「20世紀最高のロック・バンドと自ら名乗っていたZIGZOが、21世紀最高のロック・バンドとしてここに復活しました。見届けてくれて、どうもありがとう!」
3月17日、夜。10年と1日前、すなわち10年前の3月16日に東京・赤坂BLITZでの公演を最後に解散したZIGZOが、同じ場所(正確には当時とは異なる建物としてリニューアルされているが)で復活を遂げた。フロントマンのTETSUがこの言葉を吐いたのは、開演からすでに2時間15分ほどを経過し、かつての解散ライヴの幕開けに演奏された「splash!」がこの夜の23曲目のナンバーとして披露され、熱気の充満する場内をひとつに束ねた直後のこと。彼が“約束の歌”と紹介した同楽曲で文字通りの最高潮を迎えたライヴは、そのまま幕を閉じてしまうものかと思いきや、最後の最後、この4人が10年ぶりに再会して最初に作られたものだという正真正銘の新曲、「DECADE」を炸裂させて着地点へと到達した。
ライヴは1stアルバム『MONSTER MUSIC』の1曲目に収められていた「Wonderful Day」で、午後6時の開演予定時刻を10分ほど過ぎた頃、懐かしい映像や写真が散りばめられたイントロダクションに導かれながら始まった。「Wonderful Day」に始まり「splash!」に終わるという構成は、まさに前述の解散ライヴのときの真逆の展開。そして実際、まるで時計の針を強引に逆回転させるかのようにしてZIGZOは蘇生し、生ぬるいノスタルジアや熟成の名を借りた“枯れ”とは無縁の、過度なほどにエネルギッシュなライヴ・パフォーマンスを繰り広げた。実際、TETSUがステージ上で何度か口にしていたように、この10年のうちに失われてしまったものも少なからずあるのかもしれない。が、それ以上に、メンバーたちはこの経過のなかでたくさんのものを獲得してきた。だからこそこの夜、こうした極上のマジックが起こり得たのだろう。あまりに手垢のついた表現で気恥ずかしいばかりだが、それが筆者の素直な本音である。
TETSU(vo,g)、RYO(g)、DEN(b)、そしてSAKURA(ds)。4人のメンバーたちは、必死にかつての自分たちを取り戻そうとするのでも、最新型のZIGZOを提示しようと躍起になるのでもなく、ごく自然なスタンスで、“成熟を重ねながら、今なお前傾姿勢で疾走中であること”を証明してみせた。もう少し具体的に言うなら、10年以上前に生まれた彼らの楽曲群は、まるで当時から4人の現在を予見していたのではないかと感じられるほど、“今”の彼らに見事なくらいぴったりとフィットしていたのだ。
そんな様子を目の前で見せつけられれば“次”を期待したくなるのが人間の性というものだが、約2時間20分の演奏を終えてメンバーたちが去ったステージ上のスクリーンで告知されたのは、この6月から10年ぶりの全国ツアーが行なわれるという最新の事実。当選確率5倍という激戦を勝ち抜いてフロアを埋め尽くしていたオーディエンスはその瞬間、歓喜の声をあげた。
ちなみに6月16日に仙台で幕を開けるこのツアーは、東京・新宿LOFTでの三夜公演を含むもの。当然ながらこの新たな展開に向けて彼らはさらなる新たな“爆弾”の数々を用意してくるはずだし、改めて言うまでもなく、この次には新たな音源の発表についても期待したくなってくる。少なくとも3月17日現在においての情報は、このツアーに関するものだけだが、10年と1日を経て“約束”を果たしたZIGZOのこと、そこで立ち止まってしまうとは考えたくないところだ。「春になれば、はなればなれも恐くないさ」と繰り返す「splash!」と、これまでの経験と記憶のすべてを総括しながら“今”を体現している「DECADE」の余韻のなかで、僕は、春の訪れを実感している。もう“早過ぎたバンド”とも“短命に終わった不運なバンド”とも、誰にも言わせない。なにしろ21世紀を生きる最高のバンド、ZIGZOが新しい季節を迎えたのだから。今後の4人から、目を離さずにおきたいところである。
増田勇一