——まず、初のドラマ主題歌のオファーを受けた心境から聞かせてください。
音楽活動をしている上で、ドラマのオープニングテーマを歌うことは、当たり前のように持っていた夢の一つだったんですね。でも、聞いた時は「やったー!」っていう喜びよりも、ドラマを映えさせる曲を作らなければいけないっていう使命感の方が勝っていて。せっかく頂いた貴重なお仕事に応えられるように、頑張ろうって冷静に思いました」
——ドラマ側から何かリクエストはありましたか?
「疾走感があって、ちょっと懐かしい感じ」っていうことを伝え聞いておりました。もともと懐かしさのある曲が好きなので、自分が好きなものと近いもののご依頼でよかったなって思いましたね。
——書き下ろしになってますが、楽曲制作はどのように進めていきました?
ドラマの資料と相関図、数話分の台本をいただきました。最初は「ドラマに合うように作ろう」って言う冷静な責任感が大きかったんですけど、台本を読んでいるうちに、そういうのに関係なく、「ああ、もう作りたい作りたい」っていう思いが溢れてきて。結果、本能的に作れたと思います。台本を読んでいるだけで、本当に頭の中でドラマが浮かんできたし、音楽を聴いてるみたいに体がリズミカルに動いてしまうんですよ。めちゃめちゃ面白いドラマなので、アイデアが溢れすぎて、どうしようか迷いましたね」
——デシさんが台本を読んで感じたこと、共感した部分はどんなところですか?
ムロツヨシさん演じる主人公の狛江さんは、自分の言いたいことをあまり言えないで、力のある強い人に丸め込まれてしまってるような気がしたんです。自分もそういうことがあるし、学校や会社でも、権力のある人と意見が違ったら、自分の意見を言うことで自分の立場がなくなってしまったりするじゃないですか。たとえ言いたいことがあったとしても、言った場合のリスクを考えたら、やっぱり言わない方がいいって思って言えないことがあるなと思って。そういう社会の中で生きている方が主人公になって、毎日を戦っていく。きっとみんなの心に刺さるし、いろんな人の背中を押すようなドラマだと思いました。
——デシさんの中にも狛江さんはいますか?
超いますね。あははははは。人と意見を合わせて、家に帰って一人になってから後悔した経験はいっぱいあります。なんであの時、自分が思ってたことを言わなかったんだろうって。でも、人と合わせてる時は、合わせてしまってることに気づいてない場合もあるんですよね。我に返った時に、「あの時、絶対に威力に押しつぶされていた」って気づく。相手の圧に負けて、自分の考えが言えなかったなっていうことがありますね。
——先輩後輩、上司や部下という縦社会では避けて通れない部分がありますね。
そうですよね。私は「嫌だな」って思った時は曲にすることができるし、ツイッターやSNSで発散できる人もいると思うんですけど、ずっと溜め込んでしまう人は絶対に辛いだろうなって思って。「自分は周りからおとなしいって思われているけど、おとなしい人を演じてる」部分があると思っていて。人が表面的に見せている部分と、心の中で思ってることって、やっぱり全然違うんだなって思っていて。そういう思いも込めて作りましたし、「あ、今、自分が思ったことを言えてないな」っていう状況になった時にこの「勘違い心拍数」を頭の中でループしていただきたいなと思います。言いたいことが言えないときに自分の気持ちを鼓舞する勝負曲になったらいいなと思います。
——モチベーションを上げるパワーソングっていうイメージなんですね。でも、最初はラブソングなのかな? と思いました。
あははははは。自分の心にストレスや刺激があった時って、動悸がしてくるじゃないですか。リアルに動悸を感じなくても、焦ったり、心が痛くなったりする時って、ドキドキしてる状況なんだなって思って。そういう他人からのマイナスな<ドキュンドキュン/バキュンバキュン>が降りかかってきた時に、ただ痛いって思うだけだと、辛くなってくるから、恋に勘違いさせて、プラスに持っていきたいなと思って。恋に落ちた瞬間ってキラキラしてると思うので、マイナスの<ドキュンドキュン/バキュンバキュン>って感じた時に、あ、今、自分は恋に落ちたんだ! って思っちゃいたいなと思ってこの歌詞にしました。
——嫌なことを言ってきた相手に対して?
全く別の次元ですね。よくない心拍数になった時に、自分で勘違いして、いい方向に自分を思い込ませるようになりたいっていう感じです。恋に落ちたときは、いろんなものが楽しく見えるから、それを利用して、マイナスな感情を忘れようってことですね。
——確かに聴いてる間に嫌なことを忘れちゃうような爽快感があります。サビの最後には踊りながら一緒に「イエイ!」って一緒に言いたくなリますし。
ありがとうございます。<イエイ!>は歌ってる最中に言いたくなってつけましたね。
——サウンド面ではどう考えてましたか?
私、これを作ってる最中に、ずっとモー娘。さんの「LOVEマシーン」や「恋愛レボリューション21」、DJ OZMAさんの「アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士」のように、すごいポップで、みんなでわーいって騒いだり、体がめちゃくちゃ踊る曲にしようと思ってたんですよ。でも、サビが<ドキュンドキュン/バキュンバキュンさせて>だから、アレンジもポップにしたら、ポップ×ポップでくどくなっちゃうんじゃないか説が出てきて。もっとセンシティヴな感じにするのはどうだろうかっていうアイデアをいただいて。私、今まで作った曲も、あえて違う方向性のアレンジを形作るっていうのを考えたことがなかったんですよ。自分が作った歌詞、メロディと同じ線上にあるものしか作ってこなかったので、やってみたいって思ったんですね。そこで、美濃(隆章/toe)さんにサウンドプロデュースをお願いしまして。
——アレンジを受け取ってどう感じました?これまでにないニューウェーブ〜ポストロック感のあるクールなバンドサウンドになっていて、ちょっと新鮮でした。
最初は動揺したんですけど、化学反応ってこういうことなんだな! って、私の中で革命が起きた感じでした。ポップポップを重ねると、サビの部分は繰り返しが多いので、お腹いっぱいになっちゃってたかもしれないなって思うんですけど、アレンジによって、本当に何回聴いても飽きなくなった。深夜の高速も走りたくなるし、朝の電車の中でも聴きたくなるし、本当にすごいなって思いました。
——確かに都会のナイトミュージック感がありますね。歌入れはどんなアプローチで臨みました?
私はニュアンスとか感情を歌に乗せがちなんですよ。でも、今回はアレンジに合わせて、サビも<ドキュンドキュン/バキュンバキュン>だから、あまり感情を乗せないほうが、逆に伝わるんじゃないかと思って。暑苦しくなっちゃうと、くどくなっちゃうので、すごく冷静に歌うことに特化しました。あと、私は歌う時に、ちょっと後ろにためてしまう癖があったんですけど、今回はインテンポでやろうと思って。歌いながらすごい心地よかったし、いろんな発見がありましたね。冷静に歌ってみても、感情を入れてる時と同じくらい、心の中にはふつふつと燃えるものがあった。いつもより抑揚はつけていないけれども、内に込めたものを燃やしながら歌っておりました」
——ドラマのオンエアが始まりましたが、ドラマに歌がついたのを見て、ご自身ではどう感じました?
私が見る限り、すごくハマってました(笑)。ぴったりだと思います。1話では、地方に飛ばされたムロさんが飛行機で隣に座ってきた人の肘掛を取り合いして、ムロさんの分の肘掛も占領されてしまうシーンで流れたんですよ。私は台本を読んでる時にそこに心を打たれてしまって。あのシーンをイメージして書いたから、そこで一緒に流れてるのが本当に嬉しくて、感動しましたね。
——(笑)どうしてあの小競り合いのシーンにグッときました? お金持ちのエリートサラリーマンとムロさんが対比になってるシーンですよね。
生まれてくる環境は自分では選べない。そういう意味では、人は平等ではないって考えたんですよ。でも、平等じゃないながらも、みんな投げ出すことなく、朝、電車に乗って働いている。それは、とても強くて美しいことだなって思って。そう言う思いも込めて書きましたね。そして、2話目からはOP映像と一緒に流れるんですけど、<ドキュンドキュン/バキュンバキュン>のところも、拳銃で撃たれたように弾ける感があるし、デザインもレトロポップでカラフルな色彩に合わせてくださってて。何回も見たいですし、毎週のオンエアが超楽しみです!
——ドラマを観て、デシさんを知ったという方にはどう届いて欲しいですか?
ドラマが本当にリズミカルで、この曲も体が動いてしまうので、ドラマのイントロのような気持ちで全てを通して楽しんでいただけたらいいなって思いますね。この曲を聴いたら、ムロさんや古田新太さん、田中圭さんが、愛を持って生きているシーンが浮かぶような曲になって欲しいなと思います。
——夢を/愛を育てていきたいと歌ってますもんね。
そうですね。まず、自分に対して愛を持ってたら、人に対しても愛を持てる気がするんですね。自分がする発言に関しても尊重できるし、その発言を受け取った人も愛を感じれる。そうやって連鎖になっていく気がするし、夢や情熱を持って生きていきたい。全てのものに対して大切だって思える心をベースで生きていけたらいいなって思いを込めております。
——最後に今後の目標を聞かせてください。本作の発売日には21歳になってますね。
とても良い曲ができたので、まずは「勘違い心拍数」をたくさんの人に聴いていただきたいと思います。私は音楽に救われながら暮らしているんですけれども、この曲が少しでも誰かを応援できる曲になったらいいなと思います。そして、今回のレコーディングでは、インテンポで歌ったり、アレンジを新たな方向性にしてみたり、いろんな挑戦をできたので、もっとやってみたいという気持ちがあります。今、いろんな曲を制作しているので、作詞作曲の状態から新しいチャレンジを考えながら、たくさんの曲を作っていきたいなって思います。
取材・文/永堀アツオ
【にゃんぞぬデシ LIVE情報】
にゃんぞぬデシ ワンマンライブ
ネコの集会 ~下北沢でいい猫フェスタ~
【日時】2019年11月22日(金)
【会場】 東京・下北沢GARDEN
【開場 / 開演】 19:00 / 19:30
【料金】 前売り:3,300円 当日:3,800円 ※ドリンク代別
★お友達割引★各プレイガイド一般発売で2枚以上まとめてご購入の場合、1枚あたり3,000円となります。
【チケットご購入・予約方法】
- オフィシャル先行(整理番号A)
2019年8月4日(日)21:00~8月18日(日)23:59
受付URL:http://w.pia.jp/t/nyanzonudeshi-of/
- にゃんぞぬデシ手売り(整理番号B)
- 各プレイガイド一般発売(整理番号C)
2019年8月24日(土)~ ぴあ、イープラス、ローソンチケット、LINE TICKET
【リリース情報】
にゃんぞぬデシ デジタルシングル「勘違い心拍数」
※テレビ東京 ドラマ24「Iターン」(毎週金曜深夜0時12分)のオープニングテーマ
(公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/iturn/)
8月10日(土)AM0:00発売
配信サイト:https://nyanzonudeshi.lnk.to/uxNJD
【にゃんぞぬデシ プロフィール】
小学5年生の時、映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」に衝撃を受け、“エンターテイニャーになりたい”と衝動が発火。
中学2年生の時、ギターを購入し曲作りを開始。
高校2年生の時、下北沢mona records主催のオーディションでグランプリを獲得し、1stミニアルバム「はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。」をリリース。
19歳となった2018年、2ndミニアルバム「魔法が使えたみたいだった」をリリース。
何気ない日常から生み出される甘酸っぱい歌詞、1度聴いたら頭に居座る印象的なメロディー、猫もうっとりする澄んだ歌声が特徴。
【関連リンク】
にゃんぞぬデシ オフィシャルサイト: http://nyanzonudeshi.com/
Twitter: @nyanzoudeshi
Instagram: @nyanzonudeshi