世界的ヴァイオリニスト、川畠成道の13枚目のアルバム・コンセプトが本日8月19日にリリースされた。“無伴奏”で、ヴァイオリンの可能性に迫り技巧の限りを尽くした作品を6曲収録している。本作の中でおそらく最も注目を集めるのが、川畠が新垣隆氏に委嘱した無伴奏ヴァイオリン・ソナタ「創造」だろう。昨年9月に世界初演したが、その曲の誕生秘話とは・・・・
昨年2月の謝罪会見で明るみに出た、いわゆる「佐村河内事件」のあと、新垣氏を支えるコンサートが6月、都内で行われることになり、そこで彼が新たに作曲するヴァイオリンとピアノのための小品を弾いてもらえないかという依頼が川畠に舞い込んだ。川畠には当時ある思いがあった。桐朋学園大学時代から一学年上だった新垣氏の才能を高く評価していた川畠は、別の作曲家名で発表されたあの交響曲を書いた新垣氏であれば通常の交響曲を書くよりもはるかに難しい無伴奏ソナタを書けるはずだと。折角、新曲を弾かせてもらえるのなら近年、自身が力を注いでいる無伴奏曲で、しかも一生掛けて弾いていけるソナタのような大作を書いてほしい。演奏依頼されたその公演だけではなく同年9月に予定している自主公演の無伴奏作品演奏会でも弾きたいと思い委嘱した。前述の事件後、新垣氏のマスメディアでの活動が増える中、本来の作曲家として大きな仕事をすることで早く立ち直ってほしいと思っていたからである。
そんな思いの詰まった本作に寄せて、黒柳徹子さんからコメントが届いた。
「川畠さんの無伴奏の世界を聴いた。パガーニやアルハンブラ、グリーンスリーヴは、まるで耳のそばで歌ってくださっているようだ。新垣さんの心の中も、川畠さは弾いている」
また、本作はハイレゾ配信も同時に発売され、ビクタースタジオにて川畠と新垣氏によるハイレゾ音源の試聴と対談が行なわれた。その時の様子がVICTOR STUDIO HD-Music.に掲載されているので、こちらもあわせて読んでほしい。
対談記事URL
http://hd-music.info/blognews.cgi/view/82
■リリース情報
『無伴奏の世界/川畠成道』
2015年8月19日発売(VICC-60932 / 3,000+税)
収録曲:
1. ≪うつろな心(ネル・コル・ピウ)≫の主題による序奏と変奏曲(パガニーニ)
2. パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏のための変奏曲)(ミルシテイン)
3. アルハンブラの想い出(タレガ/R.リッチ 編)
4. シューベルトの≪魔王≫の主題による大奇想曲(エルンスト)
5. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 嬰ハ短調「創造」(新垣 隆)
6. グリーンスリーヴスによる変奏曲(寺嶋陸也)
HD-Music. (ハイレゾ) : http://hd-music.info/album.cgi/VI/VEAHD-10791
iTunes : https://itunes.apple.com/jp/album/id1027226636?app=itunes&ls=1
■コンサート情報
★2015年9月13日(日)13:30開演 紀尾井ホール
「第12回 川畠成道ソナタシリーズ2015 全曲無伴奏〜古典から現代まで〜」
プログラム
ミルシテイン:パガニーニアーナ(ヴァイオリン独奏のための変奏曲)
パガニーニ:ネル・コル・ピウ(うつろな心)の主題による序奏と変奏曲 他
チケットのお問合せ:株式会社テンポプリモ
★2015年10月15日(木)18:30開演 紀尾井ホール
「新垣隆展2015」
プログラム
新垣 隆:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 嬰ハ短調「創造」
演奏:川畠成道(ヴァイオリン)
他、新垣隆作品より
チケットのお問合せ:ザ・カンパニー
川畠成道 プロフィール
1971年11月東京生まれ。視覚障害を負った幼少期にヴァイオリンと出会い、音楽の勉強を始める。桐朋学園大学卒業後、英国王立音楽院へ留学。1997年、同院史上二人目となるスペシャル・アーティスト・ステイタスの称号を授与され首席で卒業。1998年、サントリーホールに於いて小林研一郎指揮、日本フィルとの共演でデビュー。その後、英国と日本を拠点にソリストとして精力的な活動を展開し、毎年数多くのリサイタルを行っている。国内外の主要オーケストラとも多数共演しており、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団(ユベール・スダーン指揮)、スロヴェニア国立マリボール歌劇場管弦楽団、ボローニャ歌劇場室内合奏団などにソリストとして迎えられ、いずれも高い評価を得ている。2007年のスロヴェニア国立マリボール歌劇場管弦楽団との共演においては、ヴォルフ=フェラーリ作曲、「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調」を日本初演、同楽団のスロヴェニア公演でもソリストを務めた。2011年は、欧州最高のオーケストラの一つであるキエフ国立フィルハーモニー交響楽団の日本ツアーのソリストとして成功を収め、2013年にも再び共演するなど着実な歩みを進めている。デビュー当初より音楽活動の傍ら、積極的に国内外でチャリティーコンサートを行っている。中学音楽鑑賞教材や高校英語・現代文教科書、高校入試問題やNHKラジオ高校講座「現代文」に映像や文章が使用される等、社会派アーティストとしても多方面に影響を与えている。