シンフォニックメタルプロジェクトLIV MOONが、3月3日、4日の二日間に渡り、恵比寿リキッドルームにてワンマンライヴを行った。
LIV MOONとは、女優としてミュージカルや舞台でも活躍している元タカラジェンヌのAKANE LIVによるプロジェクト。クラシカル・ミュージックとロックを融合させた独自のスタイルを持つ楽曲に、物語を読んでいるような気持ちになるコンセプチャルな詞の世界で、聴く人を音楽の中へトリップさせてしまうのがLIV MOONの特徴だ。今回のライヴは、今年1月18日にリリースされ、オリコンのデイリーランキングで15位を獲得した3rdアルバム「Symphonic Moon」を引っさげての開催となる。この作品は、高音域を司る「WHITE LIV」と低音域を司る「BLACK LIV」がアルバムの中で物語を描いて行くというコンセプチャルな内容。「白と黒」「生と死」、相反する二つのものを表現することで、強さや生命力を感じさせてくれた本作を受けてのライヴは、一日目は「white night」、二日目は「black night」とコンセプトを分けて、衣装も楽曲も異なる趣向で楽しませてくれた。
「WHITE LIV」が降臨した一日目。ヴェールをなびかせAKANE LIVが登場すると、ステージ上の雰囲気がガラリと変わった。オープニングナンバーはミュージカルや映画でもお馴染みの「オペラ座の怪人」で知られる「THE PHANTOM OF THE OPERA」。ギターの大村孝佳のデスボイスとAKANE LIVの美しいハイトーンの掛け合いで聴かせた、ヴォーカルのコントラストも絶妙。「FLY」では、衣装が風にたなびいて、まるで本当に天女が舞いながら歌を奏でているような錯覚に陥る。「今宵はWHITE LIV。皆さんを白い世界へ誘います」という短い挨拶のあと、アルバム「Symphonic Moon」のレコーディングの中でWHITE LIVというキャラクターのイメージが最初に膨らんだ楽曲「心月世」、一番最初に完成した「氷の棺」と2曲続く。「生」を司る「WHITE LIV」が全面に出たセクションだ。「死」のイメージを漂わせながらも、強烈な「生」へのメッセージを唄うAKANE LIVの姿は、完全に、この物語の主人公になりきっているようで、観る者も一緒にその世界にひきずり込んでいく。
中盤は、両日ともに共通の楽曲が並んだ。一曲中に「WHITE LIV」と「BLACK LIV」が同居している「Kiss me Kill me」「Amen!」「堕天使の笑み」「Masquerade」等、ライヴ映えする楽曲が続き、本編ラストの「アマラントスの翼」では、サビの部分でAKANE LIVがユナイトのポーズで煽ると、場内が一つにまとまった。白というコンセプトゆえか、一日目は神々しく、近寄りがたいほどのオーラを放っていたAKANE LIVが印象的だったが、二日目の「black night」は親しみやすい小悪魔風。ゆえにライヴ感が濃く感じられた。黒いゴシックなジャケットをまとっていた一曲目「零の天使」では、一日目と同じく近寄りがたいオーラ全開だったが、1曲唄い終え、黒のビスチェドレスに変わったとたんに、その小悪魔的な魅力が全開に。バッハの小フーガト短調がイントロのモチーフに使われた「Say Goodbye」ではよく伸びるハイトーンで魅了し、「Fugitive」では最前列の人に握手をしながら唄い、客席とステージの距離感がグッと近づく。「Escape」ではイントロが始まるやいなや「オイ!オイ!オイ!」というかけ声がかかり、「Alchemy」で場内の熱気が更に上昇。「Kiss me Kill me」から始まる中盤の曲目は前日と変わらないが、一曲一曲が物語の一遍のようにドラマティックに展開していた一日目に対し、二日目はライヴ然としていて客席と共に楽曲を作り上げているような感覚。ヴァンパイヤになりきって歌い上げる「Amen!」も、物語性はありながら、楽曲の世界観以上に場内一丸となるライヴの醍醐味を感じた。本編ラストの「Black Ruby」は、得意のハイトーンではなく地声と低音ボイスで歌い上げたナンバーで、「BLACK LIV」が生まれるきっかけとなった曲。「自分の素の声がファンの方にあんなにウケるとは思ってなかったので自信になった」と、歌い手AKANE LIVにとっても転機になった曲だけに、唄う声にも熱がこもる。「ラストの曲、みんなで盛り上がってこうぜ!」という声を合図に、最後まで場内が一つになって駆け抜けた。
アンコールは両日ともに3曲。一曲目に選曲されたのはバンドメンバーのみで演奏される「The Swan Lake」。この曲は、誰もが知っているクラシックバレエのスタンダード「白鳥の湖」からの選曲だ。「白鳥の湖」は、主演の白鳥とライバルである黒鳥を一人二役でプリマが演じる。「WHITE LIV」と「BLACK LIV」を象徴しているような選曲だが、あのクラシックの名曲が、こんな風にロックに変身してしまうのかと驚くばかりだ。一日目のアンコールで2 曲目に聴かせてくれたのは「命の森」だが、「white night」を見ながらずっと感じていたことがより鮮明にわかった瞬間だった。音に身を委ねていると、ステージが深い森のように見えてきたのだ。LIV MOONの楽曲は、聴いているだけで景色が見えて来るような楽曲が多い。ゆえに、セットがないのに、セットがあるように感じてしまう。「white night」がミュージカルを見ているような感覚になったのは、ずっと楽曲で描かれた景色が、ステージに広がっていたからだ。二日目でアンコール2曲目に披露されたのは「鮮やかに…」だった。この曲は、白と黒の世界を経て、LIV MOONの次なる世界へと誘ってくれるような印象だった。まるで夜が明けて、太陽が街を照らしていく瞬間のような、街が徐々に色づいていく、そんなイメージだ。そして、両日ともにラストは、一斉に「Savior’s coming!」と唄う「The Last Savior」。待ってましたとばかりに、ステージに声をぶつけるオーディエンス。二日目の最後に「一つになれた気がする!」とAKANE LIVも言っていたが、この曲は、その言葉を一番体現しているだろう。CD以上の迫力のある「The Last Savior」がライヴ会場に響き渡った。
「2DAYSやってみて、LIV MOON、もっとデカくなれるんじゃないかって確信に変わりました」という、プロデューサーの西脇辰弥の言葉にもうなずける、LIV MOONの可能性をいろんなところに感じられた二日間。非現実的空間へと音楽へ誘ってくれた「WHITE LIV」と「BLACK LIV」。そして、LIV MOONがかけた魔法は、しばらく解けそうにない。
(取材・文 / 大橋美貴子)
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