元々は洋楽レーベルとして、MUSEやThe Prodigyを輩出し、最近では逆輸入バンドFACTがラウド・ロック・ムーヴメントの新旗手としてビッグ・セールスを叩き出すなど、時代ごとに音楽業界に一石を投じて来た音楽レーベルmaximum10が企画する配信サイト『MUSIC AGAINST THE FUTURE!!』が本格始動し、全く新しい音楽ビジネスの形が話題となっている。
サイトを見てみると、maximum10所属のバンドPOP DISASTERとsfprのアイテムが、mp3(標準音質)で発売され、追って、wav(高音質)でも発売されるとある。他のサイトと異なる点を探してみると、『無音パッケージ』というボタンがあり、それをクリックすると、『indiesmusic.com』という主にCDを取り扱う通信販売サイトにリンクされている。これが新しい音楽のカタチなのか?無音パッケージとは何なのか?
実は、『MUSIC AGAINST THE FUTURE!!』が提案する“新しさ”の根幹を担うのが、そこで通信販売されている“CDのようなモノ”で、彼らが『無音パッケージ』と呼ぶ商品。価格は税込みで500円。見た目は普通のCD商品と変わりなく、実際に、中身のメディアも見た目はCDそのものだと言う。しかし、それには肝心の音源は収録されていない。つまり、CDのかわりに焼き込み可能な空のCD-R(きちんとレーベル面も印刷されている)が封入されているのだ。
企画者はその意図をサイト内でこう語っている、「これはリスナーが選べる商品です」と。今、音楽業界に寄せられているリスナーからの不満や不安は、「日本はCDが高い」「ジャケットなんかいらないから安くしてくれ」「CDを手に取る喜びをなくしたくない」と三者三様。この三者が満足する全ての選択肢がここにありますと言うのだ。それだけでは、分かりにくいので、実際にこのサイトで商品を買うシミュレーションをしてみよう。
sfprの『COSMO』というアルバムは、mp3だと10曲で500円(ボーナストラックは除く/1曲あたり50円)、wavだと2,000円予定(1曲あたり200円予定)という価格設定だ。音源だけ欲しい人は配信音源購入で完結し、音質のみを選択すれべばよい。これは従来にもある形だ。ここからが、このサイトの特別な部分で、パッケージまで欲しい人は、500円のパッケージを買い、自分でデータを焼き込み、従来のパッケージ商品を自作するのだ。すると、mp3で音源購入の場合、音源に500円+印刷物に500円で1,000円とリーズナブルな印象があるだろう。これが高音質なると合計2,500円になり、これまでのCD商品と価格的には同じ印象になる。
確かに、これは仕組みとしてはうまく出来ている。しかし、音源をダウンロードして、わざわざCDに焼く手間は面倒だし、データをパソコンやデジタル・ポータブル・プレーヤーで聴くのが圧倒的主流のこの時代に、無駄や矛盾は多いに感じる。つまり、リスナーからすれば、どうしても感じる「わざわざ感」は、サイトに彼らも書いている通り、今後のスタンダードな形になるとは思えない。そう考えると、もしかして、企画者の真意は音楽業界からリスナーへの無言の、いや、無音の問いかけなのかも知れない?
「あなたは音楽という商品に何を望みますか?」
サイトから引用させてもらうと「自由であることを権利とすべきか?義務とすべきか?責任とすべきか?はたまた、それ自体を主張とすべきか?自由はメッセージではなく、常に考えるべき課題ではないか?」ようはこれを伝えるための手段という見え方もある。MUSIC AGAINST THE FUTURE!!は、今後も新しい提案を企画中との事なので、引き続き、注目していきたい。
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