7月14日(土)、TBS系列で放送された「音楽の日」に桑田佳祐が生出演した。なんと桑田は、東京プリンスホテルの屋上からの中継で出演。桑田の背後にはイルミネーションで煌々とライトアップされた東京タワーが聳え立ち、美しく、壮大で、幻想的なシチュエーションでの出演となった。
桑田は、スペシャル・ベスト・アルバム「I LOVE YOU -now & forever-」の発売を目前に控え、最新曲「愛しい人へ捧ぐ歌」を歌唱したが、その前にカバーを披露。なんと、昭和の歌謡曲の名曲、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」、そしてザ・ピーナッツの「ウナ・セラ・ディ東京」をフルバンドを従えて熱唱するという、非常にスペシャルなパフォーマンスを全国のお茶の間に披露した。
「また逢う日まで」は1971年の第13回レコード大賞で大賞を受賞、また「ウナ・セラ・ディ東京」は1963年の第6回レコード大賞作詞賞・作曲賞を受賞しているという、それぞれ日本国民の間で歌い継がれている名曲。日本の歌謡曲は、よく知られている通り、桑田にとって重要な音楽的ルーツのひとつ。「歌の力を集結する」という「音楽の日」の番組理念に沿って、桑田は自分の音楽の源のひとつである歌謡曲を歌うことにした。尾崎紀世彦は地元茅ヶ崎の先輩であり「また逢う日まで」は4年前の「ひとり紅白歌合戦」でも歌ったことがある。一方のザ・ピーナッツについても、もちろん桑田のフェイバリット歌手のひとつであり、また彼女たちの数多くの曲を作曲した宮川泰に対する桑田のリスペクトもよく知られている。(「ひとり紅白歌合戦」の中でも、ザ・ピーナッツコーナーが設けられていたほど。)お気づきの向きも多いであろうが、尾崎紀世彦も、そして双子姉妹であるザ・ピーナッツの姉・伊藤エミも、つい先ごろ訃報が舞い込んだばかり。偉大な先人を偲び、そして彼らが残してくれた素晴らしい音楽を讃えて桑田はこの2曲を歌ったのである。
一方、1960年代から70年にかけては、高度経済成長期で日本という国自体に新たな力が溢れていた時期。音楽だけでなく、国としてのさまざまな礎がこの時期に出来上がったといっても過言ではない。そんな時代の象徴として、その頃からずっと東京の真ん中に聳え立ち、現代社会の推移をずっと見守ってきた東京タワー。一定の役割を果たし、新たにそのポジションを他に渡しつつある東京タワーだが、今でも変わらない存在感を持って、その美しく壮大な姿を我々に見せてくれている。発表から半世紀近くを経ても未だなお輝きを失わない音楽を歌う場として、そんな東京タワーを間近に見られる場所が選ばれたのは、むしろ必然といってよいだろう。
戦後の日本の繁栄の象徴ともいえる、東京タワー、そして未だ色褪せない日本の名曲。それらは多くの人々を元気づけ、勇気づけてきた。今回の桑田のパフォーマンスと東京タワーとの「コラボレーション」は、明るさを失いがちな現在の日本において再び日本中の人々に元気を与えてくれるような、そんな「歌の力」を感じさせてくれるものだったのである。
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