泉:大阪生まれの岡山育ちです。育ったのは岡山の蒜山高原というところで、別名、西の軽井沢と言われる場所なんです。高校は倉敷の高校に寮から通って、大学進学をキッカケにして東京に来て、数年が経ちデビューしました。
泉:6歳の頃には、音楽の世界に行きたいと思っていましたね。当時はトップ・アイドルだったSPEEDさんに憧れていました。もともと私は、必要とされたいとか求められたいという気持ちが人一倍強いのだと思います。人に求められる人になりたい、そういう気持ちから、自分の持っているこの土台で何をやったら求めて貰えるかを考えた時に、歌をやろうと思いついたんです。だから容姿や性格や能力が今と全く違っていたら全く別のことで、でもやっぱり人前に出ることを目指していたんやろな、と思います。そういう目的を持っていたので、大学進学とはいいつつ、実は東京に行きたいから東京の大学を選んだんです。
泉:私が育った場所は岡山の中でもリゾート地で、すごく田舎なんです。それこそSPEEDに憧れてアクターズ・スクールに行きたくても、そんなもんないんです(笑)。それどころか電車も通っていないし、小さい時にはネットも今ほど普及してなかったから子供が触れるものではなかったし、つまりオーディションの情報も手に入れられなかったんです。そもそもテレビのオーディション番組も電波がきてなくて映らなかったし、「ASAYAN(アサヤン)」っていうのがあるらしいみたいな感じだった(笑)。そういう環境だったので、東京に攻めていかないとダメやった。
泉:一瞬、軽音楽部に入りました。でも、私はスポーツとかでも運動神経はそこそこよくて、泳いだり走ったりは得意なんですが、チーム・プレイが凄く苦手なんです。だから「バンドってカッコエエよな」って組んでみたものの、「この曲やりたくないんだけど」とか(笑)。バンドって、その中でのバランスが難しいじゃないですか。軽音楽部は直ぐにやめて、放課後ひとりでボイス・トレーニングに密かに通っていました。
泉:大学進学、つまり18歳の時に東京に出てきたのですが、出てきたての頃は「東京に来たら、なんとでもなるんちゃうか」という気持ちだったんです。もう典型的な田舎モンの考えで「東京は凄いから、東京に出さえすればこっちのもんや」みたいな気持ちがあった。でも一年目何も起こらず、二年目上手くいかず、みたいな感じで、どんどん時間だけが過ぎて行きましたね(笑)。
泉:ちょうど一年位前にオーディションに受かってデビューしたので、23歳の時ですね。それまでは悶々とし続けていた。そもそも最初にオーディションといわれるものを受けたのが中学二年生で、デビューが24歳になってすぐだったので、通算で10年近く、悶々としていたことになります。
泉:正直に言うと、オーディション直後は嬉しい気持ちが凄くあったのですが、嬉しい中にも始まってしまうと時間が無限に与えられるわけではなく、定められた期限の中で結果を出していかなくてはいけない。だからオーディションに受かって、何も考えずに嬉しかったのは30分位ですね。すぐに期限がスタートして、制限時間を刻む時計がチクチク動き出した。その中でどれだけ頑張れるかと、常に考えるようになりました。つまり焦りやすく、不安を持ちやすい性格なんです(笑)。そういう性格が歌詞の内容とか歌の表現方法につながっているとは思いますが、当人としては、気持ちはあんまり休まりません(笑)。
泉:最終審査で、今度の4枚目のシングルになる「カス」を歌いました。
泉:温めていました(笑)。
泉:ブルースと言っていただいて嬉しいです。もともとブルースが好きで、普段聴くのも憂歌団さんとか、トータス松本さんとかが好きなんです。でもデビュー曲もアレンジが華やかで都会的な感じなので、「カス」とは全く印象が違うと捉えられがちですが、歌詞を見れば、根本的に言っていることとか、そこに常にある感情は全く同じなんです。ですからこれまでの3作の歌詞を並べて貰うと、共通点が見えてくると思います。
泉:印象はそれぞれ違うかもしれませんが、「カス」は、より私の素に近いのかもしれません。この曲を書いた時のことや関西弁で歌っていること、そしてこの曲でオーディションのグランプリを頂いたので、そういう意味では強い思い入れがあって、「この曲で行くぞ」というやる気や気力はしっかりあるのですが、でも力んでいるのではなく、すごくリラックスしています。この曲は気負わずに歌えるんです。この曲のパワーを信じていますし、しっかり広がっていくことを願っています。
泉:21〜22歳の頃に作ったもので、当時はデビューがどうのこうのという話もなくて、本当に曲を作り出してから間もない頃のものです。曲を作るということに関しては、私が「カッコイイな」と思うイメージがあって、それは例えば「昔から、曲が溢れてくるんです」みたいなのがカッコイイと思っていた。だからそう言いたいんですが、実は私はそういうタイプではない。私は歌うのがものすごく好きで、人前に出たいという気持ちもあった。でもなかなか上手くいかずに、最初は正直に言うと「誰か、いい歌を作ってくれないかなぁ」と思っていた。でも誰も作ってくれないので「これは自分で作らにゃ、しゃあないんやな」って思って、そこから作りだしたので、「もう十年作ってますねん」っていう感じでもない。しかも作り出してみたものの上手くいかずに、余計くすぶっていくし、歯がゆくてという毎日でした。そんな時に、もう曲を作ろうではなくて、今の気持ちを吐き出そうという気持ちで鍵盤に向かって、泣きながら作ったのが「カス」なんです。
泉:そうです。
泉:確かにギターによく合う楽曲ですが、作ったのはピアノです。
泉:例えば田舎モンが夢を追って東京に出てきても、東京には才能がある人が集まってくるじゃないですか。そこで田舎モンとしては自分の実力のなさとかにも少しずつ気づいていって、だんだんと予防線を張るようになっていく。ちょっと良い話があっても「いやいや、何時流れるか分からへん」みたいな(笑)。そういう感じでマイナス思考が進んでいって、疑り深く、なかなか信用しないマイナスな性格になっていく。でも最低限、自分だけは信用するという意味でも、どこかでマイナスからプラスに切り替えないと一歩が踏み出せないのです。そういうエイっていう、腹の底から絞り出す一歩みたいな気持ちを歌っているというところでは、「スクランブル」も「カス」も同じなんです。
泉:私自身、落ち込んだ時に、あまり明るい曲は聴かないんです。むしろ暗い曲で落ち込みを加速させていきます(笑)。「なんてしょうもないんだ、なんてダメな人間なんだ」と突き詰めていくと、あとは浮いていくしかしょうもなくなる。不安になった時も「大丈夫、大丈夫」って、表面だけを撫でる感じで浮上すると、実は原因が解決していないので、油断した時に不安がぶり返してくる。それが怖いので、しっかり居直る、開き直るために、しっかり落ち込むのが大切で、「カス」はそういう構成になっています。
泉:「カス」は同時にできました。曲を作る時は、言葉に音が付いているっていうようなのが好きなんで、この曲は喋りながら作ったという感じですね。
泉:言葉をためているノートがあって、それは感情の垂れ流しをメモしてあるもので、他人には絶対に見せないノートです(笑)。それに手書きでメモしておいて、それを見ながらパソコンを使って歌詞を書いていきます。手元からノート、キーボード、モニターと言う感じで並んでいて、言葉を打ち込みながら、メロディも口ずさみながら作りました。言葉と音とメロディ、あるいはリズムなんかも、全てのことがぐちゃぐちゃと同時進行で動きながら、最終的に形になっていくという感じです。
泉:さて、どうでしょう(笑)。未完成のものもありますが、それも凄く不思議で、半分寝ているような時に、ふっと続きが浮かぶ場合があります。それを必死で起きてメモして、力尽きて寝て、翌朝、メモを頼りに完成させるということもありますね。
泉:確かに私の言葉は関西弁に寄っていますね。特に意識はしていませんが、アルバムとかで大阪のブルース・ベストみたいなのはよく聴いたりしていた時期があります。それも間寛平さんとか、トミーズの雅さんとか、やしきたかじんさんが歌っているのを好んで集めたりもしました。
泉:標準語で言うと、ドラマチックになりすぎるという場合がありますね。汗臭さがないというか、凄く綺麗で都会っぽい感じになります。今回の「カス」は私の素が出ているので、「私は田舎モンや」っていう意識が凄くあるので、その意味で関西弁になったのかもしれませんね。
泉:逆にもっと東京弁を喋れたらいいなぁとは思います。普通の会話をしている時は、東京弁がちょっと照れる(笑)。
泉:岡山は中心に出て行くと広島弁に近くなる。「わい」とか「わやじゃなぁ」とか「何をけちゃげなこといいよんなぁ」とかそういう喋り方ですが、それに比べると蒜山の言葉は若干お上品です(笑)。
泉:今まではマイクを持って、ボーカルに徹していましたが、ピアノの弾き語りもお見せしたいとは思っています。昔は下北沢のバーとかで歌っていたこともあるんですよ。薄暗くて、煙草の煙が漂っていて、カクテルの氷を削る音なんかが聴こえる中で、この曲を歌ったこともあります。
泉:私も狭い空間をイメージするような曲が好きなので、そういう場所で歌うのも面白いですね。いつかもっと年をとって、お酒を飲みながら豪快に笑って、まわりも機嫌がよくなるような飲み方をしていて、ちょっと気が向いたら歌う、みたいなおばちゃんになれたらカッコイイですね。
泉:「カス」は映画『ヨコハマ物語』の主題歌になっているのですが、その中にライブ・シーンがあるので、そのシーンを組み合わせた形になっています。ライブ・シーンも入りつつ、撮影現場で本編の撮影の合間にナチュラルな形で、私とカメラマンさんと監督さんの3人で撮影した映像が入ってきます。今までと違う、素の、ホームビデオで撮ったようなザラついた映像を狙いました。リラックスした、ゆるーいテンションの中で、ふらふらと街角を歩いたりして、今のナチュラルな泉沙世子の表情をお見せすることができました。今までの中では、一番好きな感じに仕上がりましたね。
泉:私がいないと物語が成り立たないような重要な役です(笑)。しっかりと台詞を頂いて、出させていただきました。映画自体はほのぼのとしていて、奥田瑛二さんが仕事を定年になって、その当日に奥さんも亡くしてしまい、呆然としているところから、色々な場所で挫折した人たちがひとつの家に集まってくるという話です。そして、そこからみんなが再生していく物語です。私は普段、映画を沢山見るのですが、『ヨコハマ物語』は構えずにすっと入ってくる感じで、受け入れやすい、共感しやすい映画だと思います。
泉:現場ではプロの俳優さんがいてはるので、すごく引っ張ってもらえました。例えば私が怒る場面でも、相手の俳優さんが本当にムカつく顔をしはるんです(笑)。だから自然に「ムカつくわ」ってなって、そういうふうに助けてもらって、楽しく撮影出来ました。しかも一軒家での撮影だったので、楽屋がなくて、使わない子供部屋みたいな部屋に荷物が詰まっていて、その狭いスペースの中にみんなで詰め込まれていました。そこで待ち時間を過ごしていたので、奥田さんもすぐそこにいるみたいな、私にとっては特殊な空間でした。それまではテレビで見ていた俳優さん、女優さんたちなので、最初は緊張して構えていたのですが、撮影が進むと共に仲が良くなっていきました。以前は、まさか自分が演技をするとは思わなかったけど、凄く楽しかったです。
泉:一杯ありますので迷いますが、例えば『パリ、テキサス』はいい映画でしたね。私も人に勧められて見たのですが、テキサスを放浪していた男が自分の妻子と再会し、そして別れるといったロード・ムービーです。人間のズルいところや醜いところを隠し過ぎていなくて、すごくリアルでいいです。見ていて「わぁ、いややわぁ。いややけど、こうやんな」っていう感じですね(笑)。そういう映画が好きです。
泉:デビューして一年経ちました。最初は、私の中では歌のみというイメージしかなかったのですが、今回は演技もさせてもらって、あと絵を描くお仕事があったりとか、さらにはジャケットの写真撮影とかPVの動画撮影とか、色々なことを経験させてもらって、非常に刺激的な日々です。これらの経験も、最後には全部を歌に返していけたらなぁと思うので、これからもっと変わるから、見守って応援して下さい。
02. グレーゾーン
03. カス(instrumental)
04. グレーゾーン(instrumental)
シングル
発売日:2014.1.15
KING RECORDS
KICM-1485
¥1,050(税込)
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■泉 沙世子の歌詞をもっと見る
Profile
泉 沙世子(いずみ さよこ)
10月28日、大阪府豊中市生まれ、岡山県蒜山高原育ち。
キングレコード創業80周年記念企画として2012年に開催された「Dream Vocal Audition」にて、グランプリを受賞。
【Discography】
■2012.11.21 1st シングル「スクランブル」
映画『カラスの親指』イメージソング。MV に大人気のネガティブイケメンモデル栗原類さんが出演。
■2013.1.30 2nd シングル「境界線/アイリス」
映画『さよならドビュッシー』主題歌(境界線)
「神戸コレクション/東京ランウェイ」2013 SPRING/SUMMER テーマ曲(アイリス)
■2013.6.12 3rd シングル「手紙」
映画『二流小説家-シリアリスト-』主題歌。MV に上川隆也さん、武田真治さんが出演。
【LIVE情報】
12/24 19:30〜イクスピアリ・クリスマス・ワンダーランド“クリスマス・スペシャルライブ”(場所:イクスピアリ2F セレブレーション・プラザ)