2017年10月8日(日)、ロックフェスティバル「ビクターロック祭り2017大阪×MBS音祭~supported by uP!!!」が昨年に引き続き、MBS毎日放送と共催で、8000人の観客を集め大阪城ホールにて開催された。
NHKドラマ10「この声をきみに」への出演、11月にニューシングル発売決定と歌に演技にフル回転の大原櫻子。役者としての評価も高く、サントリーコーヒー「BOSS」の新TV-CMへの出演で一躍話題となっている孤高のアーティスト竹原ピストル。スモーキーヴォイスが異彩を放つ、21歳のシンガーシンガーソングライター藤原さくら。4年ぶりとなるオリジナルアルバム「LOVE YOUR LOVE」を7月にリリース、全国ツアー中のLOVE PSYCHEDELICO。「7月26日にリリースした13thシングル「ずっと、ふたりで」が配信マーケットなどでロングヒット中の家入レオ、の豪華5組が競演!
さらに、9月27日より配信限定でリリースされ、iTunes、レコチョク、moraなどの各配信サイトで週間チャートを首位10冠を獲得した「家入レオ×大原櫻子×藤原さくら」3人のコラボレーションによる「恋のはじまり」もそんな話題沸騰の中、サプライズ披露され大盛況のうち終了。まさに2017年の音楽シーンを大きく盛り立てた5アーティストによる豪華共演の1日となった。
<ライブレポート>
「大原櫻子」
開演前のちょっとした緊張感が漂うなか、伸びやかなアカペラを響かせ、一気に観客を舞台に集中させるという大胆な登場! そしてそのまま響き始めたのはデビューシングル『明日も』だ。このポップナンバーに気分良くのせられると、さわやかな『青い季節』で、さらにテンションを上昇させる。というのもこの曲、クラップはもちろん、ギターから持ち替えたタオルでタオル回しをリード、さらに子犬のようにキュートな『Come On!』のシャウトと、楽しみどころ満載だから。わずか2曲ですっかり彼女のペースだ。そして「最高の1日にしましょう!」という元気の良いMCから、空気を変えてエモーショナルなメロディが印象的な『マイ フェイバリット ジュエル』と『瞳』へ。「マイ フェイバリット ジュエル」の語りかけるような歌声は心に幸せの花を咲かせ、『瞳』の大切に紡ぎ出される一言一言と、目を閉じて歌い上げる彼女の姿が胸を締め付ける。動きを止めてじっと聴き入る人も多い。そして再びアリーナと会話するようなリラックスムードのMCを挟む。11/22(水)リリースの新曲について「歌って!」のリクエストに「今日は歌わないかな~(笑)」と、まるで友達と話しているよう。10/18(水)にあるツアーの大阪公演が楽しみになるばかりだ。そして「拳を上げて私に付いてきてくださいっ!」と、ラストスパートへ。まずは「Oi! Oi!」のコールを起こしてアグレッシブなロックの『Ready Go!』。ボーカルが挑発的になったかと思えば、煽りまくり、そして走りまくり! なんと衣装のスカートが破れる程の張り切り具合だ!! 「(スカートが)大変なことになってる~(笑)」と本人も会場も大ウケしつつ、「一緒に踊ってください!」と呼びかけ、振り付けのレクチャーを入れてから最後の『踊ろう』に。大阪のファンは飲み込みが早いのか、会場全体の振りもバッチリキマって、お祭りムードも満点! しかも曲の前向きなメッセージに背中を押されて高揚感もたっぷり。最後は勢いに乗って全員の大ジャンプで締め、6曲とは思えない聴き応え十分のライブを終えた。 Text by 服田昌子
「竹原ピストル」
頭にはタオルを巻き、スタッフTシャツを着た飾らない出で立ちでステージに姿を見せた竹原ピストル。アコギ1本でライブ活動を続ける彼が、一期一会の大切さを伝える『ドサ回り数え歌』でライブがスタート。今日の出会いに感謝する彼の気持ちを現しているかのようだ。「大阪のみなさんお世話になります!」と広く会場を見渡し、力強いカッティングとともに、生きろ!と背中を押すパワフルな歌声を響かせていく。「聴いたことあるなと思ってもらえたら」とCMでもお馴染みの『よー、そこの若いの』が披露されると会場から暖かい拍手が。「ペンライトは振らないでくださいよ?」というフリ(!?)にお客さんはすぐさま反応、ピンクのペンライトが大阪城ホールを彩った。人生初めてのペンライト体験ということで、「華々しい出演者さんたちの中に短パンのおじさんが混ざっちゃってすみません…」と謙遜ぎみに語りながらも、喜びを隠せない様子。歌をはじめた時にお世話になった恩人たちに捧げる曲『ママさんそう言った ~Hokkaido days~』では、タフで攻撃的なリリックが躍動感溢れるダイナミックな演奏とともに胸に突き刺さってくる。心のヒダに触れる圧倒的な歌の力に聴き入る観客。愛する存在への祈りの気持ちを世界的な名曲にのせた『Amazing grace』は涙なしでは聴けない感動をよんだ。最後には自作ポエムをアコギなしのアカペラで朗読。覚悟と決意をもって人生を賭け歌に向き合う言葉の強さが胸に沁みる。ただ応援するだけではなく、共にいつまでも元気で生きていこうという優しさと人間臭い魅力に誰もがひきこまれた40分だった。 Text by 岡田あさみ
「藤原さくら」
暗転した舞台、アコギをかき鳴らしその姿が浮かび上がるドラマティックな幕開け。響いているのは『Cigarette butts』だ。スモーキーな彼女のボーカルとカントリータッチの楽曲にどこかノスタルジックな気持ちになる。さらに多面的な歌声の魅力は広がりを見せ、『BABY』では小悪魔的にウィスパー。サビの「baby baby baby」には男性ならずともとろけそうになる。しかも彼女はしゃべらせてもなかなかのトークセンス。まずは「毎度! ごっつ久しぶりやな。(FM802でレギュラー番組をやっていたから)ごっつ関西弁うまくなったねん。どやさ…あっとる?」と偽関西弁全開。しかし曲に戻ればMCの関西弁と違って、滑らかな英語詞がなでるように耳を通っていく。そして特に吐息混じり放たれる「Ellie,Ellie」のサビにはせつなさも。また続く同じく英語詞の『I wanna go out』ではジャズの響き。リズミカルなパーカッションが観客のクラップを引き連れ、思わぬ大人の時間を生み出す。堂々としたたたずまいと歌声は、圧倒的な包容力で会場を満たし、ピンク色のライトに照らされたステージはまるで海外のバーのような雰囲気だ。そんな“大人感”は次のMCでも発揮され、「グッズもいっぱい買いなさい。私のグッズも売っているので。買うと私が喜ぶ」とどこか女王様チック。このツンデレはクセになりそうだ。…が、ここからラストに向けては“女の子”としての魅力を見せる。「好きな人とコンビニに行くような曲です」の言葉から始まった『赤』は、まだ青さを残した詞とスイートなボーカルを程よくブレンド。観客はこのスロウなグルーヴに身を任せのんびり&じっくりと音楽を楽しんでいる様子。しかし人気曲『Soup』のイントロが聴こえてくると、今度は大きな手拍子が起こり思わず立ち上がる人が。かと思えば温かさを持つ曲の感触にうっとりと聴き入る人も。誰もが“さくらマジック”にかけられたような夢のひと時だ。そしてとどめ!とばかりにこれまた人気曲の『「かわいい」』が。会場からは体を揺らすジャジーなピアノにリードされ手拍子が続き、サビのキャッチーで広がりあるメロディに、心はぐんぐん上向きに。しかもバンドメンバーのソロもあり、そんなキレあるサウンドを本人も観客も満喫。既にぐるぐると頭を回り出したサビのフレーズと甘酸っぱさを置きみやげに、最後はかわいく「ありがとうございました」と笑顔を見せてステージを去っていった。 Text by 服田昌子
「LOVE PSYCHEDELICO(Premium Acoustic Set)」
続いて登場したのは、4年ぶりの新作『LOVE YOUR LOVE』を携え、現在、全国ツアー真っ最中のLOVE PSYCHEDELICO。今回は、世界的パーカッション奏者であるレニー・カストロを交えたスペシャルなアコースティックセットでオン・ステージ!広い空間に響くギターアンサンブルのクリアな音色が耳心地よく、久しぶりの大阪城ホールでの演奏をふたりも心から楽しんでいる様子。映画『昼顔』の主題歌を描き下ろした『Place Of Love』では、赤い照明の中、その叙情的な世界観と美しいメロディに耳を奪われる。余韻にひたっている間もなく一転し、ブルーの照明の中スケール感のある『裸の王様』を。そしてヒット曲 『Last Smile』では、アコースティックセットでよりきわだつ言葉の響きとリズムに思わす体が揺れてしまう。「よかったら踊ってね!」と披露されたのは、彼らには珍しい血が沸き立つラテンロックナンバー『Might Fall In Love』。「青山学園大学で出会ってふたりで音楽をはじめて、17年たった今もこうやって演奏できるのがうれしいです」と、ファーストアルバムに収録の『Your Song』も披露。そして、ブルージーなスライド・ギターに見惚れる『LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~』では、レニーとともに鉄壁のグルーブを生み出し、40分のライブを終えた。新機軸となるラテンナンバーやデビュー当時のヒット曲など新旧織り交ぜたセットリストが楽しく、それ以上に、純粋に音をロックを楽しむふたりの姿が印象的だった。 Text by 岡田あさみ
「家入レオ」
アーティストコールから、オールスタンディング。待ってました!のムードのなか「楽しんでいくよ!」とシャウトし、まずは懐かしいナンバー『Shine』でスタートする。彼女の魅力の一つ、パワフルかつ透明感ある歌声が大会場の隅々まで行き渡り、観客は手を振って早くも最高潮に! そんな沸き立った空気をさらに熱くするように『サブリナ』では、鋭いビートに衝動を乗せ、ステージを右へ左へと移動して歌い上げ、「Oi! Oi!」のコールで煽る。そしてまっすぐ前を指差し歌う強いまなざしがモニターに大きく映し出される。しかし、MCとなれば、穏やかな雰囲気の彼女。ダジャレ的な“レオ語”を次々に投下して、会場を和やかに。そんなMCとは打って変わって、ここから始まったのは珠玉のバラードタイム。まずは「センチメンタルな気分に浸ってみてください」というコメントから『君がくれた夏』へ。その言葉どおりに優しいアコギの音色と歌声が、この曲の持つ物語をじわりじわりと心に浸透させていく。そしてその静寂の中から次の『Silly』はより深い世界へ潜るよう。荘厳さも感じるサウンドと溶け合う熱を帯びたボーカルが耳に焼き付く。そして青く照らされた舞台はまるで深海のようだ。
そんな会場の空気を変えたのはまたもや、ゆるゆるのMC。ノリ突っ込みも披露して再びほんわかした空気に。そしてそんな空気感のまま始まったのは「ここからはピアノを弾いて…。(藤原)さくらに貸してもらったCDをヒントに作りました」という『だってネコだから』。ここまでとはまったく異なるドリーミーな側面には、思わずドキリ! 歌声もガーリーでその表情もまた柔らかだ。ジャンプしてピアノの陰からハンドマイクで飛び出すひと幕は、まるでネコのそれのよう。ライブでネコまでも表現できる彼女の表現力にはアッパレ!だ。そして、フィナーレに向かって華やかで起伏ある2曲をプレイ。「これから一緒に歌を歌いませんか? 同じ気持ちでここに思いを届けて!」という言葉から始まったのは『僕たちの未来』。壮大なコーラスワークのイントロが野外ライブのような開放感を作り出し、さらに濁りのない歌声と突き抜けるようなメロディで圧倒的な爽快感をプラス。観客は手をステージに伸ばしつつ「OhOhOhOh、OhOh」のシンガロングも! 会場全体で一つの音楽を作り上げているような感覚になる。そして最後は7/26リリースの最新シングル『ずっと、ふたりで』。愛に向き合う真摯な言葉で綴るドラマティックでせつないメロディは、聴く者の心をつかんで離さない。男女問わず誰もが舞台を凝視したまま頷くように聴き入り、最後の最後まで美しい曲と歌声に思い残すことなく酔いしれた。
しかし、今日のお楽しみは実はこれから! 「楽しんでくれた? 今日は私の大好きな2人もライブをしてるじゃないですか? 大阪のみんな、聴きたい~?」と声をかければ、当然会場には大歓声が! それに呼ばれて藤原さくらと大原櫻子が再登場する。…が、なぜかピック飛ばし合戦が始まり、キャッキャした女子会的トークも。彼女たちの素を見られたようで得した気分だ。そしてその後、3人が聴かせてくれたのは、もちろん今年3月の「ビクターロック祭り 番外編 IchigoIchie Join 6 家入レオ×大原櫻子×藤原さくら」でサプライズ披露され、今日の3人の再集結に合わせて9/27に配信シングルとしてリリースされた『恋のはじまり』。ウキウキする恋模様を描いたこのポップチューンは、三者三様のカラーを持つボーカルが見事に一つになってかわいらしさ200%! 「好きで好きで」のフレーズには会場のあちらこちらから“キュン”という音が聞こえてきそうだ。完全に3人にノックアウトされ、「ビクターロック祭り2017大阪」は完全燃焼で大ラスを迎えた。来年もぜひ、ここで今日の日以上の豪華共演を見たい! Text by 服田昌子