今年8月22日に「和」をコンセプトにした5th mini ALBUM「今生、絢爛につき。」をリリースしたVALSHEが、そのテイストを更に昇華させ一つの物語として作り上げたLIVEツアー「YAKUMO」ファイナル公演を10月6日マイナビBLITZ赤坂にて開催した。必ずしも和曲ばかりではないVALSHEの楽曲の数々たちは「YAKUMO」というまさに「和」を象徴したようなライブタイトルの中、どのような姿を見せ躍動していったのだろうか……。
LIVEは初めから予想を裏切る展開から始まった。
和太鼓と三味線の小気味良い調べが聞こえてくる。さながら寄席の出囃子を思わせるその雰囲気をそのままに、スクリーンに和服の男性が映し出され、「珀芝亭 八雲」と名乗る。突如現れた八雲の、楽しげで少し怪しい噺が始まった。八雲は「私の遠い遠い知り合いの知り合いに、「太郎」という男がおりましてね。」と、今回のVALSHEが扮する「太郎」という男について話し始める。どうしようもない遊び人だった「太郎」がたどった数奇な運命を辿る物語が動き出してゆく。
八雲の噺とクロスして、アルバムの序曲「出雲」として1曲目に収録されている「まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも」が流れ始め、今回のライブに登場するダンサーが曲に合わせて次々に登場してゆく。ここで早速のサプライズ。地方公演には出演していなかった、「今生、絢爛につき。」のMusicVideoに登場する女性“椿(大野愛)”と“牡丹(村井芽依)”が登場。観客はVALSHEの登場を待たず、大きな声援を送っていた。満を持してVALSHE扮する「太郎」が登場すると、BLITZのステージは一気に華やぎ、一層大きな・黄色い声に包まれた。
始まったのはもちろん今回のコンセプトの中核となる楽曲「今生、絢爛につき。」キレの良いダンスが終始入っている「和」ダンスチューンは、椿・牡丹に加え、今回のライブツアーを共に回ったダンサーNAOKI、Kyo-heyが加わったことで、さらなる絢爛さを帯びていた。今回の衣装は和装が強く意識された、振袖のある赤と黄色と黒のコントラストが眩しいアルバムでも使用されたもの。動きの大きい振り付けに呼応して棚引くVALSHEの両袖はまさに絢爛そのものだった。
「今生、絢爛につき。」が終わるとそこはもはや別世界。ステージは「太郎」が過ごした街並みへと変貌を遂げていた。しかし、そこは過去とも未来ともわからず、様々な声が行き交っている。不思議な雑踏の中、流れ始めたのは「インスタント・セレブリティ」。今回のアルバムの中でも独特の雰囲気を放つ、淡々としたダンスチューンに合わせ、少しダーティな雰囲気の照明に合わせ、スタイリッシュなダンスが披露される。続いたのは「EVALUATION」と「vluger gem」のメドレー。東京公演で追加されたダンサーTAKAMASAとYU-TAを加えた久々の披露となる2曲に観客は大興奮。「EVALUATION」では煙管・扇子を小道具に加えたダンスにマイナーチェンジされており、今回のライブとの親和性が高められていた。
一度ステージを後にするVALSHE。始まったのは不思議な小噺だった。狐面をかぶったダンサー4人がその噺に合わせアクティングをする。「覆水盆に返らず。」という諺をオチに据えた「太郎」のとあるエピソードが披露された。次に始まる「激情型カフネ」への伏線となる形だ。「今生、絢爛につき。」の一つ前に発売された11th Singleの表題となっているこの曲は、「今生、絢爛につき。」の1000年後の話を描いたもの。男女の愛情・情念を失意と織り交ぜた激しい曲調のこの楽曲はやはり漆黒の衣装が似合うということだろう。「激情型カフネ」で使用された衣装に姿を変えた失意の「太郎」がそれまでの3曲とは違った憂いを含んだ表情で熱く歌い上げる。アウトロ部分で八雲の語りが挿入され、彼の失望が語られる。「世にも、無情だなあ…。」とVALSHEがポツリ呟くと、舞台は真っ暗闇に包まれた。
闇と調和するような静寂の中始まったのは「君がため」。VALSHEのアカペラから始まったこの楽曲はまさに失意の人間を象徴したような楽曲。続けられた「暗い夜の行き路」と共に、悲しみの感情が一気に押し寄せてくる。物語の一展開としてだけでなく、それぞれ独立したテーマ性を強く帯びているのがVALSHEの楽曲の強みだ。それまでの煌びやかな展開との落差で、それぞれの感情を強く揺さぶられた観客は、目や口をライブタオルで覆い、涙ぐむ人も多かった。「暗い夜の行き路」の最後で雨音が聞こえ始める。VALSHEの表情や歌声と
相まって、冷たさすら感じるほどだった。
雷鳴が鳴り響き始まったのは「EXECUTOR」。曲調はロックテイストながら、黒のよく似合う、ダークな楽曲だ。徐々に激しさを取り戻してゆく展開に息を飲まれる。続けて最新のアルバム楽曲「PERSONA」へと繋がってゆく。装いを和装からスーツにジャケットという洋装に姿に変えたダンサーが登場し、アコースティックギターとドラムの絶妙なグルーヴ感の中、統率のとれたダンスがVALSHEの歌声をますます引き立てた。アウトロで再びVALSHEがステージを後にし、ダンサーのソロ・ダンスが披露される。4人各々ここぞとばかりに個性豊かなダンスを見せ、観客のテンションも見事なダンスに感化され、曲が終わる頃には失意の雰囲気からたち戻り、熱さを完全に取り戻していた。
「是は是、非は非として(感情を)吐き出した方が、実際スッキリするのかもしれない。」と八雲のナレーションを皮切りに始まったのは、失意の呪縛から解放された「太郎」の感情が爆発したような楽曲の数々だった。口火を切ったのは「羽取物語」。今回の「和」コンセプトに絶妙にマッチした和ロックだ。黒の下地に銀のスパンコールが全体にあしらわれたキラキラとしたライブ用の新衣装は、和のコンセプトを踏襲した陣羽織風の様相ながら、流行のファッションテープをふんだんに使用した新しさも感じさせる新旧一体のもの。手を振りあげるたびに棚引き光る衣装はステージに燦然と光輝いていた。続けて始まったのは「DOPE」。本来は重厚なシンセサウンドが印象的なゴリゴリのクラブサウンドの楽曲だが、今回のライブではアレンジが加わっていた。三味線と笛の音が追加され、男性の掛け声がはいった新たな一面を見せたクラブサウンドに一同大興奮。さらにその掛け声に合わせ、空手の型を思わせる力強い振り付けのダンスが加わり、会場の雰囲気は一気に縦ノリに。まくし立てるように続いたのはファン待望のコール&レスポンスが入るロック曲「microSOLDIER」。続いた「RADICAL COASTEЯ」では定番のタオルを振り回し、会場とVALSHEが一体となって熱い雰囲気を作り上げていた。衣装の羽織はVALSHEがステージで躍動するたびに、まるで鳥の翼のように裾を広げ、テープが羽のように美しく舞う。駄目押しの次曲はVALSHE楽曲屈指の激しいサウンド感を持つ「ジツロク・クモノイト」激しく明滅するストロボの演出が、1秒たりとも同じ表情を見せることのないVALSHEの様子を鋭利に切り取り、楽曲の激しさを更に強調していた。
怒涛のように通り過ぎた激しい楽曲にあてられた観客たちをなだめるかのようにヒグラシと爽やかな水音が聞こえてくる。「太郎」の数奇な物語もいよいよ終盤だ。「夕暮花火」は熱い夏が通り過ぎていくなんとも言えない哀愁と共に沸き起こる、純粋な気持ちを切り取ったストレートなバラード。直前までの激しい展開で汗だくになった観客は、過ぎ行く夏とこのライブを重ね合わせ、それを惜しむかのようにじっくりと聴き入っていた。
「ラストー!!!」。勢いよく叫んだVALSHEの声に呼応し始まったのは本編最後の楽曲「追想の理」。「ただ生きるそれは誰かの明日になる」と明日へ・未来への希望を込めたこの一曲はまさにこのライブを締めくくるにふさわしい一曲だ。拳を振り上げるように煽るVALSHEに全力で応え、大きな声を張り上げる会場は大きなうねりと共にステージ全体を一つにしていた。
冒頭と同じ囃子が流れ、小さく一礼をしてステージを後にするVALSHE。八雲の最後の語りが入る。「今生ってのは世知辛いねえ。なあ太郎さんよ、あの世ってもんはどれだけか美しいんだろうなあ?」と尋ねられた「太郎」の答えは、このライブを見終えた我々の気持ちを代弁するような、シンプルで、簡潔で、明快な一言だった。
「この世こそ、美しい。」
本編終了の余韻に浸るかのように穏やかで大きな拍手に包まれた会場は、徐々にアンコールの期待へと色を変えてゆく。
「アンコール!」の声をかき消すように突如サイレンが鳴り響くと同時に観客は大喝采。昨年のライブツアーを経て、すでに定番となりつつある通称「コドモ団」のコール&レスポンスからの「ドミノエフェクト」だ。コール&レスポンスも2018年仕様へと変更され、更にパワーアップした一曲がアンコール最初の楽曲ということで、会場は大いに盛り上がっていた。
「改めましてVALSHE LIVE TOUR 2018「YAKUMO」ファイナル公演へようこそ!VALSHEです!」と話し始めたVALSHE。「この日を待ち望んでいました。でも、始まってしまえば本当にあっという間に、駆け抜けるように本編が終わってしまいました。まだまだ楽しんでいきたいと思います!」と話すその顔は、本編の「太郎」とは違うVALSHEそのままの笑顔に包まれていた。今回は演出上、VALSHEとしてのMCは本編中にほぼ入らなかったこともあり、“演じきった”後の充足感を噛みしめているように感じられた。
「この(マイナビBLITZ赤坂の)広さ・空間だからこそ伝えられることがあるんじゃないかと思います。」と話して始まったのは「ラピスラズリ」。PCゲームのエンディングとして採用された爽やかなストリングス主体のバラードは、ライブ本編後の清涼感を体現するようだった。会場は楽曲イメージの青一色にペンライトの色が変わる。「青一色の景色はとても美しいです。今日もどんな風に見えるのかなと想像していましたが、想像以上に綺麗な景色を見ることができました。ありがとう。」と曲後にVALSHEはしみじみ語っていた。
トークの展開はライブツアー開始直前に発表され、会場で初めて販売されたCD「Are you Ready?」の話へ。「YAKUMOを作るにあたって、折り重なった景色の、その先を見たいと思ってこのツアーを企画しました。過去の経験からだけでなく、未知の世界・景色、見たことがないこと聞いたことがないことを見てみたいとそう思っていました。この楽曲も、予想がつかない景色を見てみたいと思って作りました。このツアーは「Are you Ready?」をやって初めてYAKUMOとして完成します。」
次の楽曲はもちろんその「Are you Ready?」。ノリの良い爽やかなロックソングは会場一体となって楽しめるコール&レスポンス付き。ダンサーも再登場し、思い思いに体を動かし、会場の雰囲気を思い切り楽しんでいるようだった。そのまま「Prize of Color」へと曲が映り会場は更にHAPPYな雰囲気に。地方公演はここでセットリストが全て終了となっていたのだが、ここでファイナル公演らしい展開に。
「みんなまだ終わりたくないんでしょ?おかわりほしいか!?」と観客を煽り始まったのはなんと、「今生、絢爛につき。」。冒頭の雰囲気とは少し違った、ダンサー・VALSHE・観客がそれぞれその場その時に感じたままに体を揺らし、このライブを楽しんでいる様子が、強く印象に残った。「また、楽しいこと・面白いこと・知らないこと・見たことないことを怖がらず一緒に未来へ、明日に向かって恐れずに進んでいきましょう!」と会場へ呼びかけ、大声援の中、「YAKUMO」ツアーは幕を閉じた。
単なるライブという一枠では語れない、まるで一つの演劇を見たような充実感に包まれたこの「YAKUMO」ツアーはその名の通り、VALSHEが作り上げてきたこれまでの楽曲たちが幾重にも折り重なり、その度にそれを見続け、応援してきたファンとの間で生まれた景色があってこその「八雲」の景色だった。これからVALSHEが織りなしてゆくであろう世界もまた、これまでとは違った新しい世界を見せてくれるに違いない。
この世というものは無情なものばかりで世知辛いものだと、確かにそう言い放ってしまうのは簡単で、実際のところ多くの人がそう感じているのかもしれない。しかし、少なくとも、VALSHEの世界を知っている我々にとってはやはりこの言葉がふさわしいのだろう。
「この世こそ、美しい。」
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<VALSHE LIVE TOUR 2018 「YAKUMO」ファイナル公演>
日程:2018年10月6日(土)
会場:マイナビBLITZ赤坂
OPEN 17:00 START 17:30
<SETLIST>
〜出囃子〜
Op SE
まそカがミ照るべき月ヲ白タえの誰か隠せる天ツ君かも
M1 今生、絢爛につき。
M2 インスタントセレブリティ
M3 ■メドレー
EVALUATION/vulgar gem
M4 激情型カフネ
M5 君がため
M6 暗い夜の行き路
M7 EXECUTOR
M8 PERSONA
〜Dance solo〜
M9 羽取物語
M10 DOPE <和アレンジ ver.>
M11 microSOLDIER
M12 RADICAL COASTEЯ
M13 ジツロク・クモノイト
M14 夕暮花火
M15 追想の理
END SE
<Encore>
Ec1 ドミノエフェクト
Ec2 ラピスラズリ
Ec3 Are you Ready?
Ec4 Prize of Color
Ec5 今生、絢爛につき。
◆VALSHEオフィシャルファンクラブ◆
「OVER THE HORIZON」
お問い合わせ先 : info@valshe-oth.jp
<公式サイト>