L’Arc〜en〜CielのリーダーでありベーシストのTETSUYAが、10月2日と3日の2日間、「TETSUYA LIVE 2012 “THANK YOU”」と題して渋谷公会堂2Daysライヴを開催した。2012年4月にLIQUIDROOMで行われたイベントへの出演はあったものの、ワンマンライヴとしてはTOUR 2011「COME ON! FEEL THE LIGHT!」以来、約1年8ヶ月ぶりとなる。その間は、L’Arc?en?Cielの20th L’Anniversary yearで多忙を極めていたのはご存じの通りだろう。久しぶりとなるワンマンライヴを前に広がる会場の空気は、期待に膨らむ客席のTETSUYAを呼ぶ声が象徴しているようだ。
開演予定時間の18:30を少し廻ったところで場内暗転。ステージを覆う紗幕に、“ありがとう”“Danke”“謝謝”“Grazie”“Obrigado”“Gracias”“Merci”そして、“THANK YOU”など各国の感謝の意を表す言葉が次々に投影されると場内に歓喜の輪が広がった。曲は「流れ星」へ。紗幕越しにしっとりと、しかし力強く響きわたるTETSUYAの歌声が、深く染み入るようなオープニングだった。
「渋谷ー!行くぜ!」という言葉を合図に、「LOOKING FOR LIGHT」「REVERSE」といったキラーチューンを連発。目にも鮮やかな照明に加えて4枚の大型LEDパネル、TETSUYA & The Juicy-Bananasロゴを配した電飾ボードがカラフルに場内を照らす。ステージ上のTETSUYAはのっけからステージ上手から下手へアクティヴなパフォーマンスをみせた。
「久しぶりやけど、今日は僕の20代最後のライヴなので(笑)、楽しんでいってください!」と冗談交じりで語られたように、この日はTETSUYAの生誕前夜でもある。ライヴは、1stアルバム『Suite November』および2ndアルバム『COME ON!』収録曲を完全網羅した特大ボリューム。感謝の気持ちが込められたステージは、TETSUYA & The Juicy-Bananasが奏でる音楽という名の贈りものでもある。
また音楽はもちろんのこと、ショウアップされたステージが実にきらびやか。とりわけキラキラした映像が映し出された「Can’t stop believing」や、雪とクリスマス風の映像の「lonely girl」など、楽曲の持つ世界観とリンクしたLEDパネルの映像が視覚と聴覚を刺激する。さらには、TETSUYAと客席との至近距離のやり取りも行われるMC、木目が見えるナチュラル塗装のタイコに大きな葉っぱをあしらった“バナナの木(葉っぱは本物!)”仕様のドラムセット、「Roulette」の曲間で繰り広げられたサイコロトークなど、ステージはさながらテーマパークのようなワクワク感に溢れて見どころに事欠かない。あらゆる表現手段で音楽を届けるエンターテイメントだったのだ。
怒濤の後半は、TETSUYAの「WHITE OUT」という曲コールとともに巻き起こった叫声で幕を開けた。躍動するバンドのアンサンブルは有機的に絡み合い、「蜃気楼」では一糸乱れぬ演奏が場内のテンションを加速度的に上げていく。その核を貫くTETSUYAのヴォーカルは、低音からファルセットまで実に伸びやかに響き渡って美しい。そして、ミラーボールの光りが会場中を輝かしく照らした「15 1/2 フィフティーンハーフ」で本編は感動的に幕を閉じた。
この日のハイライトはインターバルをあけて再登場してからもあった。「今日ここでみんなと会えて、こんなに素晴らしいミュージシャンと音楽を、夢を作れるなんて、なんて幸せなんだろうと。僕は口ベタなんで、新曲を用意してきました。昨日、ギリギリ歌詞が上がりまして。「THANK YOU」という曲です」。そして披露された新曲は、一音一音に想いが込められた爽やかさすら漂うミディアムチューン。“ありがとう”“こんなにも愛しているのに”“またあえるよね”という言葉で綴られた歌詞が胸を締めつけるように切ない。あまりの万感迫る歌詞に涙を流すファンの姿も見受けられたほどだった。大きな拍手に会場が包まれる中、ロックンロール調のギターリフが鳴り響く。曲はエンディングナンバーの「Are you ready to ride?」だ。黒いスーツ&サングラス姿のコミカルなBananaman Brothersを交えてのパーティーチューンで、華やかに初日を締めくくった。
迎えた二日目。この日はTETSUYAのバースデイであり、DVD『LIVE SELECTIONS 2010-2012』の発売日でもある。祝福ムードが立ちこめた場内に轟くギターリフは、初日のエンディングを飾ったあの「Are you ready to ride?」だった。オープニングから全開のロックンロールパーティ。続く「EDEN」「TIGHTROPE」「guilty」はよりスリリングに、よりパワフルに迫りくる印象。ファンの熱気にも凄まじいものがあった。
また初日と同様に、さすが百戦錬磨のミュージシャンが勢揃いしているだけあって、そのステージはセッションではなく、一体感を土台にしたバンドサウンドだった。Juicy-Bananasの演奏力はハンパなく、ライヴならではのパワー感が増幅されて、TETSUYAのヴォーカルも迫力に満ち溢れていた。
もちろん中盤に披露された「REVERSE」や「In My HEART」などの聴かせるミディアムチューンでは、その正確無比なヴォーカルに耳を惹きつけられる。昨年のL’Arc?en?Cielオフィシャルインタビュー時、「ピッチに関してはもう病的というか。ソロのレコーディングやライヴで徹底的に耳が鍛えられた」と語っていたが、ヴォーカリストとしてのTETSUYAの安定感には驚きを禁じ得ない。スケールの大きなナンバーから激しいパフォーマンスを伴うアッパーチューンまで、以前よりずっと表現力を増してブランクなど微塵も感じさせない仕上がりをみせる。
TETSUYA本来のポップでドラマティックな楽曲が眩く場内を染めた後半は、もはや視覚や聴覚を超えて、サウンドが身体の内側に響いているかのように客席が鼓動した。しかも1曲1曲が楽曲としての深みを持っているからこそ、そのカラーはより鮮烈に、そして多彩に輝く。勢いに乗った「蜃気楼」はステージと客席との掛け合いコーラスが繰り広げられ、「15 1/2 フィフティーンハーフ」は、初日に引き続き感動的な本編ラストナンバーとして光に溢れていた。
興奮冷めやらぬインターバル後のパフォーマンスが始まると、TETSUYA自身も「ダマされた!」と思わずもらしたサプライズが。「Roulette」の曲終わりで、突如、ハッピーバースデイのピアノが鳴り響いたのだ。これには客席の大合唱が沸き起こる。そして最後のMCでTETSUYAはこう語った。「今回のライヴタイトルに「THANK YOU」って付けたのも、これがラストライヴになってもいいかなって。心が折れかけてたんですけど、このメンバーでリハーサルをして、自分の歌を歌うと……俺の歌詞って結構ポジティブやん。歌いながら、“そうやんな、もうちょっとがんばろう”って。昨日今日とライヴをやって、すごく楽しくて。またみんなに会いたいなと。自分の歌詞に励まされながらこの先のことを考えたいと思います(笑)」。場内に鳴り響いた万雷の拍手が、TETSUYAの瞳を虹色に輝かせ、この夜のテンションも最高潮に達した。渋谷公会堂2Daysを締めくくるラストナンバーは、2Daysのオープニングナンバーでもあった「流れ星」だ。1人1人の心に歌いかけるようなTETSUYAの歌。場内をしっとりと染めるミディアムチューンに思わず涙するファンの姿も見受けられる。そして、“僕たちは始まりに戻って行くんだね”という歌詞に導かれて、また新たな夢と希望の楽園が幕を開けるだろう。その日まで、TETSUYA自身も「2010年から2012年までの僕の活動の加勢大周です……集大成です」と太鼓判を押したDVD『LIVE SELECTIONS 2010-2012』を見ながら待つのが良いだろう。
TETSUYA LIVE 2012 “THANK YOU”
【10月2日(火)セットリスト】
01. 流れ星
02. LOOKING FOR LIGHT
03. REVERSE
04. In My HEART
05. Can’t stop believing
06. guilty
07. Pretender
08. empty tears
09. lonely girl
10. wonderful world
11. TIGHTROPE
12. SCARECROW
13. WHITE OUT
14. EDEN
15. 蜃気楼
16. 15 1/2 フィフティーンハーフ
17. 魔法の言葉
18. Roulette
19. Fantastic Wonders
20. THANK YOU
21. Are you ready to ride?
【10月3日(水)セットリスト】
01. Are you ready to ride?
02. EDEN
03. TIGHTROPE
04. guilty
05. Can’t stop believing
06. Pretender
07. empty tears
08. lonely girl
09. REVERSE
10. In My HEART
11. SCARECROW
12. THANK YOU
13. wonderful world
14. WHITE OUT
15. 蜃気楼
16. 魔法の言葉
17. 15 1/2 フィフティーンハーフ
18. LOOKING FOR LIGHT
19. Roulette
20. Fantastic Wonders
21. 流れ星