7月10日18時半、ここ最近ずっと降り続いていた雨もあがり、梅雨の晴れ間の名古屋の街角、夕暮れ時の路上に響き渡るMASHの歌声に誰もが足を止めた。MASHは2006年にラッパーとしてソロデビュー。今ではマイクをギターに持ち替えてソウルフルな歌を届け続ける名古屋のシンガーだ。7月10日は、彼が39歳最後の日。そんな日に約10年ぶりとなるシングルを発売!
40歳を目前に新たなスタートを切る場所に彼が選んだのは路上でのライブだった。
MASHが歌い出す前から、平日だと言うのに約150人のオーディエンスが彼の登場を待った。
18時半。MASHが登場と共にギターをストロークし歌い出すと仕事帰りのサラリーマンからOL、学生らが次々と足を止め、その熱く優しい歌声に吸い寄せられるように人だかりができた。ギターを弾いてラップをしたかと思うと即興で目の前の状況や想いを紡いでいくその姿は現代の吟遊詩人そのものに見えた。そして「俺らこんな夜を探してた!」というMASHのライブでは定番のコール・アンド・レスポンスにそこにいる誰もが声を合わせて合唱し身体を揺らした。ライブ終盤で噴き出した汗もそのままにポツリポツリと語り出す。「明日で40歳。人は生きているのではなく、生かされているんだと最近強く思います。そして僕も今は歌っているのではなく、歌わせていただいているのだと感じます。そして40歳を目前にして改めて思うのは人生のキャリアは年齢で決して区切れるものではないんだと言うこと」そんなMCの直後、彼が歌い出したのはこの日発売のタイトルトラック「たった16小節の夢」。
そして、最後にシングルの一曲目に収録の「星が綺麗な夜に」を美しいアルペジオの上で歌い切ると、町の空には初夏を思わせるような風が強く吹いた。そしてふと見上げた雲の隙間には、キラキラと星も輝き、まるでMASHの新たな門出やそこにいるみんなの人生祝福するように思えた。気がつけば300人を越す人が彼を囲み、彼の歌声やメッセージに涙し酔いしれた。
「後から分かることばかり…」
彼の新曲の歌詞にあるように、人生はその時だけでは分からないことばかりだ。彼の歌を聴くとどんな些細な出来事にもきっと意味があるのではないかと思ってしまう。そして彼の挑戦は続く。現在名古屋から京都と続いている弾き語りツアーはいよいよ日本を飛び出してアメリカのポートランドへと続く。アメリカの観客は彼の歌声に何を感じるだろう。ツアーファイナルは8月3日の東京。ぜひ生の歌を聴いて欲しい。
Live Photo by Kanji