次世代ユニットX21から選抜されボーカルを務めたAXL21と、ats-,清水武仁、渡辺徹の“スーパークリエイター”3人が手掛ける『仮面ライダービルド』の挿入歌。
その裏側に迫るavex management web(以下 AMG Web)での週刊連載だが、この度、新たな座談会企画がスタート。
ゲストに迎えるのは、『仮面ライダーエグゼイド』で、仮面ライダークロノス/檀正宗役を演じた歌手&俳優として活躍するaccessの貴水博之!
Vシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』がリリースされるなど、まだまだ現役感たっぷりの『エグゼイド』だが、まず第1回目では、TVシリーズからVシネまで、数々の撮影秘話について語ってもらった。
テキスト:トヨタトモヒサ
写真:阿部薫
- 仮面ライダー役は責任重大!
――まずは貴水さんへの質問です。世代的に、やはり昭和の「仮面ライダー」シリーズはご覧になっていましたか?
貴水:ええ。そりゃ、小さい頃は大好きでしたよ。よく覚えているのは『V3』(1973年)、『X』(74年)、『アマゾン』(74年)辺りかな。中でも好きだったのがXライダー。バイク(※クルーザー)もカッコ良くてね。フロントカウルの両サイドに風車が付いていて、あれがまた子ども心に魅力的だったんですよ。もちろん変身ベルトも持っていました。それだけに『エグゼイド』でオファーをいただいたのは、とても嬉しかったですね。
末永:変身する役柄と聞いて、どんなお気持ちでしたか?
貴水:最初は、単に檀黎斗のお父さん役ということで、「変身する」ということではなかったんだよね。初登場回の第12話の時点では、刑務所の中だけだったしね。実際に「仮面ライダーになってください」と言われたのは、その回がオンエアされた後でした。お父さん役を演じるのも初めてで、その時点で全力を尽くそうと思って撮影に臨んだ結果、一応、演技も大丈夫だなと思って貰えたのかな(笑)。
末永:そんな(笑)。
貴水:「仮面ライダー役」といえば責任重大ですからね。「変身してもらいます」と聞いてからは、俄然気合が入りましたよ。撮影は朝が早いから、お酒も止めて(笑)、生活スタイルも朝方にガラッと切り替えたし、ホントに集中して日々の撮影に取り組んで行きました。そもそも、仮面ライダーを演じられるなんて、一生に一度できるかできないか、くらいの滅多にない機会でしょう。二人とも、女性ライダー役はどうかな?
清水:『エグゼイド』のポッピーも変身していたよね。
末永:それはもう是非!
田中:やってみたいよね。前回の座談会でもお話させてもらったのですが、一度『エグゼイド』に出演させてもらったんです。
貴水:お、そうなんだ。田中さんは、先日accessのライブに来てくれたんだよね。ありがとう!
田中:はい。とても楽しくて、本当に勉強させて頂きました!
貴水:で、どの話に出ていたの?
――第20話なので、クロノスとして再登場する前のエピソードですね。
貴水:なるほど。どんな役だったの?
田中:ゲストの方に悪口を言って、落ち込ませる女子高生役だったんですけど。
貴水:どうだった? 今まで生きてきて感じた、全ての悪感情を込めて演じたの?
田中:はい。ホントに小さな役でしたが、出演できたことが何より嬉しかったですし、自分なりに悪い気持ちを作って、演じたつもりです。
貴水:そうか。後で観直してみよう。
田中:ちょっと恥ずかしいです!(一同笑)。
- 貴水さんへ聞いてみよう!
――仮面ライダークロノスとしては、第32話が登場回でしたが、いかがでしたか?
貴水:初変身は、撮影も深夜で、まだ寒い時期だったから、大変でしたよ。
清水:照明機材は暖かくはないの?
貴水:いや、全然。一斗缶に火をくべた……「ガンガン」っていうのがあるんだけど、そこで暖を取りながらの撮影だったね。
清水:初変身といえば、大きな時計がボーンボーンと鳴る?
貴水:そうそう。そのバックで流れている素晴らしい音楽を創ってくれたのが、今話をしている清水武仁さんです(笑)。
清水:ご紹介いただき、ありがとうございます(笑)。変身シーンの撮影では、段取りもあるんでしょ?
貴水:現場自体は、意外とアナログで、変身ポーズを取ったら、カメラを止めて、僕の立ち位置に合わせてクロノスと入れ替わるんですよ。最終的に出来上がった映像には、そこにCGやエフェクトが加わってすごい迫力で、これには驚きましたね。
清水:『エグゼイド」の中でも、変身後のインパクトはクロノスが一番でしょう。
貴水:僕もオンエアを観て震えましたよ。
清水:まさに無双状態!
貴水:「ポーズ」で時間を止められるからね。画面が止まったときは、一瞬、自分のテレビが壊れたかと思ったよ、「あれ?」って(笑)。
末永:あははは(笑)。
清水:もうやっつける!やっつける!!
貴水:最初にデザイン画を見せてもらったときから、「自分がこれに変身するのか!」とテンションあがったし、演出も凝っていて、あの回は感動しましたよ。
ats-:檀正宗は、最初、貴水さんの歌っているイメージで、明るめの高い声なのかと思っていたんですよ。だけど、とても重厚なしゃべり方で、その「声」にすごく惹かれるものがありました。
貴水:そう言ってもらえると、とても嬉しいですね。
ats-:特にVシネの『トリロジー』(※『パラドクスwithポッピー』)で黎斗に捕まったときの「ふざけるなーっ!!」がすごく好きで。
田中&末永:ああ~。
ats-:何回も巻き戻して「おお、超いい声だな」って(笑)。
貴水:撮影は大変だったんですけどね。テストから3~4時間くらい柱に縛り付けられた状態で(笑)。
末永:ええっ!?
田中:それは大変!
貴水:ほとんど動けない中で演技をしないといけない状況だったから、そうであれば、逆に「怒鳴る」しかないなと。
ats-:ずっと低い声で来て、あそこで「ついに爆発した!」って感じでしたよね。
貴水:ちょうどその時期、accessのレコーディングが控えていたんですよ。それでスケジュールを調整して貰い、時期を離して撮影に臨んだんだけど、案の定、声が枯れましたねぇ(笑)。
ats-:檀正宗のあの声は、やっぱり、ちょっと作っている感じなんですか?
清水:普段とは明らかに違うよね。
貴水:いつもは割とノー天気なしゃべり方だけど(笑)、舞台で悪役を演じる機会もあって、そこで低い声やネチッこいしゃべり方を研究していたんですね。それを発展させる形で役柄を作った感じです。そういった意味では演じやすかったですね。
ats-:いや、そうでしたか。お話をうかがって感激しました。
貴水:いやいや。で、そんなバックに流れているサウンドを作ってくれたのが、こちらにいる清水さん(笑)。
清水:いやいや。その話題はまた次回で!(一同笑)。
渡辺:他のライダーは、ガシャットを素手で装填していますが、クロノスの場合、周囲に浮かんだ状態で装填されますよね。CGが入る前提の場合、どうやってお芝居をされているんですか?
貴水:ガシャットが回っている時間を想定して、それにあわせて動くのですが、けっこうやり直しましたね。現場でスタッフさんの話を聞いてやるんだけど、どうしてもタイミングを合わせるのが難しい。それと、さっき話したけど、しゃべり方がネチッこかったから、最初は動きもゆっくりだったんです。そこは後で「ちょっと遅過ぎます」と注意されて、俊敏にやるように意識を切り替えました。最初の頃は変身がユルい感じだけど、回を追う毎にキュッとなっていくので、そういった部分を見返してもらえると、また面白いんじゃないかな。
渡辺:そうなんですね。是非チェックしてみたいと思います。
――AXL21のお二人は貴水さんのお芝居から感じるものがありましたか?
田中:私は貴水さんの役に入り込む姿勢がすごいなって。セリフをしゃべってなくても、立ち姿、目力、表情だけで存在感を放っていて、それだけで見入ってしまいます。
末永:声の出し方も研究されていて、さらにそれに応じた動きがあるのも驚きですし、何より生活まで改めてしまうなんて!
貴水:いや、もういい年だから、ギリギリなのよ(笑)。
末永:いえいえいえ!(笑)。
貴水:2人とも若いから早起きは、全然大丈夫でしょ?
田中:う~ん。
末永:けっこう起きれない!(笑)。
貴水:あ、二人ともダメなの?
田中:ダメですねぇ~。
末永:治さないと!(一同笑)。
――東映の現場はとにかく朝が早いことで知られていますよね。
貴水:もう、朝は早いし、夜は遅くまで……ほぼ1日中ですよ(笑)。でも、僕なんかは出ずっぱりってわけじゃないからまだいいけど、若いコたちは、それこそ青春という人生の1ぺージの全てを『エグゼイド』に注いでいましたね。そんな彼らの姿を見ていると、僕も中途半端にはできないなって。そこは彼らから学んだところが大きかったです。
――では、貴水さんご自身、若いキャストから多分に影響を受けたと。
貴水:ええ。みんなすごく真面目で真剣に役に取り組んでいましたね。僕らの若い頃はもっとハチャメチャだったけど(笑)。
清水:(笑)。
貴水:そういう意味では、若いけど、みんな自己管理能力が高いんだよね。肌も充分キレイなのにちゃんとケアしているしね。僕なんか、いくら一生懸命やっても、若い彼らには追い付けないでしょ(笑)。
末永:そこは女子的にも色々ありますね~。
貴水:むしろ、「若いんだから止めなさい」と言いたい(笑)。日焼けとか気を使ってるんじゃないの?
末永:私は常に日焼け止め塗ってます。
貴水:でしょう。俺も塗ってる(笑)。
田中:あ、でも私はガンガン焼いちゃうほうです。
末永:ええ~(笑)。なんで、そこ正直に言っちゃうの!?
田中:もうヤバイ!!(一同笑)。
- 檀正宗の生き様
――これまで檀正宗役を演じられてきて、思われるところがあればお聞かせください。
貴水:テレビシリーズでは完全な悪役で、貪欲に前に突き進む、彼の精神には演じる僕も学ばせてもらったし、キャラとして人気が出たことも嬉しかったけど、お子さんにマネされたら困る役柄だったでしょう(笑)。檀正宗の生き様を通して、「視聴者に何か伝えられる部分があればいいな」と思う気持ちが心のどこかにあったんですよね。それが『トリロジー』では、父親として息子への懺悔の気持ちが芽生えてきていて、そういった一面を演じることで、檀正宗も少し報われたかなと思っています。
清水:テレビでは台本にないアドリブを色々とぶっ込んでいたけど、『トリロジー』ではなかったの?
貴水:そうでもなかったかな。
清水:それはそれで慣れた感じで?
貴水:いや、『トリロジー』は、自分が消える場面辺りから撮り始めたからね。
清水:そっか。順番じゃないんだ。
貴水:『ゲンムVSレーザー』で、宇宙空間で、息子から月をぶつけられて叩き落されるんだけど、台本を読んで「いったいどんな感じになるんだろう?」って。そこは想像しながらの芝居だったので、なかなか大変でした。
清水:じゃあ、ぶっ込みはなかった?
貴水:確かにテレビでは、アドリブを入れまくってたけどね(笑)。
清水:ある意味、実験ができる。
貴水:そう。ただ、『トリロジー』の正宗は息子を改心させたいって気持ちが動いていたから、どっちかというと受け手側だったんだよね。
清水:じゃあ、そこに重きを置いて?
貴水:うん。視点が違っていたから、ちょっと引き気味、控え目に演じていましたね。割りと、ストレートに世界観に入り込んで行く感じだったかな。もちろん、機会があればアドリブはどんどん入れて行ったほうがいいとは思うけどね。
末永:以前、映画に出させてもらった際に、事務所の方に「どんどんやってみな」と言われたので、ちょいちょい挟んでみました。
田中:でも、監督さんによっては、やっていい人とダメな人がいますよね?
貴水:あー、確かにね。
田中:だから、「やったら怒られちゃうのかなぁ?」とつい気になってしまって……。
貴水:分かる、分かる。
田中:そういう恐怖心があるというか。
貴水:でも。やっちゃっていいと思うよ。
末永:やってみて使われると、「良かったなぁ」って気持ちになるし、「自分だったらどう思うかな?」と考えることで、自然と浮かんでくる言葉もありますよね。
貴水:まさにそうだね。
田中:ああ。
清水:ここにやっちゃうタイプの人が(笑)。
貴水:むしろ、僕はやり過ぎるタイプ(笑)。でも、やってみて注意されるほうが良くない?
田中:そうですね。やらないと、それはそれで後悔するんですよね。
貴水:でしょ。後になって「控え目だったな」と言われるのもイヤだし、「もっと出せたのに!」とも思いたくないからね。そもそも檀正宗役も、最初に監督からは「淡々とお芝居してもらえれば大丈夫です」と言われていたんですよ。
田中:え、そうだったんですか!?
清水:今、ヒロ(※貴水さん)が演じた檀正宗像を思うと、最初は割と地味だったよね。
ats-:言われてみると、監獄の場面は割りと淡々としてましたよね。
渡辺:ああ、言われてみれば。
貴水:そこは自分なりに思うところがあって、ちょいちょい変えて行ったんですよ。でも、不思議なもので、そういう風に演じて行くと、今度は台本や現場の流れも変わって来るんです。脚本家の高橋さんにも「そういう風にやってくれるなら」と言われたし、監督からも「どんどんやってください」って。そこは僕の意向を汲んでもらえたわけで、とても有難かったですよね。だから、是非やってみるべきだよ。
田中:ありがとうございます。頑張りたいと思います!
<次回予告>
座談会第1回はここまで!
第2回からは、『エグゼイド』の音楽面への話題を掘り下げていきたいと思う。
スーパークリエイター3人が手掛けた『エグゼイド』の劇伴、そして貴水博之が歌った「Wish in the dark」、「JUSTICE」、「Believer」の3曲のナンバーのレコーディング秘話等々。果たしてどこまでお届けできるか?
乞うご期待!