2011年3月9日に、シングル「ハリネズミ」でデビューした新人アーティスト、AZUMA HITOMIのデビュー後初となるLIVEが4月4日、SHIBUYA BOXXで開催された。シングル購入者がCDショップ限定で特典として先着でチケットを入手できるという形での完全招待制のLIVE。AZUMA HITOMIはメディアには顔出しをしない方針で活動している。CDのジャケットやいわゆるアーティスト写真は、マンガ西島大介によるイラストであり、ミュージックビデオは山口崇司(d.v.d)の手により、西島大介の絵がハイセンスなアニメーションになっていた。また「ハリネズミ」は山本寛監督のアニメ『フラクタル』(ストーリー原案・東浩紀)のオープニング・テーマであったりと、話題に事欠かない。その彼女が、デビュー後初めてファンの前に姿を現すということで、BOXXは超満員となった。
“じっけんしつ vol.0”と名付けられたこのLIVE。ネット配信レーベルMaltine RecordsのtomadによるDJで迎えられた観客は、異様なセッティングを目撃することになった。 ステージ中央にはシンセやコンピュータなどの機材に囲まれた、AZUMA HITOMIの立ち位置となる空間。その横に本人用のタムドラムがあり、ウインドチャイムも高くそびえる。一際異彩を放つのはステージ後方、横一列に、中空に並んだ4個のバスドラム。電子ノイズのSEとシンクロした挑発的なLEDの明滅の中、まずサポートミュージシャンのドラムス(城戸紘志/unkie)とベース(内垣洋祐/APOGEE)の2名が登場。左右に分かれて位置につくと、並んだバスドラムが四つ打ちを始める。自動演奏出来る装置が組み込まれているのだ。そこに1曲目「情けない顔で」のイントロが重なり出す。すると小さな影が上手から現れ、中央に立った。大きな拍手。ほとんどの観客が初めて目撃する、AZUMA HITOMIである。一挙に過熱する緊張感を孕んだハードな1曲目に続き、Maltine Recordsからリリースした「無人島」。鍵盤ハーモニカを演奏し、エレクトロやアコースティックという表面的な括りを越えたポップを堂々と鳴らす。曲の中心にある、伸びやかな彼女の歌の魅力がしっかりと伝わってくる。
『今日はいっぱい実験道具を持って来たので、何が起こるか目撃して下さい』挨拶の後、清冽な感覚の「east」へ。そしてトライアングルを持ち、シングル「ハリネズミ」のカップリング曲「おなじゆめ」。更に、曲の繋ぎでポエトリー・リーディングをカオティックにループさせると、強いインパクトを持つ「太陽をみていた」へと続け、じっくりと聞き込める中盤のハイライトを作る。デビュー曲「ハリネズミ」の前のMCは印象的だった。リリース直後に震災が起き、それ以来、自分にはこの歌が違う意味合いを持って聴こえる。作った側がそうなのだから、聴いてくれているひともそれぞれに違って聴こえているのではないか、と。ひとつの歌が、また別の意味でも《ポップス》になったということなのかもしれない。LIVEの「ハリネズミ」はパワフルな生命力が爆発していた。ステージ背面を埋めるLEDスクリーンに山口崇司による映像がシンクロする中、間奏でバスケットを取り出すと、中から“ハリネズミ(正体はタワシ)”を取り出し、次々にフロアへ投げ込む。そしてスティックを持ち、タムドラムを打ち鳴らす。そのままの勢いでクライマックスの「破壊者アート」に突入。リボン・コントローラー(スティック状の電子楽器)を取り出し、エアギター風の爆裂ノイズ・パフォーマンスで喝采を浴びた。ラストは「君は今孤独のみみせんをしてふとんの模様をなぞってる」。七色に発光をはじめた自動ドラムなど、まるで彼女を祝福するかのように明るく染められたステージで披露されたポップで希望溢れる歌は、LIVEの締め括りにふさわしかった。実験と呼ぶにはあまりにも実り多きLIVE。さまざまな楽器や機械に囲まれながらも、それらを軽々と圧倒してしまう力強いボーカル。そして予想以上にキュートなキャラクター。全ての観客が、新たなスターの誕生を確信したに違いない。
〔TEXT:津田真(クレーター通信)〕
【リリース情報】
NOW ON SALE!!
1st SINGLE「ハリネズミ」 (フジテレビアニメ「フラクタル」オープニング・テーマ)
ESCL 3648 1,223(tax in) EPICレコードジャパン
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