この日のライヴは、Dragon Ash史上という観点においても、記念碑的な一夜として記憶されることだろう。最新作『MIXTURE』は、ミクスチャー・ロック=Dragon Ashとは何か?という問いに決定的な答えを打ち出すものだった。
様々な音と経験を飲み込んできたバンドが、ふたたびラウドなロック・サウンドに回帰しながら、バンドマンとリスナー、シーンに対して強烈なメッセージを打ち出す。
今回の全国ツアー『Dragon Ash Tour Rampage』は、まさにそれを体現する場だった。そして、このZEPP TOKYOでのツアー最終日は、集大成と呼ぶに相応しいライヴとなった。
開演前からフロアに満ちていたオーディエンスの期待感が、勇壮なファンファーレをまとった「INTRO」が鳴らされた瞬間に大歓声となって解放される。ATSUSHIとDRI-Vが美しき肉体性を誇るダンスでフロアの昂揚感をさらに煽りながら、Kj、IKUZONE、桜井誠、BOTS、HIROKIが姿を現し、7人のメンバーがステージにそろう。
1曲目「RAMPAGE」からすべての瞬間がクライマックといえるようなライヴの幕が切って落とされた。緻密なアンサンブルによって構築される、闘志と包容力をたたえたラウド・サウンドの求心力にオーディエンスも全身で応えるように、絶え間ないモッシュ&ダイヴを繰り広げた。
『MIXTURE』の収録曲を中心に置いたセットリストは、時に過去の楽曲を織り交ぜながら、Dragon Ashの現在地を鮮やかに浮き彫りにしていった。例えば「Life goes on」と「AMBITIOUS」の祝祭性が有機的に融合するということ。また、「静かな日々の階段を」、「百合の咲く場所で」、「Fantasista」というバンドの歴史を彩ってきた楽曲から、本編ラスト「SLASH」、「ROCK BAND」、「TIME OF YOUR LIFE」という最新曲が感動的につながれていったということ。
今のDragon Ashは、過去のどんな楽曲群も包括することができる。いくつもの栄光と葛藤の季節を経て、ここに揺るぎないアイデンティティを確立した、Dragon Ashというロック・バンドだけが響かせることができるスケール。そこには、父性をも感じさせる大きさがあった。
会場にいる誰もがイントロの時点で歓喜の声を上げた「陽はまたのぼりくりかえす」からはじまったアンコール。かつてKjはこの曲を披露する度に涙を流していた。しかし、この日のKjは、優しく柔和な笑みを浮かべながら、ギターを鳴らし、唄い、オーディエンスを見つめていた。そこから最初期の楽曲「天使ノロック」、“こんな時代だからこそ夢を見よう”という言葉のあとに放たれたBOOWYのカヴァー「Dreamin’」、バンドとオーディエンスの関係性を称える「運命共同体」そして特別なライヴの大ラスを飾るのはいつもこの曲だ「Viva La Revolution」でツアーは幕を閉じた。
ツアーの途中で起きた震災を受けて、彼らはひとつのロゴを作った。そこに記されていたのは「BUILD AGAIN SINCE 3.11」という文字だった。Dragon Ashというロック・バンドが、体現するメッセージ。そう、僕らは必ずまた立ち上がり、築き上げることができる。
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■Dragon Ash HP