SEが大音量で響き渡る中、ゴールドの衣装を輝かせながらKREVAが登場。オープニングナンバーは「基準」。ヘヴィなギターの刻みを基調 としたトラックに乗せて、シャープなラップを連射する様のカッコ良さと言ったらなかった。この曲は高速ラップが見せ場だが、スリリングなビー トの乗りこなしが神懸かっていた。しかし、「基準」が、「ほんの肩慣らし」だったのが、この日のライヴのとんでもなさだ。なんと冒頭の8曲は ブレイクを挟まないノンストップ! 「ストロングスタイル」「ACE」「パーティーはIZUKO?」「THE SHOW」など……強力なナンバーが連発されていった。その姿は「壮絶」であったと同時に、「水を得た魚」とでも言うべき清々しい充実感が漲っていたのが 印象的だった。「今、日本も世界もあんまり良い状態ではないことは分かっている。でも……いや、だからこそ、こうしてみんなの前に立てている 俺は言ってやるぜ。俺はH.A.P.P.Y!」、イントロが響き渡る中、KREVAが我々に呼びかけ、突入した「H.A.P.P.Y」は、ま さしくこの瞬間のKREVAの心情を表わしている曲として受け止めさせられた。数々の代表曲の間に最新アルバム『GO』の収録曲が満遍なく散りばめられていたのが、この日のライヴの独特だったポイントだ。KREVAは 『GO』をリリースした際のインタヴューで「アルバムの曲順の流れの中でしか生きない曲ではなく、いろんな時期の曲をやるライヴのセットリス トの中に入っても生きる曲を作りたかった」という旨を語っていたが、その構想が抜群に具現化されていた。アッパーな曲を中心に構成されていた前半のムードを爽やかにシフトチェンジさせたのは、阿部真央とのコラボ曲「微炭酸シンドローム」。上手か ら現れた阿部真央の歌からスタートし、醸し出された甘酸っぱい風味がKREVAのラップによってドラマチックに躍動していった。対象的な表現 スタイルを互いに融け合わせていくこの2人の共演は、実に瑞々しいひと時となった。そして「瞬間speechless」「スタート」など、胸 にグッと来るタイプの曲を中心に、中盤戦は展開していった。
「runnin’ runnin’」のアウトロに入ったところでステージ袖へと入ったKREVA。ステージメンバーであるDJ SHUHOの華麗なスクラッチ、熊井吾郎がサンプラーを駆使して叩き出すビートが交わされるセッションを経て場内は暗転。再び照明が点いた時、ステージ上 に現れたのはグランドピアノとKREVAだった。同じ単音を延々と鳴らしている彼の姿は、ピアノをいたずらする無邪気な子供のよう。「全員座 らないと、ずっとこの音を鳴らし続けるよ(笑)。座って聴いてもらうと言えばピアノの弾き語り。でも俺は『押し語り』というのをやってみよう かと」、すると彼の手元がステージ上の大型ヴィジョンに映し出された。鍵盤の部分に仕込まれたサンプラーのパッドを叩きながらピアノの音を出 していたことが判明し、観客は大爆笑。
そして「音色」が始まった。彼が操作したサンプラーの各パッドには、異なるピアノの音が配されていた。 ラップしつつ様々なパッドを素早く押して生れた音は、紛れもなく「伴奏」。ラップと絶妙に寄り添いながら時には装飾的なフレーズも挿入し、テ ンポも巧みに変化させながら奏でられたサウンドは、実にエモーショナルであった。斬新なパフォーマンスが華麗に締めくくられた瞬間、観客は大 喝采を贈っていた。後半戦は大合唱を強力に誘う「アグレッシ部」「国民的行事」からスタート。素晴らしい盛り上がりとなったのは、三浦大知とのコラボ曲「蜃気 楼」だ。KREVAの呼び込みを受けた三浦大知は、上下を白で統一したスポーティーな衣装を輝かせながらステージに飛び込んできた。キレ良く 身体を揺らしながら歌う三浦大知×KREVAのラップのコンビネーションが絶妙! 歌い終えた後、笑顔で握手とハグを交わした2人の姿から は、強くリスペクトし合っている間柄が伝わってきた。曲の終盤でKREVAがアカペラでラップしたのを受けて、観客が同じくアカペラによる大合唱で応えた「C’mon, Let’s go」。
そして、温かいエネルギーを日本武道館全体に満たした「KILA KILA」で本編は終了した。アンコールは硬派で男性的なラップが光った「呪文」からスタート。続いて披露された「探究心」がとても良かった。タメや間を 随所に盛り込み、独特なタイム感を漂わせるスタイルのラップが光っていた。「探究心」を終えると、KREVAはDJ SHUHOと熊井吾郎と繋いだ両手を掲げて観客に一礼。再びステージ袖へと入って行ったが、すぐにダブルアンコールへ。「本編で喋らなかったので(笑)、 まずは伝えなきゃいけないことを」と、音楽監督を務める音楽劇『最高はひとつじゃない』、そして12月14日にリリースされるチャリティソン グ「H?PE」について語った。「H?PE」はNYで活動している音楽プロデューサーHirOhsima(MAJOR MUSIC)がSEEDAとKREVAに呼びかけて生れた曲。「KILA KILA」と同時期に制作されていたのだという。SEEDA、三浦大知、Mummy-D&宇多丸(RHYMESTER)、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、leccaなど、参加アーティストの名前も紹介された。また、来年1月からスタートする全国ツアーについても語った。「今日やっ たライヴセット、好きなので、みんなで育てていきたいです。じゃあ、最後に「EGAO」をスペシャルヴァージョンで聴いてください」。スタン ドマイクの前にKREVAが直立すると、トラックが流れ始めた。ピアノを基調としたシンプルなサウンドに包まれ、一心に歌い上げるKREVA の姿には、深く引き込まれずにはいられなかった。
KREVAがステージを去った後、「H?PE」のミュージックビデオが始まった。上映が終わり、終演を知らせるアナウンスを聞いた時の感覚 は、ちょっと不思議であった。夢から突然覚めたかのような仄かな戸惑いと、深い満足感が身を包んでいたのだ。本編ではMCが殆んどなかったか らだろうか。ひたすらKREVAの音楽に深く潜り、夢見心地で漂うような体験を、観客の我々はしていたのだと思う。終演後にKREVAと話を した際、「カッコイイ言い方をするならば、言いたいことは全部曲で言えているっていう感覚があったから」と、MCを殆んどしなかった理由を 語ってくれた。その意図は正しかったと思う。先述の「H.A.P.P.Y」がまさにそうだが、あらゆる曲が明快なメッセージ、奥深い物語を 伴って迫ってきたのが、この日のライヴであった。KREVAのライヴを何回も観てきたが、こんなにも高い純度で彼の音楽、ラップに浸り切った のは初めてだと思う。KREVAのライヴは観に行く度に「新しいKREVA」と出会える。そして、ますます魅了されてしまう。来年の1月から始まる全国ツアーのラ イヴを観た時、あなたも僕も、今よりさらにKREVAのファンになっているのだろう。(ライター 田中 大/カメラマン 今元秀明)
■KREVA 5th ALBUM「GO」
■【通常盤】(CD)PCCA.9857 / ¥2,800(tax in)
■発売日:2011年9月08日(木)クレバの日/PONY CANYON
《収録曲》(※全形態共通)
1:基準
2:挑め
3:KILA KILA
4:蜃気楼 feat. 三浦大知
5:呪文
6:runnin’ runnin’
7:HOT SUMMER DAYS
8:微炭酸シンドローム feat. 阿部真央
9:パーティーはIZUKO?
10:C’mon, Let’s go
-Encore-
11:EGAO
12:探究心
■<全国ツアー>
KREVA CONCERT TOUR 2011-2012「GO」
KREVA CONCERT TOUR 2012「GO」
1月15日(日) 戸田市文化会館 ディスクガレージ
1月20日(金) 鹿児島市民文化ホール 第二 キョードー西日本
1月21日(土) 福岡サンパレス キョードー西日本
1月27日(金) 愛知県芸術劇場大ホール サンデーフォーク
1月28日(土) 京都会館第一ホール 夢番地大阪
2月03日(金) 神戸国際会館こくさいホール 夢番地大阪
2月05日(日) 広島ALSOKホール 夢番地広島
2月11日(土) 神奈川県民ホール 大ホール ディスクガレージ
2月17日(金) サンポートホール高松 デューク高松
2月24日(金) 仙台サンプラザホール キョードー東北
2月26日(日) グランキューブ大阪メインホール 夢番地大阪
2月27日(月) グランキューブ大阪メインホール 夢番地大阪
3月03日(土) 札幌市民ホール WESS
3月10日(土) 新潟県民会館 キョードー北陸
3月15日(木) オリンパスホール八王子 ディスクガレージ
3月16日(金) 宇都宮市文化会館 ディスクガレージ
3月24日(土) 静岡市民文化会館 サンデーフォーク静岡
3月31日(土) 沖縄ナムラホール PMエージェンシー
■料金:¥5,800 (税込)
■「KREVAの新しい音楽劇 最高はひとつじゃない」公演決定!!
『KREVAの新しい音楽劇 最高はひとつじゃない』
【お問い合せ】 シアタークリエ
詳細はこちら! http://www.kreva-ongakugeki.jp/ (PCのみ)
■12/14(水) チャリティソング「H?PE」を豪華メンバーと共にリリース!!
KREVA、SEEDA、HirOshimaが中心となり、超豪華メンバーでチャリティソングをリリース。
[参加アーティスト]
KREVA、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
Mummy-D&宇多丸(RHYMESTER)、三浦大知
SEEDA、EMI MARIA、KOJOE、lecca、TENZAN
MAJOR MUSIC、Che’Nell(US)、Karibel(US)
Produced by MAJOR MUSIC a.k.a. Bastiany&HirOshima
Co-produced by KREVA
<関連リンク>
■オフィシャルHP