昨年12月から今年1月にかけて、全19公演に及ぶ全国ライヴハウス・ツアー“GOOD GLIDER TOUR”を敢行。4月からは、全国アリーナ・ツアー“GOLD GLIDER TOUR”を開催。7月14日、セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城県)にて、全20公演を終えたBUMP OF CHICKENだが、新曲「firefly」は、そのアリーナ・ツアー中に書かれた作品だと言う。4年ぶりの開催となった全国アリーナ・ツアーを終え、メンバー達はいま、どんな想いを抱いているのだろうか。
升秀夫(以下、升):無事に終わって良かったというのが率直な気持ちですね。アリーナ・ツアーの前のライブハウス・ツアーから、1本1本しっかりコンディションを整えて臨むことができ、大きなトラブルもなく最後までやり切れてホントによかったです。全国各地でお客さんに温かく迎えてもらって、幸せな時間を過ごせました。
直井由文(以下、直井):何よりお客さんが僕たちを待ってくれていたことがホントに幸せでした。ツアー前は不安もあったんですけど、最高のツアーにできたのはすべてのお客さんと、関わってくれたスタッフのみなさんのおかげだと思っています。みんなに対する感謝と、4人で全国を無事に廻ることができてよかったということ。終わってみて率直な感想といったら、それに尽きますね。
増川弘明(以下、増川):ツアーが終わった直後は実感が湧かなくて。胸にポッカリ穴が開いたような寂しい気持ちがありましたね。それもすべてツアーが充実していたからで。ライブすることが日常になっていたんだなとも思います。最高のツアーでした。
藤原基央(以下、藤原):ツアーが終わった瞬間は、頭が真っ白になりました。ホントにここに来れてよかった、目の前にいる人たちに会えてよかった。それはどの会場でも思っていたことで。うれしい、よかった、ありがとう。そういう想いばかりがライヴをやっている最中にも、1拍1小節ごとに強くなっていったんです。僕らの音楽を聴いてくれる人たちが目の前にいて、笑ったり、泣いたり、手を挙げてくれたり、聴き入ったりしてくれている姿を見るのは、何にも勝る雄大な景色なんですよね。久々にツアーをやって、改めて“これがライヴなんだ”って思いましたね。それは、ツアー前から想像していたことでもあるんですけど、いざ自分でお客さんとの関係性やそこにある現象を目の当たりにすると、みんなからもらえるものの大きさは、やっぱりすごかったです。
藤原:ツアー中に書いた曲なので、ライヴで感じたことが生理的に形になったんだと思うんですよね。全国のお客さんが見せてくれたいろんな表情は、僕にとってものすごい情報量だったから。彼らと一緒に、ライヴという空間を共有して作り上げた経験が、この曲に繋がっていったんだと思います。
藤原:“夢は叶うよ”という言葉って、古くから言われていますよね。これって、実際には、必ずしもそうならないからこそ生まれた言葉だと思うんです。誰かにその言葉を言われて励まされた人も、その人が困難な局面に立っているからこそ響いたはずで。それは僕が言うまでもなく、誰もが身を持って知っていることだと思います。欲望から生まれた大切な夢を、どうしても諦めなければいけなかった人たちがいる。道が閉ざされたら、切実な想いがあるほど、その事実を受け入れるにはすごく時間がかかる。ただ、それでも勇気を出して諦めることは・・・歌詞には“黄金の覚悟”と書いていますけど・・・それはすごく輝きのある行為で。僕がそれを思ったときにこの歌ができたんです。誰かにエールを送りたいと思って書いたのではなくて、あくまで僕がそういう想いを抱いたから書いた歌なんですね。ただひとつ思うのは、上手く言えないんですけど、ツアーでお客さんと裸の付き合いができた感覚があって。僕は、あなたたちのおかげでこの曲を書けたんだよって思いますね。
直井:まず、僕らにとってはツアー中に藤原くんが曲を書いたことがいちばんのビッグニュース。今まで一度もなかったことなので。ツアー中はメンバーみんなが感受性が豊かになっていたから、藤原くんからこの曲のデモを受け取ったときは、曲の疾走感も相まっていつも以上に歌詞の内容がダイレクトに響きました。そして、自分がライヴでこの曲を演奏している姿がハッキリとイメージできたんです。この曲は、ツアーでは披露しなかったんですけど、ライヴの光景をイメージできたことがすごくうれしかったし、歌詞に出てくる“光”をつかめたような感覚がありました。だから、ツアー中にこの曲をレコーディングできたこともホントに幸せで。ライヴのモードそのままに、いい意味で前ノリな状態で録れました。
升:藤原くんからデモをもらったときは、すごくカッコいい曲ができたなと思うと同時に、プレイヤーとしてビックリしたのを覚えています。打ち込みのドラムが入ったデモの段階から、細かい部分までいろんなアプローチが施されていて。でも、それがただトリッキーなのではなく、曲のダイナミズムと有機的に結びついていたんですよね。この曲でドラムが果たす役割はかなり大きいぞと思いましたね。それを受けて、自分ができることをしっかりやるという意識を持ってレコーディングに臨みました。デモのイメージを活かしながら、ダイナミックな曲にすることができた満足感があります。
増川:まず、アッパーな曲調や歌詞の深さにツアーの空気感が反映されているなと思いました。チャマ(直井)が言うように、ライヴでプレイしている自分たちの姿をすぐにイメージすることができて。ギターのプレイの面では、スリリングなアルペジオを弾いていると、いつの間にか熱くなっている自分がいるんです。細やかなプレイが要求される面もあるんですけど、どんどんエモーショナルな気分になっていく。この曲がリスナーにどう響くのか。僕らがまたいつかライヴをやるときに、この曲をどのように再現できるのか。今からすごく楽しみです。