今年3月に6thアルバム「勘違い」を発表。9月から10月にかけてアコースティック・ツアーを全国5か所で行うなど、さらに活動のペースを上げている安藤裕子が11月9日、東京・NHKホールでスペシャルライブ「安藤裕子 秋の大演奏会」を開催した。この公演には、デビュー以来のパートナーである山本隆二(Piano)、山本タカシ(G)のほか、東京スカパラダイスオーケストラのNARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(T.Sax)、川上つよし(B)、茂木欣一(Dr)、CHICA Stringsなどが出演。ホーン・セクション、ストリングスを含む編成により、「海原の日」「パラレル」「さみしがりやの言葉達」など、多彩なアレンジが施されている楽曲を限りなくオリジナルに近い形で体感できる内容となった。
清水ミチコの“モノマネ”による場内アナウンス(始まりは“山口もえ”で締めくくりは“黒柳徹子。いちばんウケていたのは”田中真紀子“でした)に続き、アラビアンナイト風の衣装をまとった安藤裕子がステージに登場。「おまたせしました、安藤裕子です。今日は一夜限りのお遊びなので、みなさん、楽しんでください」と挨拶した後、メンバーをひとりずつ呼び込み、バンド(山本隆二、山本タカシ、川上つよし、茂木欣一)とストリングスによる「”I“novel.」「パラレル」からライブがスタート。続く「TEXAS」「さみしがり屋の言葉達」では、ストリングスに代わってスカパラ・ホーンズがステージに上がり、豊かな響きをたたえた演奏を披露。安藤裕子の奥深い音楽世界を生々しく表現した。
さらにチェロ、ピアノ、サックスの編成による「サリー」(’03年のデビューミニアルバム「サリー」のタイトル曲)からは、アコースティック・テイストを軸にしたコーナーへ。「素晴らしいミュージシャンたちの演奏で曲がどんどん大きくなって。そのなかで歌えるのは、生まれてから死ぬまでのなかでも、いちばん幸せなんだと思います。でも、ピアノとギターの少しの音だけで歌うのも、とても好きです。…来年は10周年。こうして音楽を続けさせてもらっている、みなさんにもありがとうございます」というMCに導かれた「六月十三日、強い雨。」、そして、ストリングス・セクションのクラシカルな響きと強烈なエモーションを備えたボーカルがひとつになった「隣人に光が差すとき」も強く心に残った。
ライブ後半では、アルバム「勘違い」のリード曲「鬼」、シングル曲「The Still Steel Down」「海原の月」といった代表曲を次々と演奏。ライブが進むにつれてボーカルのダイナミズム、感情の発露も増していき、満員のオーディエンスをしっかりと魅了していた。
深みのある音楽性と表情豊かなボーカルを軸にした本編とは一転、アンコールではエンターテインメント性に満ちたステージが展開された。まずはスペシャルゲストの池田貴史(レキシ)がなぜかサックスを持って登場、「ケビン・コスナーです!」という自己紹介で軽く笑いを取った後、安藤とのデュエットによる「林檎殺人事件」(郷ひろみ・樹木希林)を披露。そしてラストの「ぼくらが旅に出る理由」(小沢健二/アルバム)では、茂木欣一とのデュエットも実現。「それで僕は腕をふるって 君にあて返事を書いた」と茂木が歌い始めた瞬間、客席からは大きな歓声が起きた。
最後は出演者全員が手を繋いで挨拶。これまでのキャリアを象徴する楽曲を、凄腕のミュージシャンたちによる演奏と奥深い表現力をたたえたボーカルとともに堪能できる、きわめて貴重なライブだったと思う。
来年2月28日には、指揮者・西本智美とのコラボレーションによる「スペシャル・シンフォニック・コンサート」(Bunkamuraオーチャードホール/管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団)も決定。デビュー10周年を目前にした安藤裕子はこれから、さらなる充実期を迎えることになりそうだ。(森朋之)
“I”novel.
パラレル
水色の調べ
TEXAS
さみしがり屋の言葉達
黒い車
エルロイ
Lost child,
サリー
蒔かれた種について
六月十三日、強い雨。
隣人に光が差すとき
輝かしき日々
鬼
The Still Steel Down
海原の月
聖者の行進
encore)林檎殺人事件
encore)ぼくらが旅に出る理由
山本隆二(pf)、山本タカシ(gt)
CHICA Strings
NARGO(tp)、北原雅彦(tb)、GAMO(Tsax)
川上つよし(ba)、茂木欣一(dr)[東京スカパラダイスオーケストラ]
池田貴史 [ゲスト]
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