7月7日(土)、六本木のYouTube Space Tokyo にて、ピアノロック・バンドWEAVER(ウィーバー)がライブ配信『WEAVING ROOM~Festival of WEAVER~ from YouTube Space Tokyo』を行った。限られた少数の幸運なオーディエンスと、YouTubeを通じ生中継で鑑賞する人々に見守られながら、WEAVERはこの日、新たなストーリーを紡ぎ始めた。
七夕らしく、浴衣姿のお客さんもちらほら。メンバーが願いごとを書いて笹に吊るした短冊を見ようと、エントランスには人だかりが出来ていた。フロアに足を踏み入れると、ライブハウスとは趣の異なるバーのような大人っぽい雰囲気。大小いくつものスクリーンにはこれまでのMVが映し出され、開演前の期待感を高めていく。
ステージの奥から河邉徹(Dr&Cho)、奥野翔太(Ba&Cho)、杉本雄治(Pf&Vo)の順に一人一人登場。位置に着くと3人は手を高く挙げ、「Welcome!」がスタート。音楽の持つ力、無限の可能性を信じるポジティヴなパワーを秘めたこの曲は、このライブの幕開けにふさわしい。続いて、ピアノ弾き語りで杉本が歌い始めたのは「夢じゃないこの世界」の心躍るサビのメロディー。河邉の「1、2、3、4!」という力強いカウントが生の声で響き、3人で音を重ね合っていく。歌も演奏もエモーショナルで、序盤から凄まじいエネルギーを発し、フロアを満たしていた。
「7月7日、七夕ということで、こんな素敵な夜に集まってくれた皆さんにも、観てくれてる人にも、感謝しています」(杉本)と挨拶。本イベントは、4月からスタートしたマンスリー・ライブ『WEAVER×VARIT. Presents「WEAVING ROOM」』の出張編。「WEAVERの部屋のような、くつろげる音楽を披露する空間」をコンセプトに、メンバープロデュースでアイディアを考案。デビュー前から出演していた地元のライブハウス神戸VARIT.の姉妹店、六本木VARIT.で自由に、様々な実験を試みてきた。更に、2017年には『Shake! Shake!』ツアーの7月7日長崎公演で、「Festival of WEAVER」(七夕の英語表現)をサブタイトルに掲げ、夜空にちなんだセットリストを披露した、という経緯も。その試みの2度目として、〝音と文字を紡ぐ″をテーマに開催されるのが、今回のライブである。様々なタイミングの重なりを「運命なんじゃないかな?」と杉本は語り、「新しい一歩を踏み出す日にしたい」と意気込んだ。奥野も、「昔から僕らは、ライブならではの大胆なアレンジ、音楽的なチャレンジをたくさんしてきた」と振り返りつつ、現在は杉本がミュージカルの音楽、河邉が小説、奥野自身はサポート・ミュージシャンとして活動の場を広げていることにも言及。「2019年10月でデビュー10周年。WEAVERにしかできないこと、今やろうとしていることを明かしていくので、最後まで絶対に見逃さないでほしい!」と語り掛けた。
七夕を連想させる「星、夜空、月というキーワードが入っている曲がたくさんある」(杉本)との言葉から、まずは「66番目の汽車に乗って」を披露。ロマンティックなキーワードのようでありながら、こうした激しい曲にもごく自然に天体のモチーフが織り込まれているのがWEAVERらしい。3人の呼吸と間が噛み合って心地よいグルーヴが生み出され、杉本はピアノに額がくっ付きそうなほど前のめりに、全身で音を奏でる。中継用カメラの影響で、座ったままでの鑑賞が求められていたオーディエンスも、上半身を大きく揺らしながらリアクションしていた。一変して、「新世界」ではセンチメンタルに、キラキラとした音色でファンタジックな情景を立ち上げた。続けて放った「Beloved」から伝わってきたのは、真っ直ぐな愛。奥野も河邉もコーラスを重ね、3人がファンへ向け切々と語り掛けるように歌う姿は胸を強く打った。
続いては、イベントに先立ちTwitterで募集した「#WEAVER短冊」を付けた呟きを紹介するコーナーへ。河邉はタブレットを操作し、「世界平和」「ミュージシャンになりたい」などファンの願いごとを次々に読み上げ、3人でコメントを加えていく。メンバーの書いた短冊も話題に上り、「おいしいラーメンに出会えますように」と書いた奥野は、「並ぶのが嫌いだから、絶対にその夢は叶わない」とスタッフに指摘されたと明かし、笑わせた。杉本の願いは「健康な身体でいられますように」。「あなたの孤独を奪い去れますように」と書いた河邉は、「ここで言うのめっちゃ恥ずかしい…」と照れていた。再びファンの投稿に戻ると、「WEAVERが神戸で野外ライブをしてくれますように」「WEAVERの音楽がもっともっと多くの人に届きますように」など、自分のことではなくWEAVERを想った願いも多く、「優し過ぎるやん!」(杉本)と感激した様子。河邉は、「今年は新しいことに挑戦して、3人の個性を発揮して、他のアーティストには見せられないような景色を僕らが見せられるようにしたい」「WEAVERのWEは皆のWE(※私たち)。誰も一人にしないような作品をつくっていきたい」と言葉を強めた。演奏中だけでなくこうしたトーク場面でも3人の呼吸はピッタリで、終始リラックスしたムードだったのも印象深かった。
ライブは折り返し地点を迎え、英語詞の軽妙な「Time Will Find A Way」で新鮮な風を吹かせつつ、間髪入れず「管制塔」を披露。明滅するライトに照らされながら、前へ歩み出て煽る奥野。オーディエンスも手拍子したり手を高く挙げたりと熱く反応し、高まっていく。指で自らの頭を撃つようなアクションも交えながら、杉本の歌もピアノ演奏もワイルドに、荒々しく変貌していった。「ありがとう! 最高の星、降らそうか!」(杉本)と叫ぶと、「Shine」へ。星降る夜空の情景を聴き手の脳裏にたちまち映し出すような、イマジネーションを喚起する美しい音楽にときめき、いつまでも聴いていたいと願った。
ほどなくして、暗闇の中、「夜空を見上げて、時々思う」と語り出す、女性の声が響き始めた。杉本が音楽を担当する『ZEROTOPIA』(地球ゴージャスプロデュース公演)に出演中の声優/歌手・花澤香菜のナレーションである。演出の一部に声で参加する、とはアナウンスされていたものの、このような形になるとは、驚きだった。流れるような詩的な文章の朗読に耳を澄ましていると、「今夜、人口流星が流れます」という耳慣れない、しかしファンタジックで忘れ難いフレーズが飛び出す。タイムループをモチーフとした幻想的な物語世界への旅に誘ったところで、3人が放ったのは新曲「最後の夜と流星」。ドラマティックなメロディーが、疾走感と躍動感に満ちたバンド・サウンドに乗り、空高くどこまでも自由に舞い上がっていく。時を刻む針の音、高音と低音を行き来するシンセのフレーズがタイムトラベルの浮遊感を想起させる、SF的魅力も感じ取れた。杉本の艶を増した歌声、3人の呼吸が合った演奏も素晴らしく、これぞWEAVER!と呼びたい会心作。曲も魅せ方も含め、斬新かつWEAVERならではの強みが結集した、他に例を見ないお披露目の形だった。
この日配信がスタートした「最後の夜と流星」を第一弾として、河邉が『夢工場ラムレス』に続く第二作として執筆した『流星コーリング』をベースに、そのサウンドトラックのような形で新たな楽曲が紡がれていく、というプロジェクトの始動を宣言。「2つが重なって、どんどん新しい物語が、ここから始まっていきます」と杉本は告げた。自分たちにしかできない表現の形を追い求め、辿り着いたこの画期的なこの試み。音楽、小説、そしてそれ以上の広がりをも予感させるこのプロジェクトの中心には常に、〝紡ぎ手″であるWEAVERの3人がいる。彼らがどんな物語を紡いでいくのか、見つめ続けていきたい。
文:大前多恵
写真:YouTube Space Tokyo
『WEAVING ROOM〜Festival of WEAVER〜from YouTube Space Tokyo』
2018/7/7 @東京・YouTube Space Tokyo
セットリスト
- Welcome!
- 夢じゃないこの世界
- 66番目の汽車に乗って
- 新世界
- Beloved
- Time Will Find A Way
- 管制塔
- Shine
- 最後の夜と流星
楽曲 各種配信サイトURL 掲載のほどお願いいたします。
iTunes
https://itunes.apple.com/album/id1401717515?app=itunes&ls=1
レコチョク
http://recochoku.jp/album/A1010475056/
Spotify
http://open.spotify.com/album/0wNJbZNfEiVWqo2tRmDmHV
Apple Music
https://itunes.apple.com/album/id1401717515?app=music&ls=1
LINE MUSIC
https://music.line.me/launch?target=album&item=mb0000000001690fa6&cc=JP
Google Play Music
https://play.google.com/music/m/Bzevl7aghqk7dhqzmovlf77y3km
当日のライブ映像はコチラ
期間限定公開
WEAVING ROOM~Festival of WEAVER~ from YouTube Space Tokyo 2018/07/07
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