2007年に始まった恒例の年忘れ&お年玉的一大イベント“OVER THE EDGE”。7回目となる今回もお馴染みの面々に、2013年に飛躍を遂げた若手が加わって、例年通り渋谷公会堂で開催された。12時間を超える饗宴で強く印象に残ったのは、ヴィジュアルシーンを支えるオーディエンスと共に、笑顔で年越ししたいという心意気。12バンド+4つのセッションが織り成す喜怒哀楽が場内に渦巻いて、1年の最後にすべてを浄化し、新年に混じりっ気ナシの笑顔と喜びを持ち帰らせてくれた。
トップバッターは2014年に結成10周年を迎えるlynch.。お馴染みのSEで幕が開くと、真っ赤なライトがステージに溢れ出し、大歓声を浴びてライブ始めの定番曲「I’m sick,b’cuz luv u.」から轟音の咆哮をあげる。会場中がヘッドバンギングの海となる「INVINCIBLE」、激しさにメロディックな切なさが混じり、背後の巨大なバンドロゴ入りバックドロップを葉月(Vo)が示して熱い感動を呼ぶ「NIGHT」と、この1年に発表された新曲の威力も半端ない。MCでは「みんな知ってると思うけどOVER THE EDGE、狂ったイベントです。今、本番中にMUCCの逹瑯さんからたこやきの差し入れが……」と目の周りを真っ黒に縁取った葉月が舞台上でたこ焼きを口に含む、そんな光景は確かにこのイベントでしか観られないものだろう。「この歴史ある建物で大晦日に言うのもアレなんですか、ヤラせてくれませんか!? SEXしようぜ!」と、クライマックスにはお待ちかねの「pulse_」が。晁直(Dr)の粒立った爆走ドラムが場を圧倒して客席に“ヤリタイヤリタイ!”とカオスな声を、「思い切り歌って俺の耳を潰してください!」と繋いだ「Adore」では胸熱くなる大合唱を沸き起こして、怒涛のフィニッシュ! 新旧の楽曲を織り交ぜ、持ち前の激しさの中にも10年目への感謝を籠めたメニューで、イベントの火蓋を見事に切って落とした。
ダイナミックなSEに乗せ、ダンスから魅せる驚きの登場を果たしたのは二番手Moran。手拍子を受けてHitomi(Vo)が飛び出し、「始めようか!」と拳上がる「ホロウマン」から幕開けたライブは、実にアグレッシヴなものだった。最後方からSoan(Dr)がドラムと声で激しく煽り立てれば、フロント陣もショーのように大きな動きで、広いステージを有効活用。そのテンションは「Eclipse」でも変わることなく、即効性の高いシングルを並べて、一気に場内をヒートアップさせる。さらに「みんなが来年も最高のライブが観られるといいなと思います。もし、ヴィジュアル系以外の世界に飛んで行ってしまいそうな人がいるなら、俺がその翼引きちぎってあげるよ」と前置いた幻想的な「Wing or Tail」、そこに悲愴と激情が混じる「Vegaの花」でストーリー性豊かな世界を。ライトを完全オフした闇を客席で揺れるフラッシュリングが汚す「Party Monster」で不思議な一体感を醸すと、彼らの新たな代表曲となりつつある名バラード「浮遊病」へ。「バンドから君たちに贈れる今年最後のプレゼント。それは重さです。君のフワフワとした存在意義、それに重しをかけます」と熱の籠ったプレイで、広いホールを沸き上がる感情で埋め尽くしてみせる。その姿に、ライブ三昧の1年を経て遂げた彼らの成長を、しかと見て取ることができた。
忘年会的イベントに相応しく、オーディエンスに聴き馴染みあるナンバーを揃えて、会場を盛り上げまくったのはSadie。今やシーンで知らぬ者はいない「迷彩」が鳴ると、客席中が頭を振り、拳をあげて、真緒(Vo)にマイクを向けられれば、正確に歌詞を返す。「Rosario」では弦楽器隊も豪快にデス・コーラスをかまし、景(Dr)もへヴィにリズムを刻んで、Sadie特有の混沌とした世界観を表現。そんな地の底這いずるようなディープネスから「クライモア」で一気にアッパーに浮上し、美月(G)は下手で軽快なステップを。続いて「METEOR」で満場の手拍子を呼び、光の世界へと連れ出してゆく、この振り幅の広さこそ彼らの真髄である。「Sadie、2013年の叫び収め。一緒に叫んでくれるか!? 全員の声を一つにして叫べ!」と贈られたのは、これまた名曲「陽炎」。後方に控えていた亜季(B)がグイと前に出てスタンドマイクでシャウトし、剣(G)も白い衣装の裾を翻して熱狂を沸き起こす様は、さすがOVER THE EDGE皆勤賞の貫禄である。激しさの中で奏でられる珠玉のメロディで聴く者の胸を濡らし、「最後、このステージにお前たちの声を届けてくれ!」と真緒が叫ぶと、ホールを揺るがす大歓声が! この光景無くして、もはやOVER THE EDGEは無いと言っても過言では無いだろう。
「渋公の皆さん! レジスターセッション始まるよ!」と、ボーカル3人の影アナウンスで元気いっぱいに始まったのは、Resistar Recordsに所属する3バンドによる3組のセッション。まずは、DOG inTheパラレルワールドオーケストラより春(Vo)とメイ(B)、BugLugより一樹(G)と将海(Dr)、Blu-BiLLioNより宗弥(G)というメンツによるTeam Aで、DOGの「Doggy’s Party!!」と「boomy boomy」をプレイする。前者は演奏しながら楽器隊も歌う5人ボーカル曲だけに、DOG以外の面々にはハードルが高かったはずだが、将海は「よっしゃ行くぞー!」とキッチリ緩菜パートをこなす器用ぶり。キュートな後者ではギター隊も爆発力のあるコーラスで煽り、Blu-BiLLioNのミケ(Vo)、teru(Key)、Seika(Dr)、DOGの準々(G)、ミズキ(G)、BugLugの燕(B)によるTeam Bに繋ぐ。こちらはBlu-BiLLioNの「reason」と「MoSaic」を披露したが、Blu-BiLLioN曲でミズキと燕がアイコンタクトする姿が実に新鮮。さらに、いつになく真面目に演奏に集中する準々、宗弥の代わりに“Shut Out!”とコーラスを入れるミズキと、普段見られない光景が見られるのもセッションならではだろう。間髪入れずにSE「G.A.G」の笑い声が響き、ラストはBugLugの一聖(Vo)&優(G)、Blu-BiLLioNのmag(G)&珀(B)、DOGの緩菜(Dr)によるTeam Cが登場。「すべてに制裁を」と始まったBugLug曲「ギロチン」では、低音の利いたベースを聴かせる珀がスペースのある上手に駆け出し、「HICCHAKA×MECCHAKA」ではリズミカルな緩菜のドラムにオーディエンスが跳ねて、優のギターソロにmagもピタリとハモらせる。対バンの多いレーベルメイトだけにバンドを越えても息の合ったアンサンブルを聴かせ、アバンギャルドなDOG、メロディックなBlu-BiLLioN、激情のBugLugと、三者三様の個性で会場を大いに沸かせてくれた。
続いてベートベンの「歓喜の歌」を奏でるギター音が鳴り、DaizyStripperの幕が開くと、それを奏でていたのは上手のまゆ(G)。「会いたかったぜ、渋公!」と「LIVE or DIE」でスタートすれば、風弥(Dr)のツーバスが唸り、いきなりのヘドバン大会が勃発する。そこに漂ういつにも増して高い緊張感は、夕霧(Vo)の言葉を借りると「まゆが今日をもってDaizyStripperをお休みする」が故。「5人で自分たちを信じて決めた決断だし、俺たちは自分たちの道を信じて突き進むから、最高にカッコいいお前たちを見せてみろ!」と繋げた「TRUTH」では、そのまゆに夕霧がマイクを向けて歌わせ、なお(G)も互いに向き合ってギターを鳴らしながら、相方との暫しの別れを惜しむ。シドのカバー曲「妄想日記」で激しく、まゆへのメッセージとも重ねて「Little Ballerina」をポジティブに届けると、最後の曲はもちろん「decade」。左右にモッシュする客席を前に、なおがお立ち台に立ってソロを弾くと、そこにRei(B)となおが寄り添い、渾身の力で5色の音を放つ彼らに満場の拍手が贈られる。「最高にカッコいい自分を信じて、勝った先で待ち合わせしような」と、今度はバンドで演奏された「歓喜の歌」は、未来を信じる彼らからのオーディエンスへの、そしてまゆへの何より力強い激励に他ならない。5人で手を繋いで一礼し、ステージを去ったまゆの今後の人間修行を、そして一日も早い帰還を、心から祈りたい。
スモークの中、ロックに力強い「流星ダイヴ」で幕開けたのは、こちらもOVER THE EDGE皆勤賞のheidi.。ゴリゴリと5弦ベースをかき鳴らすコースケ(B)、美しくコーラスをハモらせる裸足のナオ(G)、そして哀愁味あふれるメロディを伸びやかに歌い上げる義彦(Vo)という彼らにしか生み出し得ないheidi.節は、もちろん今年リリースされた楽曲でも健在だ。そこから時代を遡り、heidi.最大の代表曲「泡沫」でも、オーディエンスは想いのまま飛び跳ねて、「いや、楽しいな! 渋谷」という義彦の呟きを裏付ける。「このイベントはお祭りのようなものですから、最後まで楽しんでいってください!」という彼のMCに続き、ジャジーに跳ねてナオがタッピングを披露する「檻」、艶めかしくベースラインがうねる「アナザーフィッシュ」と、heidi.の十八番でもあるセンチメンタルにふくよかな空気感を醸しながら、今日の彼らから最も強く感じられたのは“集まった人々と共に楽しもう”という想いだ。「おまえさん」でも弦楽器隊のコーラスが弾け、立ち上がって煽る桐(Dr)に客席も笑顔でモッシュして、ラストは11月に発表された配信限定シングル「グライド」。「今年最後のライブなんで、気持ちを籠めて歌いたいと思います」という義彦の言葉通り、爽やかに届けられた最新曲が緻密なアンサンブルでジワリと心を震わせてくれた。
ここで、まさかのイントロが流れ、幕が開いてDIAURA・yo-ka(Vo)がDIR EN GREYの「OBSCURE」を歌い出すと、会場は一気に狂乱の海へ。現れたのはlynch.の玲央(G)を中心にvistlipのYuh(G)、the god and death starsのkazu(B)、MERRYのネロ(Dr)という強力布陣のセッションチームだ。全員が黒スーツで決めてディープかつ妖艶なDIR EN GREYワールドを完成度高く届けると、さらに「生きてるか、渋公! 2013年最後の日、誰よりも誰よりも狂えよ!」と声で、音で「THE ?D EMPIRE」を叫ぶ5人に、客席はヘッドバンギングの嵐で応える。艶やかなクリーンボイスとシャウトを見事に使い分けて世界を彩るyo-kaは、「CHILD PREY」に到るとジャケットを脱いで胸元をはだけ、遂には上半身裸に。そんな彼に今日だけは下手に陣取ったリーダー・玲央も駆け寄り、腕自慢のメンバーと共にハイクオリティなプレイで圧倒する。去り際にネロが掲げたタオルに書かれていた“全身全霊”という文字そのままの、リスペクトに満ちたレアすぎるステージに、ライブが終了しても場内の興奮は暫く消えることがなかった。
ゴシックなSE「未遂の庭」で登場したR指定は、「青春はリストカット」から“攻め”のメニューを展開。フロント陣が舞台ギリギリまでせり出し、お立ち台に立つZ(G)の不協和音なギターソロが、初っ端からエキセントリックな彼らの個性を刻み付ける。宏崇(Dr)のキレよいビートとユルい3拍子が交錯する「秘事」を鮮烈に放った後、マモ(Vo)のMCが、また強烈だった。「若手バンドのR指定です。それを売りにしているR指定です。こう見えてメンバー結構歳いってます!」と率直すぎる告白をして、「OVER THE EDGEは2回目なんですけど、去年はMCで年内に渋谷公会堂ワンマンを絶対してみせると言って、ホントにワンマンやりました!」と嬉しい報告をするのだから頼もしい。和メロで心を捉える「波瀾万丈、椿唄」では客席に扇子が舞い、タイトルに似合わぬデジタリックなアレンジが映える「愛國革命」では曲中マモが「渋公、ココがヴィジュアルシーンの中心だ!」と会場をブーストして、Zとの掛け合いボーカルを炸裂させるシーンも。ラストの「二度死ね」をフルパワーで叩きつけるや、マモはお立ち台から大きくジャンプして床に転がり、七星(B)は上半身裸になって、このライブに籠めた気合を見せつけた。バンドとして伸び盛りの勢いと、長いキャリアの合わせ技は今、怒涛に華開いている。
SEにMUCCの「朽木の灯」が鳴り、どよめく人々の前で幕が開くと、真っ赤なライトに染められたステージで展開されたのはMix Speaker’s,Incのseekセッション。MERRYのガラ(Vo)、the god and death starsのaie(G)、seek(B)にlynch.の晁直(Dr)というラインナップで初期のムック楽曲を披露したが、まず度胆を抜かれたのが本気すぎるコスプレぶりである。実際にMUCCが着用していたツナギを全員が纏い、中でも普段は大掛かりな衣装で身体を覆い隠しているseekが、本家のYUKKEを模した金髪のキノコカットで虚ろに目線を彷徨わせながら裸足で飛び跳ねる姿は、新鮮を超えて驚愕そのもの! マイクスタンドを振り上げ、「盲目であるが故の疎外感」を歌い上げるガラも、もともと哀愁味の強い曲を得意とするヴォーカリストなだけに、恐ろしいほど違和感が無い。次いで、seekが「オルゴォル」のイントロフレーズを放つと、場内からは悲鳴にも似た歓声が! ガラが大きくジャンプし、いつもより歪みを強く利かせた声でムック特有の恨み節たっぷりなへヴィチューンを絞り出せば、客席では歌詞に合わせてオーディエンスがくるくると回る。aieのギターソロも、両曲通じてかなりの再現率。本イベントの首謀者とも言えるムックと親交が深いメンバーによる、素晴らしく親愛の情があふれたセッションは、集まったファンにとって何よりのお年玉になったことだろう。
そろそろ時刻は21時。無音のなかで静かに舞台に現れた藤田幸也は、「予定より早く進んでいます。このままだとカウントダウンのタイミングが合わないので、僕が歌ったあと休憩します」と親切な報告を。さらに「盛り上がらないような暗い曲ばっかりやるんで、盛り上がらないでください」と告げ、その場でメンバー名とセットリスト、歌詞までツイッターに上げるという、前代未聞の行動に出る。が、それもネット社会のアドバンテージを活かした彼なりのワザ。「本当に暗い、お祭りには相応しくない曲です。見たい人は歌詞を見ながら聴いてください」と前置かれた「聖書-BIBLE-」は、その通り過去への断ち切れない想いを綴った一品なのだが、確かに歌詞を見ながら聴くことで、艶やかな歌声のエモーショナルな軌跡がグッと胸に沁み込むのだ。結果、オーディエンスは着席のままジッと耳を傾けることとなり、2曲目「証-akashi-」でピアノとチェロの美しい調べがマイナーからメジャーに転化して、そこに一筋の光を差し込んでゆく。そして「バンドはいつか必ず解散してしまうこと、それでも残された音楽を好きでいられるか?ってことを、頭のどこかに置いてほしい」と歌われた「TRUTH-真実の詩-」を切なく突き刺して、拍手の中で「じゃ、休憩してください」と退場。他の出演陣とは違う彼にしか果たせない役割が、このイベントには確かに存在するのだ。
休憩を挟み、再び渋谷公会堂を熱狂の渦に叩き込んだのはDIAURA。昨年は12月30日に行われた“OVER THE EDGE’12‐NEXT BREAK‐”に出演し、今年は見事に本公演への昇格を遂げた若手有望株だ。まずは最新キラーチューン「TRIGGER」で頭を振らせ、「Cult」でジャンプを導く強力な牽引力は、さすが2日前に同じ渋谷公会堂でワンマンを果たしただけはある。「今頃、向かいのNHKホールでは五木ひろしが「博多ア・ラ・モード」を歌っているでしょう。でも、その五木ひろし以上に盛り上がって、ブチ壊れちまおうと思います」と意外にコミカルな一面も晒し、ミドルな「胎動」で揺らした後は、イントロからシタールが鳴る「TABOO」へ。異国風のムードあふれる楽曲に乗せ、お立ち台でyo-ka(Vo)が巧みに振りを繰り出してイビツな幻想絵巻を描き出す様は、まさしくヴィジュアル系のド真ん中で心が躍る。佳衣(G)のアルペジオをバックに「今日が俺たちの出会いの始まりで、俺はコレをこの先に繋いでいきたい。だから、感じてください」と演奏された「Sleeping beauty」は、最新アルバム『FOCUS』の収録曲で、未だ耳馴染み薄いにもかかわらず、その秀逸なメロディで客席を揺らすことに成功。ラストの「Garden of Eden」でもマーチのリズムで快活に手を振らせて、新人離れした実力を証明してみせた。
新年まで残すところ1時間。ここで今日一番の歓声を浴びて、ステージを覆い尽くすスモークの中にMUCCが立つ。頭から爆裂メタルチューン「Mr.Liar」を放ち、「2013年終わっちまうぞ。騒げ!」と煽れば、オーディエンスは身体を折り畳んで大沸騰。続いて瞳と唇を真っ黒に塗った逹瑯(Vo)が、長い手足を駆使して「G.G.」の摩訶不思議な世界を描き出し、その重厚にして華やかな存在感で観る者の目を釘づけにしてしまう。シンプルにして極上のアンサンブルを刻む「WateR」を挟んで、逹瑯が「あのメンツでMUCCの曲やってくれるのが感慨深くて、いい奴だなぁと思いましたよ」とseekセッションへの感想を語った後は、最新シングル「World’s End」に「名も無き夢」と新旧のアッパーチューンを繋いで、光に満ちた光景を描出。そして痛快に天へと突き上げられる無数の拳に、ミヤ(G)が「2013年の嫌なもの、全部ここに置いてっちまえ!」と叫べば、心熱くなる大合唱が沸き起こる。しかし、こんな前向きな空気で彼らが2013年を終えるはずがない。お馴染みすぎるフレーズを弦楽器隊が弾き繋ぎ、やはりドロップされた「蘭鋳」で「全員座れ! 跳びおさめしよう!」と着席させられた人々は、4カウントで全員ジャンプ! 狂乱のカオスと化した場内に向かい、フロント3人が並んで「良いお年を〜」と手を振って、2013年のファイナルアクトをさすがの貫禄で締め括ってくれた。
遂に5分前の時報が鳴り、現れたのは逹瑯と未だにYUKKEコスのseek。加えて藤田幸也がステージに出演者を呼び込むと、seekとYUKKEが並んで夢の共演を果たして見せたり、年明けのライブでMERRYのサポートベースを務めることになったYUKKEとMERRYの結生(G)が「1月はよろしく」と握手したり、思い思いに交流を繰り広げてゆく。「好きなメンバーの名前を呼びおさめして!」と逹瑯が客席に叫ばせて、デジタル時計が0時になると、「HAPPY NEW YEAR!」の声と共にキャノン砲で金銀テープが飛び、新年の到来を祝福。「2014年始まりましたけど、どんな1年にしたいですか?」と逹瑯がOVER THE EDGE初出演組にマイクを向ければ、Blu-BiLLioNのミケは得意のハイトーンで「おめでとう!」と叫んで質問の意図を無視するのだから肝が太い(笑)。一方、DIAURAのyo-kaは「もっともっと皆に会いに行きたいと思います」と、47都道府県ツアーを予定している2014年への意気込みを語った。また、退場間際にはDaizyStripperのギター隊&夕霧がオーディエンスを背に記念撮影する場面も。こんな心温まる光景が突発的に起こるから、OVER THE EDGEというイベントは一瞬たりとも目が離せないのだ。
そして、栄えある2014年のファーストアクトを務めたのがMERRY。怪我療養中のテツに代わりサポートベースを務めるdefspiralのRYOを交えた5人で、拳あがる「梟」から新年一発目の重責を果たそうと、常以上に気合いの籠ったキレ味の良いライブを展開する。カラフルにライトが明滅する「不均衡キネマ」でも、ガラ(Vo)は奇妙なステップを踏みながら「2014年はこんなもんか!?」と貪欲に煽り、ステッキを股間に差し込んで、MERRYの持ち味であるアングラ世界を存分に発揮。さらに「新年だけど皆さんに「絶望」を歌ってもらいたい。じゃあ、これ、ありがたいお水なんで」と柄杓で客席に水を撒き、「絶望」の二文字をリフレインさせるのだから、罰当たりなことこの上ない(笑)。加えて、拡声器越しの歌声でレトロ&ノスタルジーを広げた「赤い靴」を挟み、「2014年で一番、残り364日でも抜けないくらい暴れてください!」というネロ(Dr)のMCから繋いだ「ジャパニーズモダニスト」の爆発力ときたら! 健一(G)は1秒たりとも動きを止めることなく、大サビでは場内が大合唱。学習机に座り込み、いつの間にか上裸になって頭をかきむしるガラのロックなパフォーマンスに高揚感は止まらず、ラストの最新シングル「ZERO‐ゼロ−」の噛みつくような勢いに、幾度もの逆境を超えてきた彼らの強さを思い知らされた。これはテツ復帰後の完全体となったMERRYが楽しみである。
昨年に続き二度目のOVER THE EDGE参戦となるvistlipは、メロディックな歌始まりの「TELESCOPE CYLINDER」で、意外にもリリカルに幕開け。曲終わりでは伸びやかなボーカルを聴かせた智が「あけましておめでとう」と告げて、穏やかなムードで会場を包む。が、4月のシングルリリースや5月から始まるワンマンツアー等、2014年の予定を告知してからはギアチェンジ。上手の専用お立ち台でYuh(G)がテクニカルなソロを放つ「Prey Shadow」、短髪にイメチェンした海(G)のシャウトが轟くへヴィチューン「Period」と、熱の籠ったバンドサウンドで、10時間を超えた長丁場のイベントに再びエネルギーを注入してゆく。その結果「愛を確かめ合おうぜ!」と贈ったデジタル・キラーチューン「GLOSTER IMAGE」では、遂に客席がヘッドバンギングの海に。さらに軽々とタッピングをかますYuh、ラップヴォーカルを入れる海と両極の個性を発揮するギター隊も、疾走チューン「HEART CH.」では重厚なリズム隊と一体になったプレイで智の歌を支え、やはりvistlipの真髄はメロディにこそあるのだと思い知らされる。ライブを締め括った「Recipe」でも、オーディエンスが大きく手を振って、爽やかな一体感を創出。重さと軽やかさのバランス良い楽曲&ステージは、2014年も彼らの大きな武器となることだろう。
バンドとしてのトリを飾ったのは、OVER THE EDGE皆勤賞のMix Speaker’s,Inc.。ホラー感たっぷりのSE「Majestic Satan Instrumental」に乗り、まずはボーカルのYUKI&MIKIが登場して順にリズム隊、ギター隊を呼び込むと、「お前ら疲れてないよな!?」というYUKIの言葉から「Pandora」へと雪崩れ込んで、アグレッシヴに疾走するのが心地よい。続く「HELL FIRE」で胸を打ったツインボーカルの美しすぎるハーモニーは、「2013年の最後のライブや思ってたら、2014年最初のライブになっちゃいましたね」(YUKI)というMCからの歌モノ曲「the end」でも存分に堪能。しかし一転、「ここから暴れていこうか!?」というMIKIの号令を合図に、弦楽器隊が前に飛び出した「MONSTIME」では、seek(B)のボーカルも交えつつ、飽きることなく客席を煽り続けてゆく。ラストの「Shiny tale」ではお立ち台でのベースソロにギター隊が寄り添ったのに加え、互いを見つめ合って歌うYUKIとMIKIの間に、結成から7年で培われてきた強い絆が透けて見えて、思わず涙腺が緩むことに。YUKIは4月19日の赤坂BLITZワンマンをもっての脱退が決まっているため、OVER THE EDGEでこの6人が見られるのは、これで最後。だが、未来へ進む力に満ちたこの曲のように、輝かしい物語がYUKIと5人の行く手に広がることを願ってやまない。
12時間を超えるイベントも、MUCCの逹瑯とvistlipの海によるスペシャルセッションで、遂にラストステージを迎えることに。楽器陣はギターに海とバロックの圭、ベースに†яi¢кのSHUSE、ドラムにBVCCI HAYNES/GREMLINSのKNZ。そして、ボーカルは逹瑯とNoGoDの団長によるツイン編成と事前発表されていたが、なんと団長は白塗りの筋肉襦袢を着て、ボディコン女性に扮しているではないか! しかし、驚く暇もなくB’zの「ultra soul」が始まると、その歌と演奏の上手さに二度目の驚きが走って、皆で“ultra soul!”と跳びながら文句ナシの盛り上がりを見せる。ちなみに今日の衣装テーマは全員“初めて好きな子とデートに行くときの格好”だそうで、団長が「逹瑯さんとデートに行くことを想定して、逹瑯さんの好きな要素を全部詰め込みました」と話せば、逹瑯からは「抱きたい! ムキ可愛い!」と、まさかの返答が(笑)。CHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH」では歌詞にちなんで逹瑯が団長を軽く殴ったり、団長が客席に降りて照明スタッフにまで“YAH YAH YAH”の掛け声を求めたりと、もうハチャメチャ。「僕はこの曲をやりたくて、このメンツを集めました。同期のデータはギルガメッシュのЯyoに作ってもらいました。3千円で」と、逹瑯の驚きの告白から演奏されたBIGBANGの「Fantastic Baby」では、さらにYUKKEやR指定のZらが飛び入り、vistlipのtohyaは海を舞台から突き落としたりと、完全にカオスの様相を呈してゆく。遂には団長がウイッグやスリップドレスを客席に投げ込んで、メンバーが姿を消すと、場内からは拍手が自然発生。すべての感情を出し切って、バンドもオーディエンスも新たな気持ちで2014年を迎えられる。そんな気持ちになれた12時間は、こうして幕を閉じたのだった。
<関連リンク>
■OVER THE EDGE 2013 オフィシャルサイト