クラシカルな要素を軸に据えた荘厳/壮麗な音の絨毯へ重く歪む攻撃的なギターサウンドを重ね、漆黒で神秘的な音世界を描き出す。ゴシックシンフォニア(ゴシック+シンフォニック)な音が唸る楽曲の上で、5人の女神たちが美しく、でも凛々しい歌声を持って”生”を物語る。爆音轟くライブは、演者たちと観客たちの生きざまを競い合う戦いの場。余計な言葉を挟むことなく女神たちと共に物語へ身を投じ、現世を忘れた空間で、時に激しく賜れ、時に陶酔してゆく。それがAphroditeの描き出す他に類を見ない音楽劇…。
Aphroditeは、4月に新宿LOFTでワンマン公演を行っている。そのときの手応えと課題をさらに深化させるべく、8月12日(月・祝)にふたたび新宿LOFTを舞台にワンマン公演「Aphroditeワンマンライブ〜revanche de Déesse〜逆襲の女神」を行った。先に嬉しい発表をお伝えしよう。Aphroditeは、2020年2月19日(水)に新宿BLAZEで「6周年ワンマンライブ」を行うことが決定した。より大きな空間の中、Aphroditeが描き出す物語へさらに深くのめり込んでいけるのは間違いない。この日の公演では、BLACK BUNNYSとコラボレートした衣装を身につけて舞台へ登場。新メンバー歩那のお披露目の挨拶も。さっそく、当日の模様をここにお伝えしたい。
荘厳な音色が会場中を包み込む。黒い楽園をその場へ創造するように流れだした『EDEN』へ導かれ、メンバーたちが舞台に姿を現した。ゴシック&シンフォニックな楽曲の上で、妖しく歌い踊るメンバーたち。次第に熱を上げる歌声と感情。妖艶な香り放つ5人。その仕種の奥からチラつかせた鋭い牙が、心へ噛みついた。さぁ、漆黒の闇を舞台にした儀式の幕開けだ。
メンバーの煽りを合図に、楽曲は唸りを上げて襲いかかる。ここが新たな物語の始まりの地だと宣言するように、Aphroditeは凛々しい歌声を魅力に『GENESIS』を突きつけた。荒々しい楽曲とは裏腹に、舞台の上を華麗に舞い踊るメンバーたち。その姿は、奈落で無邪気に戯れる黒い天使たちのよう。美しさと激しさが絡み合う『Utopia』でも、5人は、神々へみずからの身を、想いを捧げるように歌い踊っていた。彼女たちは歪(ひず)む演奏の上で祈りを捧げるように、澄み渡る歌声を闇の彼方で輝く空まで届くようにと歌っていた。
なんて麗しいステージングだ。美しき狂気へさらに狂気を塗り重ねるように、Aphroditeは『My Sweet Bach』を歌唱。たとえ世界が歪(ゆが)み螺子曲がろうと、私たちの意思は曲がることはないと伝えるように、5人は凛々しく歌声を突きつけていった。
突き刺すような痛く重い音を背景に、荒廃した失楽園へと連れ出すようにAphroditeは『Distopia』を歌いだした。激しく騒ぐ楽曲の中、彼女たちは一筋の光のように美しい声をはべらせ、触れた人たちに道を示してゆく。美しい歌声で人々を深海へ連れ去るローレライのように、その歌声は、荒ぶる音の中、手を伸ばしてつかみたい希望のようだった。ノイズのような歪む音が響き渡る『creator』の中でも、その歌声は一筋の強い光となって心を貫いた。奈落の奥底から”生”を示すように,Aphroditeは『Re-Call』を歌いあげる。雄々しきその歌声は、触れた人たちの心を捉えて離さない。慟哭にも似たその歌声を、しっかりつかみ取りたい。そんな衝動に心は支配されていた。
身体を杭で打ちつけるような重いビートに乗り、嘆くように歌をはべらす5人。Aphrodite流のタンスロックナンバー『ヨハネの福音』の登場だ。妖しく跳ねる演奏に想いを重ね合わせるよう、5人も弾むように歌声を重ねてゆく。仕掛けの壊れた人形のように歌い戯れる姿も魅力的だ。サビで一気に感情のボリュームを上げたのも、彼女たち自身が気持ちの熱情を滾らせたからか…。
とても開放的な楽曲だ。闇を超え、その先に広がった輝きをつかむように、5人は、時に笑みも浮かべながら『パルテノンを眺めて』を熱く歌いだす。彼女たちの誘いへ導かれ、フロアから上がる熱い声。荘厳な物語だけがAphroditeではない、時空を飛び越え旅するように無邪気にはしゃぐ姿もAphroditeの一面だ。胸疼かせる荘厳なダンスビートに合わせ共に麗美に踊りましょうと誘いをかけるように、Aphroditeは情熱を胸に『パリの灯りは遠く』を歌唱。美しい調べの中、彼女たちは甘えた仕種も交え、気品にあふれた姿で「共に奇跡を起こそう」と手招いてゆく。何時しかフロア中の人たちが5人へ愛しく手を伸ばし、声を上げ、宴に興じていた。
最後にAphroditeは、『私を天国へ連れてって』を熱唱。5人は光を携え疾走する楽曲に乗り、心のわだかまりを解き放ち、共に魂を開放しあおうと誘いをかけてきた。何時しかその表情は優しい笑みに満たされていた。彼女たちは奈落へ堕ちた観客たちの心の呪縛をすべて解き放ち、一緒に心の翼を広げ羽ばたこうと手招いてゆく。共に飛び立つその先が楽園なのか奈落なのか…。今はただ、5人と一緒に羽ばたきたい。
アンコールは、ふたたび観客を熱狂と共に奈落の楽園へ落とすように『セラフィムの夜』からスタート。重厚な音が渦巻くように身体へまとわりつく。その音にぺっとり絡みつく倉澤雪乃の歌声。艶かしい歌声に魅了され、声を張り上げる観客たち。サビでは、心縛る鎖を引きちぎるように5人が声を張り上げていた。激しい音の上で無邪気に跳ね踊る彼女たちの姿は、まさに黒い天使。その誘いが導く先へ、共に堕ちていこう。
心を、身体を、鉛に変えて深淵へ落とすように、Aphroditeは重厚な嘆き歌『ダナエ』を雄々しく歌いだす。呪文を唱えるように歌うその声へ導かれるまま、想いを捧げたい。伸ばした手で彼女たちの心をつかみたい。美しく、切なく。何よりも儚さを抱いた音色に導かれた楽曲は、激しいギターの音が闇を切り裂くと同時に、美しさと儚さの入り交じる『moirai』へ。すべての闇の感情を嘆く歌声で洗い流すように、5人はふたたび闇の天使となり誘いをかけてきた。なんて美しくも雄々しいハーモニーだろう。彼女たちは、闇の支配者が送り込んだ合唱団。彼女たちへ祈りを捧げた者だけが、その歌声に導かれ心の呪縛を解き放てる。そんな儀式にも似た、神聖で、でも熱を放つライブをAphroditeは描きだしていった。
ここで、Aphroditeから嬉しいお知らせが告げられた。それが、「2020年2月16日に6周年BLAZEワンマン公演を行う」こと。さらに、新メンバーの歩那が10月5日の「ギュウ農フェス」からAphroditeのライブへ参加することを発表。舞台へ登場した歩那も、「もともといるメンバーさんたちに負けないように、看護師業務をやりなから、デビューの日までに楽曲を覚えていきたいと思います」と答えてくれた。
最後に、Aphroditeは会場中を熱狂と陶酔のカルナバルへ会場を塗り上げようと、『GENESIS』(旧バージョン)を突きつけた。フロア中から沸き上がる絶叫。その声を貪り、みずからの糧にしながら、5人は妖しく挑発するように歌いかけてゆく。艶かしくも挑戦的な歌声に、身体を激しく揺らすゴシックでシンフォニックな音色に触発され、何時しか誰もが黒い桃源郷へと足を踏み入れ、我を忘れ、騒ぎ続けていた。その凛々しいステージングに、身も心も捧げていた。まさに彼女たちは女神。人の心を捉えて黒い快楽の園へと連れ出す堕ちた女神たちだ。
Aphroditeは、2月19日に新宿BLAZEで行う6周年公演へ向け、いろんな展開を予定している。これから発表になるだろう新しい動きにも注視しながら、これからもAphroditeの世界へ身を落とし、酔いしれてもらいたい。
TEXT:長澤智典
Aphrodite twitter
https://twitter.com/aphrodite_idol
Aphrodite Web
http://aphrodite-official.com/
-セットリスト-
『EDEN』
『GENESIS』
『Utopia』
『My Sweet Bach』
『Distopia』
『creator』
『Re-Call』
『ヨハネの福音』
『パルテノンを眺めて』
『パリの灯りは遠く』
『私を天国へ連れてって』
-ENCORE-
『セラフィムの夜』
『ダナエ』
『moirai』
『GENESIS』(旧バージョン)