2019年2月にリリースした3rd アルバム『Nice Body?』のワンマン・ツアー『Nice Body Tour?』は、2月の北浦和KYARAからスタートし、5月18日のファイナル沖縄まで全国15公演とドミコ最多数のツアーとなった。
先週末19日、これまでもイベント等で出演していた恵比寿リキッドルームでは初めてのワンマンとなったセミ・ファイナル公演は見事SOLD OUT。
今回のツアーで本数を重ねる毎に変幻自在に進化し、常に独自の世界を追及し続けてきたドミコだが、メンバーにとっても、その空間に居た人々にとっても、忘れられない一夜となった。
この日のライブの模様は5月の『ジロッケン環七フィーバー』にて一部OAが予定されている(詳細後日)。
5月の沖縄でのツアー・ファイナルに先駆け、一足先に小川智弘氏によるリキッドルームのライブ・レポートをお送りする。
※ドミコ 『Nice Body Tour?』 リキッドルーム ライブレポート】
今年2月6日にリリースされた3rdアルバム『Nice Body?』の全15公演からなるワンマン・ツアー「Nice Body Tour?」を行ってきたドミコ。その14公演目、セミ・ファイナル(ファイナルは5月18日・沖縄)、ソールド・アウトとなった恵比寿リキッドルームでのライブ。結論からいうと、ドミコというバンドにますます恋をせずにいられなくなるような一夜だった。
「前に詰めてくださーい!」というライブハウスのスタッフの声が、このライブに対する人々の注目度をはからずも物語る、つまり開演を待つオーディエンスでリキッドルームは満員御礼である。ステージの真ん中にはドミコのバンドロゴをかたどったネオンサイン。そしてキング・クリムゾン「イージー・マネー」が爆音で流れ、それをバックにさかしたひかる(Vo・Gt)と長谷川啓太(Dr)が登場だ。大歓声が送られるなか、さかしたはおもむろにギターでベースラインを弾き出す。そこに長谷川がビートを合わせ、さらにさかしたはループさせたベース音にブルージーなリフを重ねていく。そして歌い始めた、「ねっとりと耳に這う歌が終わるまで……」。1曲目はニュー・アルバムから「アーノルド・フランク&ブラウニー」。ヘヴィで酩酊感のあるグルーヴを鋭いギターリフが切り裂き、さらに重ねられたギターソロが僕たちを東京のど真ん中・恵比寿からロックンロールのマジカル・ミステリー・ツアーに連れ出す。ここどこ? さっき一瞬バッファローの群れが水浴びをしているのが見えたぜ。
「センキュー!」というさかしたの一言に続いて、一気にギアを上げて「マカロニグラタン」へ。今度は真っ黒な煙を上げるオンボロのスポーツカーかき鳴らすギターで操縦して、バッファローの群れを蹴散らしていくのだ。さらに、長谷川のタイトなエイトビートから「バニラクリームベリーサワー」。たったふたりとは思えない分厚い音と、たったふたりだからこそテンポもノリも自由自在の身軽さ、そんな両輪をフルパワーで回転させながら、演奏はますます加速していく。「よろしく、ドミコです!」というさかしたの自己紹介にまたしても大きな拍手と歓声が飛ぶ。
『Nice Body?』からは「さらわれたい」や「裸の王様」「わからない」、過去作からは「家出をして」や「おーまいがー」など、新旧織り交ぜたレパートリーを繰り出しながら、ライブは続いていく。「マイララバイ」から「旅行ごっこ」への流れなど、時折アイコンタクトを交わしながら緩急を巧みに操っていくふたりのコンビネーションはもちろんぴったり、とくに長谷川は髪を振り乱しながらあれだけ激しくドラム叩いているのに、なんでフラフラと揺れながら気ままに弦を弾いている(ように見える)さかしたに合わせることができるのだろう。2019年らしいヒップホップ的グルーヴ、あるいはハードリカーを飲みすぎたビートルズが演奏する「カム・トゥゲザー」みたいな「裸の王様」では途中で一気に速度を落とすテンポチェンジがあるのだが、少しもヨレたりズレたりしない。
そしてそのコンビネーションのよさをはっきりと教えてくれるのが、くっきりはっきりとした音のクオリティだ。ローファイなオルタナティヴ・ロックっぽい雰囲気を醸し出すドミコだが、スピーカーから出てくる音はどこをどう切り取ってもそうではない。ギターにかけられたディレイ、ヴォーカルのリヴァーブ、それに対してどちらかといえば硬めのキックやスネア。1本のギターでルーパーで幾重にも音を重ねているのに、ベース音も上モノもしっかり聴き分けることができる。ギター1本から始まる「マイララバイ」などは、そのクリアな音像が最大の威力を発揮していた。この丁寧な音作りはもちろんメンバーだけの功績ではないだろうが、ステージ上ではわりととんがって見えなくもないドミコの、音楽とオーディエンスに対する誠実さと愛を物語っているようにも思える。
さて、時折一言「センキュー」とは言うものの、それ以外はほとんど間をおかず楽曲を畳み掛け、気がつけば開演から1時間。「ロースト・ビーチ・ベイベー」→「ベッドルーム・シェイク・サマー」→「服をかして」という3曲を立て続けに演奏したあとで、初めてさかしたが喋りだす。といってもわざとらしい感謝の言葉やお涙頂戴の自分語りなどは当然、ない。
「どうも。やってる? はじめましてドミコです、恵比寿! 恵比寿ですか、ここは?」
今この瞬間まで鳴り渡っていた最高のロックを前に、言葉はこれで充分。また最高のロックを鳴らすだけだ。「まどろまない」ではルーパーを駆使してまるでひとりでジャムセッションをするように音をつむぎ、「united pancake」では思い思いに揺れるオーディエンスの中から幾本もの腕が掲げられ、『Nice Body?』のなかでもポップなメロディ(とそれをごまかすようなノイジーなギター)が際立つ「My Body is Dead」へ……そして本編最後には『Nice Body?』のオープニングナンバーでありドミコ史上でも屈指のロックンロールアンセム「ペーパーロールスター」を披露。待ってましたとばかりに声と手を上げるオーディエンスの姿が眩しかった。
鳴り止まない拍手に導かれたアンコールではこの日誕生日を迎えた長谷川に「おめでとう」の声が飛ぶ(さかしたは相方の誕生日を知らなかったらしいが)。そして「幽霊みたいに」「くじらの巣」を演奏し、ラストは「バイバイあんたのランデブー」と歌う「my baby」。さかしたのシャウトが炸裂し、この日のライヴは終わりを告げた。変わらずマイペースでロックンロールと遊びながら、バンドとしての進化も間違いなく加速しているドミコの今を刻んだ、インパクトの大きな夜だった。最高。
ライブレポート:小川智宏
写真撮影:森好弘
※ドミコ『Nice Body Tour?』 2019.04.19 EBISU LIQUID ROOM セットリスト
1.アーノルド・フランク&ブラウニー
2.マカロニグラタン
3.バニラクリームベリーサワー
4.Pop,Step,Junk!
5.さらわれたい
6.裸の王様
7.家出をして
8.わからない
9.おーまいがー
10.マイララバイ
11.旅行ごっこ
12.ロースト・ビーチ・ベイベー
13.ベッドルーム・シェイク・サマー
14.服をかして
15.まどろまない
16.united pancake
17.My Body is Dead
18.地球外生命体みたいなのに乗って
19.こんなのおかしくない?
20.ペーパーロールスター
====Encore ====
En1 幽霊みたいに
En2 くじらの巣
En3 my baby
※ドミコ「Nice Body Tour?」
2019年5月18日(土) 沖縄:output
OPEN/START : 17:30/18:00 Info. PM AGENCY 098-898-1331
チケット:前売 スタンディング 3,000円 (税込/D別)
チケット:一般発売中