元・宝塚歌劇団 宙組 初代男役トップスター、姿月あさとがデビュー30周年を迎え、5月22日に銀座・山野楽器本店にて、インストア・イベントが開催された。
同イベントは、姿月あさとのデビュー30周年を記念してリリースされたアニバーサリー・アルバム『Treasure~私の宝物~』のお披露目として購入者限定で行われたもの。会場は120名のファンで埋まり、大盛況となった。
同アルバムのプロデューサーであり、過日行われた30周年記念公演(4月29日・30日、赤坂ACTシアターにて)のプロデューサーでもあった、姿月と親交の深い高橋まさひと氏が司会を務め、アルバムの内容についての興味深い話が次々と披露された。
アルバム、コンサート制作にあたり、自分たちの母親世代にも喜んでもらえる曲、歌い継いで行くべき名曲を意識して選曲していったという。二人が親しくなるきっかけでもあり、タンゴの名曲にして、日本ではグラシェラ・スサーナがヒットさせた「時計」もこの観点で選曲され、アルバムの象徴的な1曲となった。
今回のアルバムはすべて生演奏にこだわり、全曲を通して、機械音はひとつもはいっておらず、若手ピアニストの三枝伸太郎の率いるオーケストラによるレコーディングとなっており、この「時計」などはその演奏によって、より魅力的な、ステージ映えのするトラックとなった。
姿月あさとはかねてより、自分の声を楽器の一つとしてとらえており、歌詞の意味以上に、自分の歌声がいかにバックの演奏と溶け込むかということを重視しており、そういった意味でも今回のアルバムは成功したと言える。
今作は、宝塚の代表的な楽曲である「夜霧のモンマルトル」や「さよならは夕映えの中で」にも挑戦。自分の基礎となった宝塚へのリスペクトをこめて、チャレンジしたそうだ。
また姿月あさとの宝塚代表作『エリザベート』からは「愛と死の輪舞」と「最後のダンス」を収録。「最後のダンス」については、ガラ・コンサートでも共演した9人のコーラスを入れ、大規模で時間をかけたレコーディングとなった。コーラスの指導もすべて姿月自身が行ったという、こだわりが生きたトラックとなった。
高橋氏は、コンサートの監修を務めた宝塚歌劇団の特別顧問である植田紳爾先生から、「姿月はこれからだからね!」と言われたエピソードを披露。宙組誕生の時の苦労を良く知る恩師だからこそ言える力強い言葉であった。また、難しいエリザベートへの挑戦を通して、音楽の根本的な仕組みをもっと勉強したい、楽器としての自分の声を追求し、他の世界も勉強したいと気持ちから退団に至ったというエピソードも披露された。
姿月は、「自分のコンサートは自分の生前葬だと思っており、だからこそ常に一期一会の気持ちで取り組んでいる、生きている間に伝えたいことがある」とコメントした。先日のコンサートで、ペギー葉山さんのレパートリーであり、アルバムのラストに収録された「歌ある限り」を選曲したのも、歌い継いでいくべき歌を伝えていく、という強い想いの現れだったそうだ。
イベントの最後には、アルバム1曲めを飾る、「時計」を姿月が熱唱。その後握手会&サイン会でファンとの交流の時間が持たれた。