1977年生まれの彼女は、2003年にミニアルバム「サリー」でデビュー。そして2005年、月桂冠のテレビCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用、その楽曲の持つ世界観のインパクトの強さから大注目を浴び、彼女の快進撃が始まるきっかけとなった。安藤の魅力は少し裏声が混ざりながら伸びていく、耳に心地いい高音と、聴いているものの心の中に渦を巻き起こすかのような、異次元の感情表現を持ったボーカル力。そしてそれは男女を問わず幅広いファン層に受け入れられており、今やシンガーソングライターとして確固たる地位を築いているといって間違いないだろう。
そんな彼女の1年3ヶ月ぶりとなるアルバムには、真矢みき演じる女離婚弁護士の活躍が話題のNHKドラマ『全力離婚相談』の主題歌「人魚姫」を筆頭に、安藤ワールド全開の個性的な楽曲、全11曲が収録されている。今回は趣向を変えアルバム『あなたが寝てる間に』を、制作ディレクター自らが綴った備忘録で紹介していこう。
初顔合わせ、松本淳一さんによるアレンジ。松本さんは、矢野顕子さんの作品や映画のサウンドトラック「そして父になる」で、アカデミー賞音楽優秀賞を受賞するなど多彩な方。松本さんと別件で少しお仕事したときに、随分長い間形に出来ていなかった(原型は10年近く前に作られていた)「森のくまさん」が、彼の作り出すドリーミーな世界と融合すれば、素晴らしい作品になるんじゃないか、という読みは当たって、予想以上の仕上がりに。最初に上がってきたデモも凄かったが、レコーディングでのミュージシャンへのリクエストも実にドリーミー。森の中で何かが迫ってくるようにとか、もっと”のしのし”歩く感じとか。松本さんは佐野康夫さんのドラムに痺れた様子で、凄い!!って連発してた。
敢えて最初にネタバラししてしまうけど、ファレルのHAPPYを聴いたときに、なんて素晴らしい曲なんだと驚いた。そう、これは思いっきりそこを意識して作り始めた曲です。が、色々やっているうちに、もう少しwarみたいな、”いなたい”感じの仕上がりになってきて、ドラマーも当初の想定とは違う、重戦車”矢部浩志”さんを起用。フレーズをまたぐようなカッコ良すぎのフィルと、職人ベーシスト 沖山優司さんの作り出すメロディアスなラインが相まって、素晴らしい仕上がりに。アイゴンのイカしたギターもスパイシーでナイス!サックスは国内屈指のサックス・プレイヤー 山本拓夫さんがお一人で3管重ねておりますが、3管をなんと50分でレコーディング終了(有り得ない早さです)。帰り際に、「アレンジが本当に素晴らしくて燃えました」って言ってくれてアレンジャーが照れていた。個人的今作のハイライトは、実はこれ。
安藤裕子のアルバムには、ほぼ必ず入っている安藤裕子作詞 宮川弾作曲 山本隆二編曲シリーズ(ドラマチックレコード/さみしがりやの言葉達/etc..)。このシリーズは、原曲がわからなくなってしまうほど様相が変わってしまうことも多いけど、今回は割とイメージを踏襲。ただ、この曲に関しては、色んな音を詰め込んで埋めていこうという目論みがあったので、凄く派手な仕上がりになったのが原曲と違うところ。裕子さんは、山本君のアレンジが上がってくるまでは、歌詞のイメージが出てこないと言っていたが、アレンジが上がったら、わかった!(曲の意味?)と、すぐにスルスルと書き上げてた。サビハモのハマり(積み)が難しくて、珍しくプリプロの段階で何度もやり直したり、ハマってしまった。
裕子さんがある日、SKAの曲が出来た!といって持ってきたのが、この曲。いつもの様にプリプロでアカペラで歌った時からSKAだった。しかしそこは山本隆二。普通のSKA的な方向には行かず、押したり引いたり、裏打ち以外も混ぜて独自の世界に。伊藤大地君の若さ溢れるドラミングで唄が煽られる感じもいい。そう!この曲の変態的なギターソロは、いつも寡黙で演奏中も他の演者に気を使いまくる設楽君が、ソロを録る時に、一人ブースに向い、周りに全く何の意見も聞かずに、エンジニアにどんどん指示を出して、”勝手に”あっという間に録音したもの。みんな唖然の後に爆笑みたいな。彼もある意味天才だな。タイトルには特に意味はないみたい。
年明けのアルバムの前に、タワレコ限定で何か出しませんか?という社内のリクエストにお応えして、限定でクリスマスソングを出そうと思いついた。そういえば、クリスマスもの出した事なかったし。企画の最初から、これは末光君に曲をお願いして、アレンジも彼にやってもらおうと決めていた。最初の打合せで、もう彼の頭の中には曲が出来ていたんだと思う。あっという間にデモが送られてきて、リクエスト通りの曲とアレンジ。彼のリクエストで演奏陣はSUEMITSU & THE SUEMITHのメンバーが担当してくれる事に。ドラムの柏倉君以外は初顔合わせで、相当面白かった。末光君の仕切りも初めてで面白かったし、柏倉君とのデコボコ(身長差)コンビで、鈴を一緒に振り付けみたいに録音するときには爆笑!本人曰く、古き良き日のクリスマスの高揚感をもう一度!クリスマスの復権!というのがテーマ。
2014年3月に出したミニ・アルバム「Acoustic Tempo Magic」に収録した、ピアノと二人でやった曲のバンドバージョン。実は裕子さんは、オーティス・レディングにグッとくるタイプの人。(勿論、詳しくはないです)熱くなりすぎない熱量で言葉を届けるというテーマで唄録りに臨んでいました。実はこの曲は、とある映画の主題歌の話があって、その映画のイメージで彼女が書下ろした曲。その映画に僕がもったイメージと、この曲の歌詞と唄があまりにもぴったりで切なくて、初めてこの曲を聴かせてもらったときにプリプロルームで泣いてしまった。素晴らしい曲。この曲を聴いた時に、どんなテーマの書き下ろしでも的確に本質を見抜いて描いてくる彼女の理解力というか、洞察力の鋭さが本物なんだと再認識。因にその映画は主題歌なしになってしまった。本当に残念。
今夏、実験的に限定無料配信した楽曲。曲が出来てきた経緯は忘れてしまったけど、安藤裕子という名前を聞いた事あるけど、(あるいは、昔は聴いていたけど)最近の彼女がどんな活動をしているのか、どんな曲を作って歌っているのか知らないという人にもっと知ってもらいたくて、無料配信してみた。この結果は短期的ではなく何年間かで検証していく事になると思うけど、普遍的な魅力をもつこの曲を無料配信したのは正解だったと思う。本人も夏フェスやLIVEのMCで言っていたが、作った当初は恋愛の唄だと思っていたけど、歌っていくうちに恋愛だけではなくて、家族や、友達や、その人にとって大切なひとと一緒にいる事がとても素敵なことなんだ、という事を歌っている唄。
2015年1月からNHKで放送されるドラマ「全力離婚相談」のために書き下ろされた楽曲。書き下ろしの的確さに関しては前述したが、これも脚本を読んであっという間に書き下ろしてきた。最初からギターと唄くらいのシンプルな編成で、語りかけるように唄う事を想定していたので、夏フェスのリハの合間に、スタジオの控え室で山本タカシと裕子さんと僕と3人で20分くらいあわせてコードをつけた。そこで録ったラフ音源をNHKの製作陣にお渡したところ、満場一致で一発OK。そのままレコーディングへ。何度か夏フェスでやっているうちに、ベースがいた方がいいような気がしてきたので、敢えてエレキベースを入れる事に。イメージは、昔NHKで矢野顕子さんと細野晴臣さんが二人でやっていた「恋は桃色」みたいな感じ。因に、ドラマで流れるバージョンは唄のリバーブが全くなくて、耳元で囁いているように作ってある。アルバムに収録されているのとは別MIX。
この曲を松田聖子さんに歌ってほしいとは、本人の談。松田聖子さんへのオマージュ。詞曲、アレンジ、サウンド、全てその辺を意識した。やはり、僕らの世代の永遠のアイドルと言えば聖子ちゃん。今思えば(当時はそんなこと知らなかったけど)もの凄い作家陣による、最高峰の歌謡曲を歌い続けていたのが彼女。安藤裕子のチーム(みんな少なからずそうだと思うけど)は少なからず影響を受けていて、それが如実に現れた楽曲。矢部さんのもっちりしたドラムが切なさを増して、キラッとした上モノが時代感を演出。
今作の中では、割と初期にレコーディングしていた曲。やり始めたら止まらなくなっちゃうパターンの、声をどんどん重ねていくやつがアウトロで炸裂。ストーンズの「You can’t always get what you want」みたいになってるけど、彼女は勿論、その曲を知りません。アイゴンのギターもカッコいい音色で、矢部さん沖山さんの重戦車のよなボトムと相まって、一番ロック的な作りになっている。何%の恋人にするかをかなり長い期間考えていたけど、なぜ73になったのは謎。
これは、前作アルバム「グッドバイ」のときに途中までレコーディングしていたけど、アルバムの流れにあわないために、収録が見送りになっていた曲。今作制作の初期段階で、これを完成させて収録したい、という本人の強い希望があったため、弦(なんとアウトロ部分のみ!)と本人のコーラスをダビングして完成させた。どういう経緯か忘れたが、プリプロのときに山本君がつま弾いていたコードに、メロが降りてきてその場で共作した曲(因に、「のうぜんかつら」もそのパターンで作られた)。本人曰く、この曲のテーマは、陰陽師。芦屋道満が、どうたらこうたら…と、熱を持って説明されたけど、その辺り僕が全く興味がないので、詳しくは本人に!
02.Live And Let Die
03.大人計画
04.RARA-RO
05.クリスマスの恋人
06.世界をかえるつもりはない(BAND ver.)
07.レガート
08.人魚姫
09.You
10.73%の恋人
11.都会の空を烏が舞う
アルバム
cutting edge
発売:2015.1.28
CTCR-14840
3,000(税抜)
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LIVE INFORMATION
渾身の8th ALBUMを掲げて、約1年半ぶりのバンドツアー!
安藤裕子 LIVE 2015 「あなたが寝てる間に」
■3.22(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール
open 17:15 / star 18:00
全席指定 / 一般発売 2/14(土)
info:キョードーインフォメーション 06-7732-8888
■4.5(日) 名古屋・ZEPP NAGOYA
open 17:15 / start 18:00
自由席(入場順整理番号付) / 一般発売 2/21(土)
info:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
■4.11(土) 福岡・IMSホール
open 17:30 / start 18:00
自由席(入場順整理番号付) / 一般発売 3/1(日)
info:キョードー西日本 092-714-0159
■4.24(金) 東京・中野サンプラザホール
open 18:45 / start 19:30
全席指定 / 一般発売 3/15(日)
info:DISK GARAGE 050-5533-0888
Profile
1977年生まれ。シンガーソングライター。
2003年ミニアルバム「サリー」でデビュー。
2005年、月桂冠のTVCMに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、大きな話題となる。
類い稀なるソングライティング能力を持ち、独特の感性で選びぬかれた言葉たちを、囁くように叫ぶように、変幻自在の熱量の高い歌にのせる姿は、聴き手の心を強く揺さぶる。感情の渦を巻き起こすライブ・ステージの評価も高く、バンドとアコースティックの2形態で全国を細かく回り、着実に動員を増やしている。
CDジャケットやコンサートグッズのデザイン、Music Videoの監督をも手掛け、自身の作品のアートワークをすべてこなす。その容姿・ファッションセンスから、女性誌からも多くの声がかかり、モデルのみならず、セルフメイク・スタイリングにも若い女性を中心に注目が集まっている。
昨年デビュー10周年を迎え、来年1月には8枚目となるアルバムの発売も決定、マイペースながらも精力的な活動を続けている。