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紅白初出場のHYって?

音楽

11月24日に発表された、大晦日の「NHK紅白歌合戦」出場者。そうそうたる出場者の中、初出場5組に選ばれた中に、聞きなれない名前がある。“HY”だ。若い世代には絶大な支持をされている反面、世代によっては「HYって誰?」という声が上がっている。
そもそもHYは沖縄在住のインディーズバンドだ。HYというバンド名も、彼らの地元・東屋慶名(Higashi Yakena)が由来と、地元愛が強い。メジャーレコードメーカーのビジネス戦略とは異なり、これまでシングルは一切なく、アルバムしかリリースしていない。しかも結成10周年というのに、6枚のアルバムしか出していない“沖縄タイム”のマイペースっぷりだ。タイアップも数えるほどで、地上波のテレビにもめったに出てこない。

しかし、彼らの実績には確かなものがある。もともとストリートライブからスタートしたライブバンドの彼らは、まず沖縄でその名を知らしめた。2001年、沖縄限定でリリースした1st ALBUM『Departure』は、瞬く間に10,000枚を完売。一躍注目を浴びた彼らの元に、当時20社を超えるレコード会社が足を運んだというが、HYは自らの道を歩むため、インディーズで音楽活動を続けることを選んだ。その後、2002年に『Departure』を全国発売、翌2003年にリリースした2nd ALBUM『Street Story』が、インディーズ史上初のオリコン総合チャート初登場1位、そして4週連続1位という記録を打ちたて、ミリオンセラーを達成した(現在135万枚)。その後リリースした『TRUNK』、『Confidence』でも初登場1位、いずれも70万枚以上のセールスを記録している。もちろんどれもアルバムだが、それぞれ収録された「AM11:00」、「てがみ」、「Song for・・・」、「NAO」などは、年間カラオケランキングで、リリースから5年以上経った今でも上位に入る名曲が生まれている。そして最も耳に新しい曲は、2008年にリリースした『HeartY』に収録された「366日」だ。映画&連続ドラマ『赤い糸』の主題歌に抜擢され、彼らの初めてのタイアップとなった。男女ツインボーカルのHYの紅一点・仲宗根泉が歌い上げるラブ・バラードのこの楽曲は、女子高生を中心に爆発的なヒットとなり、現在配信で450万ダウンロードを超えている。動画サイトYou Tubeでは現在950万回を超える視聴を誇っている。

そしてHYは、ライブにも定評がある。結成当時から続けてきたストリートライブから始まり、2003年には全都道府県ライブハウスツアー、2004年には2度目の全都道府県ホールツアー、2006年には日本武道館・大阪城ホールを成功させた。翌2007年にはカナダ・アメリカツアーを行ったと思えば、2008年にはホールツアー、その後には横浜アリーナ・大阪城ホールといったアリーナツアーも成功させた。今までのワンマンツアーのライブチケットは即日完売、常にプレミアチケットだ。ストリートでもアリーナでも、変幻自在に音楽を表現するHYだが、今年3月からは全都道府県162本のライブハウスツアーを行い、来年3月までに8万人を動員する予定だ。ちなみに、紅白の記者発表を欠席したのは、109本目のライブ当日だったからだ。

 今年1月にリリースした『Whistle』は、結成10周年を迎えた彼らにとって、この先の10年に向けた、新たな意欲作となった。彼らの原点であり、今も愛する地元沖縄と真剣に向かい合う楽曲「時をこえ」が生まれたのだ。仲宗根泉がおじぃ・おばぁの話を聞いたことがきっかけで生まれたこの楽曲は、聴いた人々に静かな感動を生んだ。「昔の話を聞いたのさ・・・」から始まるこの曲は、沖縄地上戦を生き抜いて繋がれた命の尊さ、そして沖縄で受け継がれる“命どぅ宝(命こそ宝)”の思いが込められている。命の尊さ、そして命の繋がりという、今の日本で薄れかけた心が強く刻まれている。

 そんな彼らの音楽活動のドキュメント『僕らが伝えなきゃ 〜HY沖縄から“命”を歌う〜』が、今年の8月15日にNHK特番で放送された。1年以上に渡る長期取材から構成され、番組制作を行ったNHK沖縄支局からの全国放送となった。放送後、世代を越えて大きな反響を呼び、1,000通を越えるメッセージが届けられたり、再構成の拡大番組が放送されたりするなど、HYの確かな思いが伝わっている。

 決して派手な印象とは言えない彼らだが、沖縄にしっかりと足をつけ、等身大の音楽を歌い続けていることが全国のファンに受け止められ、息の長い1つの大きな力に繋がっている。紅白歌合戦の“歌でつなごう”という今年のテーマ、実はHYに一番ふさわしいのかもしれない。
<関連リンク>
HY オフィシャルサイト

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