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涙腺を撫でる、あまりにリアルな恋愛風景

インタビュー

Noa

Noaの5枚目のオリジナル・アルバム「Molt」は、今まで彼女がみせたことがない超ハッピーな世界を歌い上げる曲から、大きな愛を失い傷ついた人々を悼むバラード、さらには転んでも挫けずに立ち上がり走り続けるキミを応援する力強い楽曲など、実にバラエティーにとんだ内容だ。地元仙台を活動拠点としている彼女は、当然のことながら東北大震災に襲われ、多くの人々と同じようにいろいろな傷を負わされた。震災から早くも二年。皮肉なことにその時に背負った傷が彼女を大きく成長させ、新しいものへの挑戦へと駆り立てているようにも思える。この「Molt」から、まさに新しいNoaの世界が始まる。

言葉にできない感情を抱えて

──そもそも音楽をやるきっかけ、シンガーソングライターとして、今のキャリアに入る経緯をお聞かせ下さい。

Noa:地元の仙台で普通に高校を卒業して仕事をしていたのですが、その頃に出会った友達とかに自分の歌を聴いてもらったりしていた。そうした活動の中で、歌を聴いてくれた人たちが感動してくれたりとか、泣いてくれたりとかがあって、それでもっと大勢の人の前で歌いたくなったのです。自分の作った歌を大勢の前で披露してみたくなった。ちょうどその時に、仙台を拠点にしているノーダウトトラックスという事務所を見つけたので、自分から進んでオーディションを受けさせてもらって、その結果、拾ってもらったという感じですね。

──その時は、例えばギターやピアノの弾き語りとか、楽器はやっていたのですか?

Noa:小さい頃にピアノは習っていましたけど、そのデビューの頃は楽器はやっていなかったので、オーディションはボーカル勝負でした。

──作詞についてはどうですか。アマチュアの頃から作詞はしていた?

Noa:中学校の時に遊びで、ちょっとしたバンドをやっていたので、その時に自分で作詞らしきことをしましたけど、きちんとした作詞はアーティストになってからですね。

──作詞は難しくなかったですか?

Noa:それが意外にも、最初からわりとすんなり書けました。私の歌詞は自分の言いたいことを綴るという感じで作っていくので、書きやすかったのかもしれませんね。

──それでデビューされて、早くも5枚目のオリジナル・アルバムです。7月17日発売の「Molt」ですが、まず、ジャケットがセクシーですね。

Noa:はい。今までのアルバムもジャケットは結構作り込んでいて、カラフルだったりとか、そういうものが多くて、それらのプロデュースは全部お任せしていたのです。今回は初めて「私がこういうのをやってみたいんですけど」って意見を言って、それを取り込んでもらって作りました。ベスト盤を出して1年ぐらい経っていて、もうそろそろ大人にチェンジしていきたいという気持ちもあったので、「ナチュラルで、シンプルで」っていう、ちょっとラフな感じのビジュアルでジャケットをやってみたかった。そうお願いしてやらせてもらって…、出来上がりは最高に気にいってます。

──リード曲の「幸せの鍵」。これは超ハッピーな曲でして(笑)、今までのNoaさんのイメージでいうと悩める恋愛を切なく歌う感じがあるのですが、そのイメージを打ち破ったというか、新境地への到達を感じさせますね。

Noa:今までの作品で言うと、確かに4thアルバムの「N」までは自分が書いてきた歌詞が結構せつなかったり、悲しかったりするものが大半でした。それでその後にベスト盤を出して一段落して、今回新しいオリジナル・アルバムということで、視点を変えたラブソングを書きたいという意志が芽生えたのです。それで幸せめなラブソングに最近ようやく挑戦することができて、ようやく書けるようになってきた。

──何か大きな心境の変化があった?

Noa:外部からの影響ではなく、自分の中から書きたいと思う気持ちが湧き出てきたのが大きいですね。もともとデビューする前から、好きなジャンルはバラードだとか泣ける曲だった。だからそういう曲を多く作ってきたのですが、それが今になって、新しい視点に挑戦しようという気になった。自然な形で、そう思えるようになったということです。それで実際に挑戦してみてよかったって、とても満足しています。

──一方、もう一つのリード曲である「See you… feat. LGYankees HIRO」は失恋ソングですね。

Noa:この曲は、一見は失恋バラードですけど、これを作ろうと思ったきっかけがある。実は、前に作ったオリジナル・アルバム「N」の時にも震災に関わる歌を作ったのですが、その経験を経て、最近、震災にまつわる本を改めて読む機会を持ったのです。実際には読んでいるうちにちょっと辛くなっちゃって、今でも最後まで読めていないけど、そういうのを読んでいくと、恋人同士だけではなくて、例えば親子や友達や大切な人を亡くした方が大勢いるという現実を改めてつきつけられるわけです。そこで、そういう人たちが思っていることを代弁するなんていうおこがましい気持ちは全くないのですが、私に出来る何かしらの気持ちを歌えたらいいのかなぁと思った。それで作ったのがこの曲です。

──ここで歌われている愛は、恋愛を超えたもっと大きなテーマなんですね。

Noa:そうですね。

──実際に震災の時は仙台にいらした。

Noa:いました。ただ幸いにも街中だったので、直接的な被害は少なかった。でも例えば海の近くの町に行ったりすると、それはもう大変なことになっていて…。当然、そういう思いをされている人たちと知り会い話をすることもあったし…。それが身近な経験としてあったので、そういうことをベースに、今ここで、改めて書きたいと思いました。

──お友達や知り合いの方で被害に遭われた方は?

Noa:沢山います。

──そうしたことを抱え込んで、Noaさんの仕事である歌にして歌っていくということに結びついていくんでしょうが、このテーマはきっと、この先ずっと続いていくんでしょうね。

Noa:そうですね。形は変わっていくと思いますけど、何らかの形でずっと続いていくと思います。

──そういうことを踏まえると、今回、「幸せの鍵」のような明るくポジティブな曲を書けるようになった、それに挑戦しようと思えるようになったことにも、大きな意味がありますね。

Noa:そうですね。私たちは地元ですから、ごく普通に炊き出しに行ったりとか、被災地でライブもやらせてもらいました。実は私の母校が大きな被害を受けた地域だったので、そこに歌いに行ったりしました。でも、こっちが勇気づけに行っているはずなのに、聴きに来てくれた人たちに、逆に勇気づけられちゃうんですよ。もう歌っているこっちがぐっときちゃって…。思っている以上に、みんなが明るく振舞っているというか、そういう姿を目の当たりに見せられると、あれやこれや言葉に出来ない、言い尽くせない、物凄く強い感情を持ちましたね。

夏には初のソロライブを

──今回のアルバムの中で、今挙げたリード曲以外に敢えてオススメ曲を挙げるとしたらどの曲ですか?

Noa:うーん、迷いますけど(笑)、敢えて言えば「Soldier feat. PURPLE REVEL」ですかね。これは今を生きる人々に届けたい曲です。テーマとしてわりと恋愛モノが多い中で、この曲はずっと温めてきた曲です。実は2ndアルバムか3rdアルバムの時には、すでにトラックが出来上がっていた。それを何回も歌詞を書き直し、書き直しして、ようやくここで出せたものです。

──かなりの思いが込められている?

Noa:そうですね。今だから歌える歌詞ですね。こういう仕事をしてきて、この歳になるまで生きてきて、すごく大変なことやつらいこともあったし、というのを経てできた曲です。どういう仕事をしてようがどんな人生にだって、その人その人につらい局面というのはあるので、そういうつらい時期もあると思うけど、手を伸ばせば必ず助けてくれる人もいるんだ、それに気づいて欲しいという気持ちを込めました。これは私自身のことでもあって、本当は手を伸ばせば助けてくれる人たちがいたのに、それに気が付かなくて、それにようやく気づいたから書けたという歌詞です。

──ここでいう愛というのも恋愛限定ではなく、もっと大きな人類愛とか、そういうことですね。

Noa:そうです。こういうリアルで強くて、ハードな歌詞は今まで書いたことがないので、私にとっても珍しい曲ですね。

──確かにNoaさんの歌詞は、女性ウケする内容が多い。

Noa:私のは自分の体験から出していることが多いので、自然とメチャメチャ女性目線ですね(笑)。

──男に言わせると、「それはちょっと、めんどくさっ」っていう女心が出てくる場合もありますが(爆笑)、そんな中にあって、「Soldier〜」も新境地、新しいNoaさんに出会える曲ですね。

Noa:そうですね。

──一方、「未来へ」という曲。これは母性を感じる内容で、辛抱強く、優しい気持ちが綴られています。

Noa:これも大人になったから書けるというわけでもないですけど、例えば結婚する予定のカップルとか、付き合って長いカップル、あるいは夫婦になってから、そういう人々の未来を見つめている状況を書いてみたくて作りました。若い子の全てがそうとは限らないけど、でも若ければ若いほど付き合っている相手に対して我が出る。そこを大人になって色々学んできて、一緒にいる相手と長く連れ添って、相手をようやく思いやることが出来るようになってきたかなっていう気持ちの変化を書きたかったのです。

──実際のNoaさんの中には、母性と魔性とどっちが強く宿っています?

Noa:それはどっちもある(笑)。どっちも自分の一部として書いていますね。

──作詞をするにあたって、苦労していることはありますか?例えばネタというか、モチーフなるようなことはどうやって見つけるのですか?

Noa:例えば友達と恋愛の話とかすることはありますし、そういう悩みとか相談とかからインスピレーションを貰うこともありますけど、歌詞を書くためにそれをしているという意識はないですね。基本的に歌詞を書くために何かをやろうという発想は全くないです。普通に日常過ごしていたことを歌詞にしてしまうことが多い。ただ思いついたフレーズを書き留めておくことはあります。もちろん曲によってですが、その時にふと思い浮かんだ言葉がいいなと思えば、それを書き留めておいて、後から使うこともある。そうではなくて実際に「この曲を作るぞ」になってから、いちから考えて書く場合もあります。いろいろですね。

──作詞は手書きですか?

Noa:主にiPadです。ただメロディを付ける時は、そこからノートに歌詞を書きながらやります。それから一回ノートに書いたものを、今度はiPadに打ち直したりとか、面倒くさいんですが、そういう作業をしますね。

──ノートに書くというのに意味がある?

Noa:そうですね。やっぱり手で書くと気持ちが入ったりするし、単語、単語であれこれ読み方を考えたりもするので、ノートに書くようにはしています。

──作詞は机に向かってですか?あるいは出先とか?

Noa:いろいろですが、外で歌詞を思いつくこともあります。それも移動中が結構多いですね。誰とも喋ってない移動中に窓の外の風景を見ていて、思いにふけっている時が歌詞が一番出てきやすい。そういう時に窓の景色を見ながら、携帯にメモしておこうというのは結構あります。

──映画や小説はどうですか。インスピレーションを貰うことがありますか?

Noa:小説は恋愛モノを読まないので、あまりつながりませんね。でも映画は恋愛映画をよく見ますので、インスピレーションを貰うこともあります。そこからこの言葉がいいとか、こういう雰囲気の曲を作りたいとかを連想したり、そういうのはあります。邦画よりも洋画が多いですね。最近のオススメでは、すごく新しい映画ではないですが「食べて、祈って、恋をして」という映画が好きで、もう何回も見ています。主演はジュリア・ロバーツで、ラブ・ストーリーなんですけど、人生というテーマも入っていて、いろんな視点から見られる映画です。

──曲を作る時は、作詞と作曲とどっちが先に出てくるのですか?

Noa:同じくらいですね。敢えて言えば、トラックを聴きながら最初に自分の言いたいことを、ばっと作文していって、それでメロディを作って、歌詞をはめていくという感じですかね。ただメロディを先にかっちりとしちゃうと、自分の言いたいことが言えない場合がありますね。だから自分の言いたいことを先に作っておいて、メロディを作ってという手順がいい。そんな風にメロと歌詞とを一緒につくる感じです。もちろんその途中にああでもない、こうでもないがありますから、例えば今回の作品でかかった期間を考えると、「Soldier〜」が、一番時間がかかりました。

──今回のアルバムの中には、テクノっぽい曲もあります。

Noa:「Coco Paradise」ですね(笑)。これはLGYankeesのDJ No.2さんが作ってくれたものです。彼にはいつも作詞も作曲もお任せで、「夏っぽい、アップテンポな曲」っていったら、これが上がって来ました。実はデビューした時から「Noaちゃんは、にゃんにゃんな曲でしょ」みたいなイメージをもっているらしく、またここで女の子らしいというかガーリッシュな曲を作ってくれました。私も「そろそろ歳相応な曲を歌おうと思っているんですけど」って言ったんですが、「いや、Noaちゃんは、にゃんにゃんでしょ」みたいな感じで、言われてしまう(笑)。

──そしてアルバムの最後の曲は、その名も「NO DOUBT FAMILIA」。みなさん出演で、頑張っていこうみたいな、元気の出る曲です

Noa:今まで私のアルバムの中でマイクリレーを作ったことがなかったのでやってみました。ノーダウトトラックスには新しく入ってきたアーティストさんも結構多いので、楽しんで頂けると思います。私たちはツアーやライブも、ファミリー全員でいつも回ったりするので、そういう時にみんなで歌える一曲があったらより楽しくなるだろうなぁ、と思って、絆も深めたいという気持ちもあって、そういう意味を込めて、みなさんに出演をお願いしました。だからライブで、みんなで歌いたいなぁと思っています。

──ライブが楽しみですね。

Noa:この夏は8月19日に、渋谷で初ソロライブをやりますので、ぜひ、遊びに来て下さい。今回のアルバム「Molt」は、今まで私のアルバムを聴いてくれたみなさんにも、これが初になるみなさんにも、多分楽しんでもらえます。Noaの本当にリアルな部分とか、素の部分が、歌詞を通して聴ける一枚になっています。ぜひ、是非聴いて下さい。


★Music Video★

ジャケット写真は、DVD付初回限定盤です。
Molt

【DISC-1】
01.Intro.
02.幸せの鍵
03.初恋の人
04.See You… feat. LGYankees HIRO
05.君が好きだった歌
06.口グセ feat
07.Celebrate feat. Cloud9
08.Coco Paradise
09.Soldier feat. PURPLE REVEL
10.未来へ
11.アナグラム
12.NO DOUBT FAMILIA / Noa with NO DOUBT FAMILY
【DISC-2】(DVD)
01.幸せの鍵(Music Video)
02.See You… feat. LGYankees HIRO(Music Video)
03.NO DOUBT FAMILIA(Bonus MV)

アルバム
発売日:2013.7.17
KING RECORDS
DVD付初回限定盤
KICS-91919
¥2,800(税込)
通常盤
KICS-1919
¥2,200(税込)


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LIVE INFORMATION


Noa First Solo Live…Molt
日程:2013年8月19日(月)

OPEN 18:00/START 19:00

会場:渋谷duo MUSIC EXCHANGE

¥3,000(税込)オールスタンディング・ドリンク代別


【プロフィール】

Noa(のあ)
幼少の頃よりピアノを習い、歌が好きな母親の影響を受けて育つ。
08年に発売した1st アルバム「LUCY LOVE」は収録曲「信じてる」「KO.A.KU.MAⅡ feat.MAICHI」「Peace My Life feat. 山猿」が話題となり、デビューアルバムにして5.5 万枚を売り上げた。
09年8月2nd アルバム「LUCY LOVE -SEASONⅡ-」を発売。オリコン週間8 位を記録。
09年12月にはミニ企画アルバム「LUCY LOVE -WINTER SEASON-」からの楽曲「WINTER SONG」が着うたフルWeekly2 位を記録する。
10年8月に、3rd アルバム「Noaism」をリリース。 11 年12 月、キングレコードへの移籍第一弾作品として4th アルバム「N」をリリース。
12年7月11日には満を持してベストアルバム「Noa’ s LOVE」をリリースし、自身最高位となるオリコンWeekly7位を記録した。
13年4月現在、着うた・着うたフル・RBT の累計ダウンロード数は350 万を突破。
持って生まれた天性の歌声、磨きあげられた歌力、そして彼女の記す直情的なリリック。
裏付けられた数字以上に説得力を持つ数々の要素からは、音楽と共生する若者にとって無くてはならない存在であることがうかがえる。
名実共に日本の音楽シーンを席巻するNoa。いま、彼女から目を離すべきではない。

-インタビュー

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