平井 大の真価が問われた『Life is Beautiful』
──9月10日に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催された「Live Tour 2016 ~Life is Beautiful~」のツアーファイナル公演を拝見しました。1曲目からラストまでほぼノンストップのステージは圧巻でした。平井さんのウクレレ奏法もすごかったです。「泣きのギター」と良く言いますが、「泣きのウクレレ」は初めて観ました。
あの弾き方をやっている人は余りいないですもんね(笑)。
──今回のツアーはいかがでしたか?
全国13箇所を周らせていただいて、より僕の音楽の本質を伝えられたのかなと感じています。僕の音楽というよりも、もっと大きな意味で音楽の本質を表現できたようにも思います。それは歌だけではなく、僕とバンドが一緒にセッションを繰り広げたり、それぞれの楽器のソロ演奏を披露したり、そういうところも含めて1つの「音楽」として成立したツアーになったように思うので。
──初めてライブを拝見したのですが、前半を聴いてロック色というかブルース色が強い印象を受けました。それで、中盤でエリック・クラプトンの「Change the world」を歌われた時に、平井さんのルーツは此処なんじゃないかと。
エリック・クラプトンの影響は強いと思います。僕の実家にはアコースティックギターやウクレレが沢山あります。父がその楽器を弾いてブルースやロックンロール、カントリーを歌ったりして、サーフロックもハワイアンも好きでしたね。だから、幼い頃からずっとアコースティックの楽器と触れ合ってきましたし、そういう音楽のサウンド感が僕の体に染みついてきたのかなと思います。一方で僕は打ち込みもやるし、クラブサウンドのようなアプローチもしたり、色々と周ってきたんですけど(笑)。そんな中で昨年のアルバム『Slow & Easy』から「自分のルーツに立ち返ってみよう!」と思ったんです。
──それは何故ですか?
それまでは、独りでパソコンに打ち込んで、アレンジを含めて楽曲制作をしていたんです。打ち込みのサウンドは自由度が凄いんです。シンセサイザーも入れられるし、「こんなの人間が叩けないだろう!?」というようなドラムも入れられます。だから、あれも入れようこれも入れようみたいに、どうしても欲が出てきてしまいます。そうすると情報が細分化していって、結局自分がその曲で伝えたいことにフィルターが掛かってしまうんです。
だから、『Slow & Easy』の時にやり方を変えてみて、半分ぐらいの曲は僕がギターと鼻歌だけでiPhoneでレコーディングして、それをバンドのメンバーとシェアする方法で作ってみたら、これが結構上手く行ったんです。また、リリース後にアコースティックでライブをやったところ観客の皆さんがすごく受け入れてくれました。僕自身も手応えを感じて、だったら僕のルーツに立ち返ろうと。
それでバンドメンバーとシェアする作り方を全面に出して、アコースティックサウンドやアナログのサウンド感を試したいと思って制作したのが、今年6月にリリースした『Life is Beautiful』です。だから、前作は僕の真価が問われる1枚だったし、それを引っ提げての今回のツアーだったので、僕らなりには精一杯、音楽が表現できたツアーになったと思います。
──様々なトライを重ねて、あらためてルーツに立ち返った訳ですね。
打ち込みをずっとやってきたからこそ、楽器の特徴や特性の勉強になったんです。だから、バンドメンバーに対して指示も出せるし、逆にメンバーから意見を言われても理解できるようになりましたよね。僕が使う楽器はウクレレとアコギとエレキギターですけど、それ以外の楽器のことも把握できるようになったのは大きいと思います。
『Life is Beautiful』と『Love is Beautiful』の2作で完結するイメージ
──自身初のカバーミニアルバム『Love is Beautiful』がリリースされます。ライブで披露していた「Change the world」も収録されていて、「アーティスト・平井 大」のルーツを知る上で、とても興味深い1枚のように思います。まず、カバーアルバムを制作したキッカケをお聞かせいただけますか?
キッカケは1曲目の「It don’t matter」という曲ですね。オリジナルを歌っているドノヴァン・フランケンレイターは、父が好きだったことから、僕も本当に良く聴いていました。彼はサーフロック界では物凄い伝説的なアーティストなんです。それで昨年来日した時に、僕らがライブのリハーサルをしていたスタジオの近所でライブをやっていると聞いて、バンド全員で観に行ったんです。その時に初めてお会いしたのですが、ドノヴァンがノリで「ライブしてみてよ」と言って(笑)、バンドのメンバーも一緒だったからライブをしたんです。今年に入ってからも、沖縄や都内でドノヴァンと一緒にライブをしたんですが、その流れで「1曲レコーディングしよう!」という話になって、夏が終わる頃、「It don’t matter」を一緒にスタジオに入ってレコーディングしました。そのレコーディングがカバーアルバムを制作することになったキッカケですね。
──「It don’t matter」はリリースの予定も無く、レコーディングしただけだったんですか?
そうなんです(笑)。レコーディングした「It don’t matter」をどうしましょうかというところから、今回のカバーミニアルバムの制作が決まったんです。前作『Life is Beautiful』で表現しきれなかった部分や、あえてやっていない部分もまだあったので、今回のカバーミニアルバムでその部分を表現できればという気持ちもありました。前作『Life is Beautiful』、そして今回の『Love is Beautiful』を制作して、僕の中では1つの作品が完結するイメージでしたね。ですから、その順番で聴いてもらえると繋がりがハッキリして聴きやすいかなと思います。
──前作アルバムでやり残したことは、具体的にはどんなところですか?
まずは、曲のダイナミクスですよね。意図的ではあったんですけど、前作には1曲を通して大きな起伏のある曲、静かに始まって最後は壮大に盛り上がるバラードのような曲が少なかったんです。それを前作で表現したようなアコースティックサウンドというか、バンドサウンドで入れてみたいなという想いがありました。今回の『Love is Beautiful』は、それを追求できた1枚になったと思います。
──前作と対になることもあって『Love is Beautiful』というタイトルにしたのでしょうか?
「愛」は人生を成り立たせる中で重要な要素だと思います。僕が大事に想っている大切な人たち、バンドメンバーもスタッフも、もちろんファンの方々も、僕に対しての愛もあるし僕からの愛もある。それで僕の音楽も成り立つし、生活も成り立っていると思います。そういう意味で、「愛」と「人生」は近しいところにあるように思うんです。それで前作は「Life」だったから今回は「Love」にスポットを当てて作りました。また、これから寒くなると人肌恋しくなるし、恋人といる時間も長くなる季節だと思います。なので、恋人や夫婦でのんびりしている時間に聴いてもらえるような1枚にしたいという想いもありましたね。
曲全体から生まれてくるメッセージが重要
──「It don’t matter with Donavon Frankenreiter」のレコーディングはどうでした?
ドノヴァンは、アンプのマイクの立て方とか細かいところに非常にこだわっていましたね。普段はゆるい方なんですけど(笑)。やっぱり音楽になるとキチンとこだわるし、1音1音大事にパフォーマンスしているんだなっていうのを感じました。
──すごく息のあったセッションで、聴いていてとても心地良かったです。
ドノヴァンはカリフォルニア出身で今はハワイに住んでいます。元々サーファーだったから、彼の音楽はビーチとは切っても切り離せない関係にある。僕も父からサーフィンを教わって、小さい頃は毎週末サーフィンに行ってたから、カルチャー感もお互いにピッタリでした。だから音楽での意思疎通はしやすかったと思います。
──ドノヴァンのバイオグラフィーを観たら、エリック・クラプトンに影響を受けたとありました。
サーフロックと言われているジャンルのルーツが、60年代後半から70年代にかけてヒッピーたちが盛んだった時代のフォークやブルースだったりします。その時代の音楽を今アコースティックでどうやって表現しようかとか、今を生きる僕たちなりのフィルターを通してお届けするのが、サーフロックたるものなのかなって思いますね。
──また、全体的に臨場感溢れる歌声、サウンドが耳に残りました。
グルーヴ感を出すために、全ての曲が一発録りなんです。1回ミスるとまた最初から取り直すことになるから、レコーディングは全員が緊張していたかもしれませんね (笑)。前作から一発録りをしているんですが、その時に修正点も見つかって、今回はライブ感がより鮮明になっているかなと思います。いろいろ挑戦した結果が今回の『Love is Beautiful』なので、そういうところは極まっているかもしれないです。
──レコーディングは先のツアーのバンドメンバーと?
そうですね。バンドメンバーとは10年近く一緒にやっているから、もう家族みたいな存在です。何でも言い合える仲だし、気に入らなかったら「これ嫌だな」とか普通に言えます。音楽に対してはお互い妥協しないから、馴れ合いにならず、良い形になってきている印象がありますね。
──4曲の洋楽カバーと自身の楽曲2曲の英語バージョンを収録しています。まず、洋楽のカバー曲はどのように決められたのですか?
今の季節に聴きたくなる楽曲、個人的に歌詞が好きだったり思い入れがある楽曲から、皆さんが知っているであろう楽曲を中心に選びました。
「Change the world」はライブでずっと歌ってきた曲だし、僕もバンドメンバーも愛着のある1曲です。幼い頃からエリック・クラプトンが大好きでずっと聴いてきたから、この曲はどうしても入れたかったんです。
また、「I don’t want to miss a thing」は映画『アルマゲドン』の主題歌で、僕が小学生の頃、公開時にこの映画を観て「すごいなー!」と思って。小さいながらも、男の生き様というか、男はこうあるべきだなって感じたんですよね。それ以来、大好きな1曲になって今回カバーしました。
──ちなみに「Change the world」も映画主題歌ですよね。
この曲が主題歌だった『フェノミナン』も良い映画でしたね。実は映画がすごい好きなんです。家の近所に映画館があって、時間が空いたら観に行っています。映像と一緒に曲を聴くと強く印象に残るのかもしれないですね。そういう意味では音楽は匂いに近いのかもしれない。例えば、恋人の家と同じ香りを嗅いだら、その時の場面が頭に浮かぶように思うんです。もしかしたら音楽もそれに近いのかもしれないですね。
──そして、セルフカバーの2曲は英語バージョンで収録されています。
細かいニュアンスは変わってくるとは思いますが、歌詞で伝えたいメッセージは変わらないので、日本語詞を元に英訳しています。
──「Beautiful」の「You are the only perfection I found」というフレーズがカッコイイと思いました。
ありがとうございます。ただ、英語に移行しても歌詞のイメージが変わらないようにという想いがありましたし、僕は曲全体の持っているメッセージ性が大事だと思っています。もちろん、心が惹きつけられる歌詞も必要だと思いますが、歌詞だけではなくメロディやアレンジも含めてトータルで生まれてくるメッセージが音楽としては重要なのかなと思っています。「Life is Beautiful」、「Beautiful」の2曲は、そういう想いがとても上手く表現できたように思います。
──そして、今回の『Love is Beautiful』を引っ提げてツアーの開催も決定しています。
ブルーノート系列の会場が多いので、落ち着いたライブにはなるかな。アコースティックが主体になりますが、寒くなる季節にピッタリ合う表現方法を見つけて、会場全体を温かい雰囲気にしたいですね。ライブを観に来てくださった皆さんにとって、今年を締めくくる良い思い出になれば嬉しいです。
1. It don’t matter with Donavon Frankenreiter
2. Change the world
3. Beautiful (English version)
4. I don’t want to miss a thing
5. If I ain’t got you
6. Life is Beautiful (English version)
【CD情報】
アルバム
発売:2016.11.09
AVCD-93512
avex trax
1,944(税抜)
CD購入
オフィシャルサイトはコチラ!
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平井 大 Premium Acoustic Tour ~Love is Beautiful~
・12月03日(土) 【神奈川】Motion Blue YOKOHAMA
・12月04日(日) 【神奈川】Motion Blue YOKOHAMA
・12月17日(土) 【福岡】FUKUOKA Gate’s7
・12月26日(月) 【東京】COTTON CLUB
・12月30日(金) 【東京】Billboard Live TOKYO
平井 大 Live Tour 2017年春 全国ツアー開催決定!
・2月18日(土) 【愛知】ダイアモンドホール
・3月04日(土) 【沖縄】ミュージックタウン音市場
・3月11日(土) 【福岡】DRUM LOGOS
・3月19日(日) 【大阪】Zepp Osaka Bayside
・4月09日(日) 【東京】TOKYO DOME CITY HALL
※各公演の詳細、最新のライブ情報はオフィシャルサイトをチェック!
https://hiraidai.jp/
1991年5月3日、東京都生まれの25歳。
ギターとサーフィンが趣味の父の影響で幼少の頃より海に親しみ、3歳の時に祖母から貰ったウクレレがきっかけで音楽に興味を持つ。印象的な耳に残る優しい歌声と歌詞、キャッチーなメロディーラインは聴く人の気持ちを癒し、穏やかにしてくれる。
2016年6月、約1年ぶりとなるアルバム『Life is Beautiful』をリリースし、iTunesで総合チャート1位を獲得し話題になる。7月から初のホール公演を含む過去最大規模、全国 13会場の~ Life is Beautiful~ツアーをスタートし全会場を SOLD OUTさせ、各地で圧巻のパフォーマンスを繰り広げる。さらに 11月にはCover Album『Love is Beautiful』をリリースし、Premium Acoustic Tour 2016 ~Love is Beautiful~で各地Billboard LiveやBlue Noteなど、全国で14公演を開催。
Surf Rock界を牽引する若き異才の持ち主として多方面からの注目を浴びる平井 大に今後も期待が膨らむ。