泉 沙世子はキングレコードが創業80周年記念企画として講談社とタッグを組んで行った〈Dream Vocal Audition〉で、1万人を超える応募者の中から見事グランプリに選ばれ、新世代の歌姫としてデビューするチャンスを手に入れた、まさに実力と強運を兼ね備えたシンデレラ・ガールだ。
ついこの間まで、夢を追いかけて東京にやって来た一人の少女にすぎなかった彼女は、このグランプリ受賞を機に、昨年末、「スクランブル」でメジャー・デビュー。シンガー・ソングライターとしての才能を開花させた同曲は、いきなり阿部寛、石原さとみの主演映画『カラスの親指』のイメージ・ソングに抜擢され、注目を集めることとなった。
そんな彼女の真骨頂は、ただ歌うだけではなく、届けたい言葉を選び、メロディーに紡ぐこと。その思いがいかんなく発揮されたセカンド・シングル「境界線」は、デビュー作に続いて、本年1月公開の映画『さよならドビュッシー』の主題歌に選ばれた。さらに両A面の「アイリス」は「神戸コレクション/東京ランウェイ」2013 SPRING/SUMMER テーマ曲に決定している。まさに2013年上半期のミュージック・シーンで、大注目の躍進ぶりといっていいだろう。
泉 沙世子が紡ぎだす楽曲には「苦しさ」や 「せつなさ」、「もどかしさ」が溢れている。それは芯の強さを窺わせる言葉たちと深い想いを持った眼差し、心地よいハスキーボイス、そして情感溢れ出すヴォーカルによって、そっとやさしく寄り添うようなライブ・パフォーマンスへと結晶していく。
伸びのある高音で情感たっぷりに歌い上げる「境界線」は、「頼ってもいいから もたれてもいいから」「本当のあなた全て見せたって 私は離れないよ 絶対離れないよ」と、くじけそうな心に寄り添い全てを受け止めてくれる癒しのスローバラード。一方、アップテンポでポップな仕上がりの「アイリス」は、「もどかしい足踏みばかりしている」「臆病な私」が、「諦めたりしない 負けたりしない いつの日か 描いた夢 この手に掴むために」と心を奮い立たせていく、優しい応援ソングだ。これら歌の中にちりばめられた言葉たちに共通しているのは、大切な友達のようにそっとそばに寄り添ってくれる暖かさや力強さがあること。そこには歌うことを愛し、信じ続けてきた彼女のピュアなソウルが宿っている。
因みに本年1月公開の映画『さよならドビュッシー』は、祖父の莫大な遺産を相続することになった天才ピアニストの少女を主人公したミステリー。「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山七里の小説を、橋本 愛主演で贈る話題作だ。主題歌「境界線」とのコラボがどのような世界観を描くのか。こちらも見もの聞きものであることは間違いない。
【プロフィール】
泉 沙世子 <いずみ さよこ>
1988年10月28日生まれ。大阪府豊中市生まれ、岡山県育ち。父、母、ウルフルズをこよなく 愛する“うたうたい”。