタオルを回した「FRENZY」では、エンディングで安岡が高いジャンプを決めるなど、全身を使って会場のテンションを引き上げた。
本編の最後に歌われたのは「Fly me to the disco ball」。スムースなグルーヴが特徴のピースフルなミディアムチューンに、会場のあちこちで笑顔がはじけた。
アンコールの拍手に、再びステージに登場したゴスペラーズは、1人ずつマイクをとった。「すべてを使い果たしました!」と出し切った表情で一礼した酒井。北山は「ゴスペラーズは舞台上の5人だけじゃなくて、僕たちの音楽を聴いてくれている人たちも、ライブに来てくれたみんなもゴスペラーズなんです。これからもゴスペラーズに誇りを持って頑張っていきます」とまとめた。「ライブは本当にお客さん皆さんと一緒に楽しむものなんだと改めてこのツアーで感じました。ありがとう」と言ったのは黒沢。安岡は、昨年はデビューしてから初めてアルバムリリースも全国ツアーも無かった年だったと振り返り「その年を乗り越えて皆さんに再会出来たことを嬉しく思います」と満面の笑顔を見せた。最後はリーダー村上。最終日だから言わせてくださいと、スタッフに感謝の気持ちを述べた後、「ツアーがこんなに盛り上がったのはいいアルバムを作れたからかな」、と見せた笑顔に大きな拍手と大歓声が起こった。客席からの熱いレスポンスを受け取り、最後にこう締め括った。
「これからも一歩一歩、少しずつ上向きで、みんなとゴスペラーズ坂を上っていきたいと思います。いつも素晴らしい声援をありがとうございます」感謝の思いを込めて、スケール感あるバラードナンバー「reborn」、「誓い」を歌い上げる。「誓い」のエンディングで、手を振りながらステージ中央へ向かう5人が振り返ると一瞬暗転。ゴスペラーズが再び絵画に変わるというドラマティックな展開に、観客はスタンディングオベーションで応えた。
約2年ぶりの全国ツアーを完走したばかりのゴスペラーズだが、今年はまだまだ走り続けそうだ。初のシンガポール公演、並びに香港公演を筆頭に、ライブが続々と決定している。
【文・伊藤亜希】