魔女に憧れた少女時代、独特な発想のユニークな歌詞、耳に残るキャッチ―なメロディーに注目が集まり、その唯一無二の世界観から「妄想系個性派シンガーソングライター」の異名をとる吉澤嘉代子。趣向を凝らしたライブも話題を呼び、この春に開催したツアーは各地ソールドアウトになるなど人気急上昇中だ。そんな彼女が、3rdミニアルバム『秘密公園』をリリースするとのことで直撃インタビュー。自身初のラブソング集となるこのアルバムは、華やかで豪華なサウンドのリード曲「綺麗」のイントロから一瞬にして耳を奪われる。しかもインタビューで語ってくれた、その歌詞にこらした言葉の工夫とは?「文字の表記がスゴイ気になる」「言葉の組み合わせや選択に快感がある」という彼女の歌詞のこだわりに迫ります。
──実は2年前に開催された初のワンマンライブ「吉澤嘉代子 ファーストワンマンショウ ~夢で逢えたってしょうがないでSHOW~」を拝見しました。
えっ!?あのライブを観ていただいているんですか?あの日は「世の中にこんなに楽しいことがあるんだ」と思ったぐらいで本当に楽しかったですね。あらためて「頑張って行こう!」と思いましたね。
──ファーストワンマンショーでは、「チョベリグ」など華やかでキラキラした前半のステージから、アンコールの「東京絶景」では本格派シンガーソングライターの片鱗を見た気がして、その幅広い魅力に惹かれました。それでメジャーデビュー作の『変身少女』からリリース全作品、モバイルサイトのメール・インタビューをお願いしていた次第です。今回は、10月7日にリリースされる3rdミニアルバム『秘密公園』の取材ですが、よろしくお願いします。『秘密公園』は1曲目「綺麗」の華やかなイントロから耳を奪われ、ラストの「真珠」まで一気に聴き通してしまうスゴク良い作品でした。
嬉しいです。
──制作はいつ頃からスタートしたのですか?
収録6曲のうち5曲は、5月~7月に書きましたね。最後の「真珠」だけ大学生の頃、多分21歳ぐらいに書いた曲です。「真珠」を今回のミニアルバムのイメージとして持っていて。
──『秘密公園』のテーマは「恋」だそうですが、「恋」をテーマにしたキッカケが「真珠」だったんですか?
自分が作りたい作品のテーマを常にストックしているんです。その中から今回は「恋」をテーマに選びました。
「少女性」が私の1つの味になっているのかなと思っているんですけど、前作の『箒星図鑑』で自分がずっと描きたいと思っていた少女時代をパッケージに出来ました。それで「次はどういう風にしようか?」と考えた時に、主人公像の年齢を少し上げて同世代の女の子に伝わるような、少し大人っぽいアルバムにしたいなと思ったんです。私自身が成長したとか、大人への1歩を踏み出したという実感はないんですが、そういう風に見せてみたいと思って(笑)。
そして、ストックしているテーマの中から今回は一番イケイケなモノにしたい、さらにロマンティックな秋冬に合うようなキュンと来るモノにしたいなと。それで楽曲を集めてみたらラブソング集になっていて、6曲の共通項として「秘密」があったので「秘密をテーマにしたラブソング集」ということになりました。
──因みに「恋」以外の候補には、どのようなテーマがあったんですか?
今後リリースする作品のテーマになるかもしれないので秘密です(笑)。
──「秘密をテーマにしたラブソング集」からタイトルはどのように決めたのですか?
アルバムのリード曲「綺麗」の舞台が公園なんです。好きな人と一緒にいるだけで、いつもの公園にいるカップルが鳥のつがいに見えてきたり、ベンチに座っているオジサンがオブジェに見えたり。恋をすることで迷い込んでしまうパラレルワールドが舞台になっています。「綺麗」がスゴク気に入っている曲だったので、ここに寄せたタイトルにしたいと思って付けました。
──『秘密公園』までリリース全作品のタイトルが漢字ですが、こだわりがありますか?
私は文字の表記がスゴイ気になるんです。「これは漢字で良いのか?」、「これは本当に平仮名で良いのか?」みたいなことを最後まで考えますし、考えるのが好きなんです。例えば平仮名だったら無意味さや優しさを求めたり。それで漢字にはロマンティックを求めているんですよね。漢字は1文字のそれ自体にも意味が含まれていますし、1つ1つの言葉は皆さんが知っている優しい言葉を使いながら、その組み合わせによって、新しい造語が生れたらなって思って考えましたね。歌詞も、なるべく優しい言葉でみんなに伝わるモノと自分が守りたいラインのハザマみたいなのは、常に意識して書きますね。
──自分が守りたいラインというのは?
言葉にするのはスゴク難しいんですけど、自分の感覚として「気持ち悪さが無い」という感じでしょうか。そこで自分が許せるラインを意識して書きます。今回は自分の表現に走るのではなく、人に伝わる歌詞を書くことを意識しました。私がやりたいことは自分の言葉をどう表現するかであって、歌詞が自分の気持ちそのものというワケでも全然無いんです。「想いを伝えたい」という気持ちはほとんど無くて、「この言葉の組み合わせはどうでっしゃろ!」みたいな(笑)、言葉の組み合わせや選択に快感があります。シンガーソングライターなので出来上がった歌詞の内容と私自身がイコールに思われがちなんですけど、作った歌を私自身が駒になって歌っている感覚というか、私の中では切り離して書いている曲が結構あります。
──今回のリード曲「綺麗」も曲作りのキッカケは漢字ですか?
「綺麗」という言葉、漢字のカタチに惹かれて、このタイトルで曲を作りたいと思ったんです。それで「綺麗とは何だろう?」と考えた時に、カタチを留めておけないからこその綺麗なのかなと思って「永遠と瞬間」がテーマになりました。1番では隣にいる好きな人に今この瞬間だけ自分を綺麗だと思ってもらえたらいいなっていう乙女心を歌っています。それが2番になると、もうずっとは一緒に居られないかもしれないけど、「今この瞬間の自分だけを“一生”綺麗だと思い続けて」という想いに変わっていく歌なんですよね。さっきの表記の話に繋がるかもしれませんが、1番にある「キラキラ」、「ピカピカ」、「クラクラ」をただ繰り返すのではなく、その綺麗な言葉に濁点を付けることで気持ちが濁ってドンドン歪んでいくみたいな、純粋な乙女心から「綺麗だと一生思って欲しい」という狂気的な気持ちにエスカレートしていく様を表しています。そういう風に聴いてもらえたら、また一味違う楽しみ方になるかなって思いますね。
──「綺麗」は華やかなイントロで始まり、ブラスからストリングスからスゴク贅沢なアレンジです。アレンジのアイデアはご自身が出したのですか?
「綺麗」をアレンジしていただいたsugarbeansさんには、これまでも2曲ぐらいやっていただいますが、今回はタイトル通り「綺麗」なアレンジにしてもらいたいなという想いがありました。それで楽器が沢山入っているんだけどキチンと整理されたアレンジをしていただけたらなと思って、sugarbeansさんにお願いしました。sugarbeansさんもシンガーソングライターさんなんですね。だから歌詞をスゴイ読み込んで考えてくださって、美しいアレンジはとても気に入っています。特に2番の音が急に少なくなって「しわしわになるの」という部分が好きですね。聴くたびに「あーー!」って歓声が出ちゃいます(笑)。あと、「綺麗」では初めてハープを入れています。以前から「ハープを入れたいです」とディレクターさんにお願いしていたんですが、今回叶ってスゴク嬉しいですね。
──ちなみに「綺麗」はミュージックビデオも撮影されたそうですが、どんな作品に仕上がりましたか?
夜の公園をイメージした映像になっています。全身タイツな男の人が出てきたりしますね。
──そこだけ聞くと、お笑いチックな印象が(笑)。
お笑いじゃないんですけどね(笑)。撮影中、その全身黒タイツの男性が熱そうで苦しそうだったので、とても心配でした。
──2曲目の「ユキカ」のイントロは何と言ってるんですか?
これは私も解らないんです(笑)。多分、デモで録音した歌声だと思うんですけど、サウンドプロデュースしていただいた横山裕章さんが、いろいろ組み替えて作ってくださったんです。私もビックリしてスゴイ新鮮でした。面白かったです。
──「土砂降りがひいた アスファルトの上 宝石が埋め込まれているように煌めいて」という歌詞が素敵です。また、「のどもとから背中まで あなたの矢にひき裂かれて」の「のどもとから」というところが独特の表現だなぁと思いました。
「ユキカ」は気持ちが高揚しているところから不安になっていく「初恋のグラデーション」を描きたいなって思って書きました。2番は少し毒を入れたいと思って、「のどもとから背中まで」という、ちょっとグロテスクな表現にしてみましたね。
──「綺麗」、「ユキカ」、「運命の人」の歌詞には、「月」が出てきます。
本当だぁ(笑)。月が好きなんでしょうね(笑)。確かに3曲とも前半に出てきますもんね。
──特別な想いがあるわけでは無く、偶然ですか?
そうですね。
──収録6曲の中では「必殺サイボーグ」というタイトルが一際目を引きます。HALIFANIEさんの作曲ですが、他の方が作った曲に歌詞を書くのは初めてですか?
これは曲に歌詞を乗せたんですよね。初めてのことで難しかったです。もともとは「殺し屋サイボーグ」というタイトルだったんです。けれど「殺し屋は良くないんじゃないか」という話になったので「必ず殺す」っていう言葉をハメて「必殺サイボーグ」になりました。サイボーグの曲を作るという構想は元々ありました。HALIFANIEの張替さんは元キンモクセイのドラムで、私の初期のライブや今回もレコーディングに参加していただいています。スゴイお世話になっているのですが、張替さんと小貫早智子さんでやられているユニット、HALIFANIEさんの曲をいくつか聴かせていただいた時に、「必殺サイボーグ」となる曲と出会いました。その時は出鱈目なフランス語のような歌詞のデモだったんですけど、メロディを聴いて「この曲だったらサイボーグに合うかも!」と思って、使わせていただいていただくことにしたんです。それで、やっぱり曲に言葉を乗せることは難しいなと思ったんですけど(笑)、スゴク楽しかったです。
──因みに詞と曲はどちらから作られることが多いですか?
ほとんどが歌詞ですね。歌詞というか最初にタイトルから作るんです。このタイトルの曲を歌いたいというところから曲作りが始まって。「綺麗」のようにタイトルに見合う物語を考えて、歌詞を書いて、メロディを付けて、コードを乗せるというのが一番自然な作り方ですね。
──だから、ストーリー性のある歌詞が書けるんですね。
「必殺サイボーグ」も難しかったんですけど、私は曲に歌詞を乗せるのが苦手なんですよね。自分の言葉を何かのカタチに残したいということが、歌を作り始めた動機なんです。ですから、言葉にメロディを付けるからこそ意味があります。勿論、良いメロディが浮かんだなぁみたいな時もありますけど、大概、歌詞から書きますね。
──昨年11月の「ファーストツアー ~妄想文化祭~」東京公演も拝見したのですが、MCで「歌い方は雪村いづみさんに影響を受けた」とおっしゃっていて、とても驚きました。
雪村いづみさんも、松尾和子さんも大好きですね。私は、声は時代が作るモノだなぁって常々思います。その時代時代にウケやすい歌声っていうのがあるように思うんですね。私たちの世代は90年代の女性ミュージシャンに何処かしら影響を受けていて、全体的に少し声が幼い歌唱法だったりとか、私もその流れに乗っているように思います。その一方、雪村いづみさん、松尾和子さんはR&Bシンガーみたいな歌い方とはまた違うドスの効かせ方がスゴク良いなぁと思っていて。私は声が高いほうでドスの効いている声ではないので憧れの範囲なんですけど、取り入れられたらなぁという気持ちはありますね。あと判りやすいのは「ヒーカップ唱法」っていうらしいんですけど、エルヴィス・プレスリーとかがやっている、しゃくりあげるみたいな歌い方が私は好きなんです。
──そう言われると「綺麗」でも「ヒーカップ唱法」をしていますね。
そうですね。結構多用してますね。
──また、プロフィールには「父の影響で井上陽水を聴いて育ち」とありますが、今回の「キスはあせらず」もしかり、メジャーデビュー作『変身少女』から聴いているとアメリカン・ポップス、特にオールディーズに影響を受けている印象があります。
そうですね。ただマニアでは無いです。私のやりたいことの1つに、ひょうきんな歌詞というか、女の子のドタバタ劇みたいな物語のラインが1つあって、そこにオールディーズのようなサウンドがハマるなって自分では思っています。それを意識して曲を作ろうとしたことは今まで余り無かったんですが、「キスはあせらず」は、制作中にダイアナ・ロス&シュプリームスの「恋はあせらず」をよく聴いていて、続編みたいな気持ちで書きましたね。
──雪村いづみさん、松尾和子さん、ダイアナ・ロス&シュプリームスは普段から聴いているんですか?
聴きますね。今のディレクターさんに出会ってから、いろいろな音楽をまとめて教えてもらった時に引っ掛かった曲を聴いている感じです。ディレクターさんに教えてもらうまでは全然聴いたことが無かったですね。実は、サンボマスターさんが大好きで。
──吉澤さんの曲とは違って激しいですね(笑)。
「ああいう歌を歌いたいなー!」って思っていたんですけど、やってみたら声質と合わないので断念しました(笑)。
──将来的にチャレンジしてみたいですか?
もう大丈夫です(笑)。
──松尾和子さんばりのドスを効かせて、サンボマスターさんの楽曲を歌うという。
そうですね(笑)。サンボマスターさんと共演するのは夢ですね。
──また、ファーストワンマンショーのMCでは、いしいしんじさんの小説にインスパイアされて「ぶらんこ乗り」を作ったともおっしゃっていました。今回の「必殺サイボーグ」は作家・星新一さんの名作ショートショート「ぼっこちゃん」がモチーフだそうですね。ちなみに、好きな作家は?
一番好きな作家は、いしいしんじさんですね。子供の頃からずっと好きで。歌詞は松本隆さん、井上陽水さんに影響を受けているようにも思うんですが、一番は小説、あと短歌の影響が強いんじゃないかなって思います。
──短歌ですか?それは古典ですか?
いえ、穂村弘さんという現代の歌人ですね。中学生の頃に読んで衝撃を受けて、そこから他の歌人の作品も読むようになったんです。言葉に関しては、やっぱり短歌の方はスゴイです。五七五七七っていう制約があるじゃないですか。そこに余計なモノは一切無く、無駄なモノも1つも無く一瞬の情景を切り取ってしまうことがスゴク素敵だなって。歌詞はもうちょっと余裕があるので、言葉数に限りがあるからこそ出来るのかもしれないですね。
──いしいしんじさん、穂村弘さんの作品を読めば、吉澤嘉代子さんの歌のルーツを垣間見ることが出来るかもしれませんね。そして『秘密公園』を引っ提げ、11月27日より全国ツアー「吉澤嘉代子 秘密ツアー ~8都市をめぐる秘密公演~」がスタートします。今回のツアーに向けての抱負をお聞かせいただけますか?
ラブソングを豊富に入れて行こうかなと思っています。なんか震えてもらえたら(笑)。
──(笑)感動に震えて欲しい?
お客さんに感動してもらいたいと思ったことは、あんまり無いんですよね。前回やらなかったドロドロしていたりするラブソングも歌うつもりなので、脅えて欲しい?のかな(笑)。
2. ユキカ
3. 運命の人
4. キスはあせらず
5. 必殺サイボーグ
6. 真珠
【CD情報】
ミニアルバム
e-stretch RECORDS
発売:2015.10.07
CRCP-40432
1,667(税抜)
CD購入
オフィシャルサイトはコチラ!
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ミニアルバム『秘密公園』発売記念イベント ミニライブ&サイン会
★10月17日(土) HMV栄 イベントスペース 開始 18:00
★10月18日(日) 京都・SOLE CAFE 開始 14:00
※タワーレコード京都店での購入者特典(先着50名)ライブとなります。
★10月24日(土) イオンレイクタウンmori「木の広場」 開始 14:00
★10月25日(日) タワーレコード仙台パルコ店8Fイベントスペース 開始 14:00
★11月1日(日) ヴィレッジヴァンガード下北沢店 店内イベントスペース 開始 21:00(イベントスペース開場時間 20:30)
★11月7日(土) 蔦屋書店熊本三年坂イベントスペース 開始 16:00
★11月8日(日) キャナルシティ博多B1サンプラザステージ 開始 15:00
※インストアイベント情報詳細はこちら
http://www.crownrecord.co.jp/artist/yoshizawa/live.html
吉澤嘉代子 秘密ツアー ~8都市をめぐる秘密公演~
★11月27日(金) 大阪BIGCAT(開場18:00/開演19:00)
【お問い合わせ】夢番地大阪06-6341-3525(平日11:00~19:00)
★11月28日(土) 福岡INSA(開場17:15/開演18:00)
【お問い合わせ】TSUKUSU 092-771-9009
★12月04日(金) 金沢AZホール(開場18:15/開演19:00)
【お問い合わせ】FOB金沢076-232-2424
★12月06日(日) 岡山IMAGE(開場18:15/開演19:00)
【お問い合わせ】夢番地岡山086-231-3531(平日11:00~19:00)
★12月11日(金) 札幌Cube Garden(開場18:15/開演19:00)
【お問い合わせ】マウントアライブ011-211-5600(平日11:00~14:00/15:00~18:00)
★12月13日(日) 仙台darwin(開場17:15/開演18:00)
【お問い合わせ】キョードー東北022-217-7788
★12月17日(木) 東京LIQUIDROOM(開場18:00/開演19:00)
【お問い合わせ】ネクストロード 03-5114-7444(平日14:00~18:00)
★12月20日(日) 名古屋クラブクアトロ(開場17:00/開演18:00)
【お問い合わせ】ジェイルハウス052-936-6041
<チケット料金> 全自由3,800(税込) ※ドリンク代別
※チケット一般発売は、9/26より順次開始
●各公演の詳細、最新のLIVE情報はOfficial HPをご確認下さい。
http://yoshizawakayoko.com/
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